平成19年度共同研究報告書の発行にあたって
気候システム研究センター(CCSR)の平成19年度共同研究に関する報告を取りまとめましたので、ご報告します。
G8洞爺湖サミットの主要課題に象徴されるように、地球温暖化問題は今や、社会的にも高い関心事になっており、その対策に向けた活動が急ピッチで始まっています。このような状況において、気候モデルが基礎研究ツールから、応用および評価ツールとして利用される時代になってきたと感じています。しかしながら、このように社会的インパクトの大きい応用にも耐えられる気候モデルの開発には、気候系の力学過程、物理化学過程、生物過程などに関わるモデル改良と、データを利用した検証作業をこれまで以上に粘り強く行う必要があります。しかしながら、これらの非常に広範な問題を含む研究を本センターのたった十名の専任教員で行うのは不可能で、研究者コミュニティーとの連携と共同研究が不可欠です。また、昨年度から始まった特別教育研究経費事業「地球気候系の診断に関わるバーチャルラボラトリーの形成」では、全国の4大学センター(CCSR、千葉大学環境リモートセンシング研究センター、名古屋大学地球水循環研究センター、東北大学大気海洋変動観測研究センター)がさらに連携して、観測とモデルの両面から気候現象の診断を行うプロジェクトを進めていますが、このような研究機関相互の連携も重要になってきています。
以上の背景のもとで、本センターではCCSR共同研究を非常に重要なプログラムとして位置づけています。そのために、全国の研究者が気候モデルを容易に利用できるモデリング基盤を整備することも、全国共同利用施設としての本センターの重要な使命のひとつであると考えています。従って、研究報告が示すように、このようなCCSR共同研究から良い研究成果が生まれていることは大変喜ばしいことと思っています。この場を借りて、直接、間接に共同研究にご協力をいただいた関係者にお礼を申し上げます。気候システム研究センターでは、今後ともCCSR共同研究プログラムをより一層、発展させていきたいと思っていますので、皆様の協力を是非ともお願いします。
平成20年4月
東京大学気候システム研究センター長
中島 映至