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衛星からの地球観測気候システムを理解するためには、生きている地球を詳細に観測する必要があります。そのための有効な手段のひとつが衛星観測です。現在では、モデルを検証するために気温、雲量、降雨量などの衛星成果物が日常的に利用されています。来世紀にかけて多くの地球観測衛星が国際的に計画されていますから、衛星データの利用技術は今後ますます重要になると思われます。気候システム研究系では、気候研究に役立つ衛星成果物を作る研究もおこなっています。このような研究から、ここに示すような重要な成果が得られました。 さまざまな気候変動要因 図1過去140年間に引き起こされた気候変動要因による放射強制力(要因の存在によって対流圏界面に生じる放射エネルギー収支の変化)を調べてみると、温暖化ガスを始めとした様々な要因によって気候システムが変化した可能性があることがわかります。その中で、人間起源エアロゾルの気候影響は良く知られていません。温暖化予測にとって、その影響評価は重要です。
図1: 気候変動要因による1850年から今日までの大気上端での放射強制力(政府間気候変動パネルによる評価)。エアロゾルの効果が良く知られていない。 放射プロセスのモデリング 図2人工衛星に搭載されたセンサーは、紫外線から電波までの様々な波長域の電磁波を利用して地球を観測します。大気や地表の状態を衛星観測によって知るには、それらが電磁波とどのように相互作用するかを研究する必要があります。このような地球・大気系の放射モデリングの研究は、同時に気候モデリングにも役立っています。
図2: 大気の透過率スペクトルと衛星搭載センサー。さまざまな波長域を利用した観測が可能である。 エアロゾルの気候影響を調べる 図3気候システム研究系では、図3に示すようなエアロゾルの光学的な厚さとその波長依存性を表すオングストローム指数を、衛星データから世界で初めて得ました。このオングストローム指数は数値が大きいと小粒子、小さいと大粒子の存在を示すので、このような解析によって粒径の小さな人間起源エアロゾルや粒径の大きな砂塵性エアロゾルの地球規模の分布状態を知ることができます。
図3: エアロゾルの光学的厚さ(波長500nm)とオングストローム指数。さまざまなタイプのエアロゾルが地球を被っている。(1990年7月の一ヶ月平均) 雲とエアロゾルの相互作用を調べる 図4エアロゾルは雲の場まで変質させます。図4は、エアロゾルの多い大陸周辺で雲粒子の半径が小さくなっていることを衛星によって捕らえたものです。図1にも示したように、エアロゾルが雲の場を変質させる間接効果についてはほとんど定量的評価が無いのでこのような解析が重要です。現在の知識では、人間起源エアロゾルの増加によって雲の反射率が増加して地球は冷却されます。
図4: 下層雲の雲粒子半径(ミクロン)。陸域付近と海上付近では雲の性質に大きな違いがある。(1990年7月の一ヶ月平均) 雲の気候影響を調べる 図5薄い上層雲が、温暖化に伴ってどのような気候影響をひき起すかについても、現在のところ謎です。やっかいなのは、図5に示すように雲の放射強制力が正(雲が存在することによって系が暖まる)である場合も、負(逆に冷却される)になる場合もあることです。この符号は、雲の厚さや温度に大きく依存していて、気候変動予測を難しくしています。
図5: 最大雲量の雲型と雲の放射強制力。図中矢印が白は冷却、赤は加熱を表す。1986年の例。 上層雲の性質を調べる 図6雲頂温度の統計は上層雲の気候影響を研究する上で重要ですが、良い統計はあまりありません。このために国際衛星雲気候プロジェクト(ISCCP)によって全球雲気候図が作られつつあります。図は当センターが開発した新な手法によって推定した上層雲の雲頂温度分布です。赤道付近に、雄大積雲から発生する巻雲に対応する210度程度の低温部がかなり均質に存在することがわかります。ISCCP成果物ではこの部分の温度が240度にもなっており、解析手法の改善が必要なことがわかります。
図6: 上層雲の雲頂温度の新しい評価。 [an error occurred while processing this directive] |