十年〜数十年変動

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十年〜数十年変動

最近、エルニーニョ現象よりも1回り周期の長い十年〜数十年規模の現象が大気と海洋に存在することがわかってきました。これまでの研究で数種類の変動があることが確認されていますが、そのうち近年の気候変動に大きな影響を持っているものに、
(1)1970年代半ばを境にした太平洋規模の変動、
(2)1989年冬を境にした北半球中・高緯度域の変動、
の2種類があります。このうち、前者の変動は、大気と海洋を結び付けた数値モデルでも再現されています。一方、後者の変動は、最近10年近く継続している日本の暖冬傾向と関係しており、ユーラシア大陸東部の雪の量や海面水温、海氷との関連が注目されています。

太平洋規模の変動 図1

1976−77年頃を境に、太平洋の熱帯から中緯度にかけての海面水温、気圧、風が大きく変化しました。この時の前後10年平均の差を観測データで見たのが図1(左)です。最近の10年は以前の10年に比べて、熱帯東部太平洋で水温が高く、逆に中部北太平洋では低くなっています(左上)。地表気圧は、中央北太平洋で大きく下がり、中緯度の偏西風が強まっています (左下)。また、中・東部赤道域では西風偏差が卓越しています。図1(右)はモデルで再現された10〜20年の変動の海面水温 (右上)、地上気圧・風(右下)の分布です。観測とほぼ同じ構造を持っていることがわかります。

図1: 観測データ(左)及びCCSR大気−海洋結合数値モデル(右)で得られた、十年規模変動に伴う海面水温(上)、地上気圧・風(下)の分布。

中・高緯度域の変動 図2

1989年冬を境に北半球中高緯度大気に大きな変動が起きました。前後5年平均の気温変化(図2下)では、ヨーロッパから東アジア、北太平洋にかけて、気温が大きく上昇しています。この時上空の気圧(図2上)は、気温が上昇している中緯度ユーラシア大陸から北太平洋にかけて高くなっています。また、大西洋からヨーロッパにかけての中緯度域でも気圧が上昇しています。逆に北極では気圧が低くなっており、南北の気圧変化が大きく現われています。

図2: 1989−93年平均から1984−88年平均を差し引いた高度5.5km付近の気圧偏差(上)と地上気温偏差(下)。赤は正、青は負の偏差を示す。

積雪量・海面水温の影響 図3

観測データの解析から、この変動を引き起こすきっかけとして、ユーラシア大陸東部の積雪量が重要であることが示唆されました。そこで、大気大循環モデルを使って、ユーラシア大陸東部の積雪量を減らした結果と平年の結果とを比較しました(図3上)。その結果、積雪量を減らすと、観測と同じ中緯度で正、高緯度で負の気圧偏差が生じることがわかりました。 一方、海面水温の影響も考えられます。図3(下)は1989年冬の海面水温の偏差をモデルに与えた時の対流圏中層の気圧偏差です。積雪量を変化させた場合と同様に、中緯度で正、高緯度で負の南北の気圧変化パターンが現われています。 以上の結果から、この変動の生成、維持には、積雪量と海面水温の変化が重要な役割を果たしていることがわかりました。

図3: 大気大循環モデルに1988年秋のユーラシア大陸東部積雪量偏差を与えた時の、高度5.5km付近の気圧偏差(上)、及び、1989年冬の海面水温偏差を与えた時の、高度5.5km付近の気圧偏差(下)。赤は正、青は負の気圧偏差を示す。


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