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成層圏モデリング


気候センターでは、成層圏における大気の振る舞いも研究しています。成層圏では、対流圏での運動の様子が波動として鉛直に伝わり、しかも密度が薄いためにそのシグナルが増幅されて見えることが特徴です。またシグナルの非線形的な振る舞いによって、いくつもの興味ある現象も存在します。さらに成層圏オゾンホールに代表されるような気候変動も起こっています。

成層圏における年々変動

図1はセンターの気候モデルを用いて、赤道域下部成層圏に存在する準2年周期振動(Quasi-Biennial Oscillation)を世界で初めて再現した結果を示しています。定量的によい結果が得られています。大気大循環モデルは長い歴史をもっていまして、これまでいくつかのグループでこの赤道QBOを再現しようと努力してきましたが、どこのモデルもうまくいきませんでした。我々のグループはこれの再現に成功することができました。

また赤道QBOに代表されるように、成層圏でも年々変動が起こっており、対流圏と関わっています。図2は赤道QBOが東風のとき、北半球・冬期の成層圏西風が弱いことを示しており、これが対流圏とも関係している様子がわかります。このように成層圏は対流圏と密接につながっており、成層圏が対流圏に及ぼす、力学的気候変動の問題を考察しています。

図1: 赤道における平均東西風の高度−時間断面図。暖色系が西風、寒色系は東風。

図2: 赤道QBOが東風と西風のときの、北半球・冬期における東西平均風を合成したものの差(東風−西風)をしめす。

大気化学モデリング

成層圏・大気化学や物質輸送の問題も研究しています。具体的には、オゾンホールの問題を考察しています。成層圏オゾンの生成・消滅に関与している、様々な化学物質をモデルに導入して(これには、地球温暖化にも関与するCH4やN2O、また対流圏で議論されているHOxやNOx等、さらにはフロンなども入っていて、これらの物質は外から与えるのではなく、モデルの内部で自然につくられています)計算したものです。

図3: モデルで再現された南半球10月における高度50hPaでのClONO2の分布図。

図4は図1の東西風QBOに対応して、化学物質を導入したモデルで再現されたオゾンのQBOを示しています。このように大気の運動と化学物質の変動は密接に関係しています。

図4: オゾンQBOの高度−時間断面図。

図5はモデルで再現された10月における南極域の全量オゾン分布を示しています。オゾンホールに関与する、成層圏エアロゾルなどを導入することにより、モデルによるオゾンホールの再現、これらの多様な物質の気候変動に及ぼす影響を考察しています。

図5: モデルで再現された南半球10月における全オゾン量の分布図。

小さなスケールの変動

成層圏でも小さなスケールの運動が存在します。(図6)それは内部重力波とよばれる運動現象です。この例は、対流圏中緯度における温帯低気圧にともなう内部重力波が成層圏に伝播している様子を示したものです。

図6: 34。Nにおける南北風の高度−時間断面図。対流圏では温帯低気圧にともなう変動を示し、成層圏においては周期のより早い内部重力波が上方に伝播している。

図7は内部重力波の全球的なスペクトル分布(ある周期の重力波がどの程度存在するかを示した分布。このような図は観測からはまだ求められていません)です。このような内部重力波が対流圏や成層圏の温度構造に重要な役割を果たしており、そのような問題も考察しています。

図7: 高度25−30kmにおける東西風の周波数−緯度分布。


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