気候モデルによるエアロゾル・雲の研究


(図:竹村 俊彦)

大気中のエアロゾル(浮遊粒子状物質)は、太陽光を散乱・吸収したり(エアロゾルの直接効果)、 雲の凝結核として働くことで雲の性質を変化させたりすることによって(エアロゾルの間接効果)、 気候に複雑な影響を与えることが指摘されています。エアロゾルは、地球規模での酸性雨の原因と なったり、温室効果気体による温暖化を相殺する役割を果たしていたりする可能性がありますが、 その動態についてはまだよくわかっていません。したがって、将来の気候予測を行う気候モデルでも、 エアロゾルの効果を考慮することは非常に重要です。そこで、私達のグループでは、様々な種類のエア ロゾルの地球規模の3次元分布を再現・予測する数値モデルを開発しました。これにより、 エアロゾルの気候に対する影響がより具体的にわかるようになり、衛星観測ではわからなかった エアロゾルの陸上での分布の様子も明らかになりました。また、雲とエアロゾルの相互作用に関する 研究も進みつつあります。 これらの研究により、将来の気候変動予測がより適確に行えることが期待できます。


気候モデルによるエアロゾル全球分布の再現

1月4月7月10月
赤:土壌性粒子 緑:炭素性粒子 青:硫酸塩粒子
(図:竹村 俊彦)

上)気候モデルによって再現されたエアロゾル4種(土壌性・炭素性・硫酸塩・海塩)合計の 1990年現在の光学的厚さの全球分布(1・4・7・10月)。
下)気候モデルによるエアロゾルの種類別混合状態の概念図(1・4・7・10月)。 赤が土壌性、緑が炭素性、青が硫酸塩(海塩は海洋上に比較的均一に存在しているので省略した)。 例えば、黄色の部分は、土壌性と炭素性エアロゾルが混在している。

土壌性エアロゾルはサハラ砂漠 から年間を通して発生・輸送されており、また北半球夏季のアラビア半島周辺でも目立ちます。 炭素性エアロゾルは森林火災・焼き畑起源のものが、アフリカ中南部やアマゾンから乾季に 発生・輸送されているのが顕著です。北半球中緯度では、都市活動による炭素性・硫酸塩エアロゾル が大気中に多く存在しており、特に夏季に多くなっています。海塩エアロゾルは海洋上に薄く 広がっています。このシミュレーション結果は、衛星観測と比較すると、 季節変動を含めたエアロゾルの分布をよく再現していることがわかります。