気候モデルによるエアロゾル・雲の研究


気候モデルによる雲とエアロゾルの相互作用の研究


エアロゾルの雲への影響を考慮に入れた気候モデルで再現された 低層雲の雲頂付近での雲粒子半径の全球分布(1・7月)
1月7月
(図:鈴木 健太郎)


1・7月共に、エアロゾルの多い陸上では、海上に比べて雲粒子の半径が小さくなっている様子が 再現されています。また、南米のアマゾンやアフリカ中南部の熱帯雨林・サバナ周辺の地域では、 雨季と乾季の訪れに伴って雲粒子の半径が季節変化している様子も再現されています。今後は、 気候モデルと衛星観測の相互比較によって、 雲とエアロゾルの関係とその気候への影響が明らかにされると期待できます。

気候モデルで計算された全球海洋上における雲水総量の鉛直積算エアロゾル粒子数に対する関係。 左図はBerry型、右図はKessler型のパラメタリゼーションでそれぞれ計算した結果を示す。
(図:鈴木 健太郎)

気候モデル内で雲からの降水生成を表現する2種類のパラメタリゼーションの比較を行いました。 Kessler型ではエアロゾルが雲によって除去される効果のみが働いて雲水総量は減少傾向になるのに 対して、Berry型ではエアロゾルの増加によって降水生成が抑制されて雲水が残存しやすくなる 効果が入って減少傾向は相殺されます。 このことから、エアロゾルが雲・降水生成に及ぼす影響は重要であることが示唆されます。

エアロゾルの気候に対する影響の見積もり

気候モデルによって計算された1990年現在の各エアロゾルの直接効果による年平均放射強制力
土壌性エアロゾル硫酸塩エアロゾル
炭素性エアロゾル海塩エアロゾル
(図:竹村 俊彦)

気候モデルによって計算された1990年現在のエアロゾルの間接効果による年平均放射強制力

(図:竹村 俊彦)

放射強制力は、正であれば地球大気を暖め、負であれば冷やすことを意味します。つまり、 温室効果気体は正の放射強制力を持ちます。最初に説明したエアロゾルの直接効果による 放射強制力は、種類によって正になったり負になったりします。これは、透明な硫酸塩粒子や 海塩粒子は太陽放射を反射するだけなので負を取りますが、色を持った土壌粒子や炭素粒子は 太陽放射を吸収するので正を取ることもあるためです。一方、間接効果の放射強制力は一般的に 負の値を持ちます。これは、エアロゾルにより雲粒が小さくなり太陽放射を反射する効果が増加する こと(粒径効果)、雲粒が小さくなって雲量が増加すること(寿命効果)によります。 ただし、特に間接効果はまだ不確定要素が多く、今後さらに研究を進めていく必要があります。