平成18年度 気候システム研究センター拡大研究協議会報告

 

1.目的

 気候システム研究セ ンター(CCSR)では研究協議会を設置して、CCSRの研究の現状と将来プランについて学内外の有識者に報告し、より良い研究活動のためのアドバイスをいただいていた。さらに過去2回の研究協議会は、気候モデリング 研究に関わる諸問題をより広い視点に立って検討するための拡大研究協議として開催してきた。

  本年度もこのような拡大協議会を開催しシンポジウム「我が国の気候学研究と重点化政策に関する検討会」と併設して行い、CCSRおよびコミュニティーの健全な発展のために有意義な議論を行う。

 

2.会合の概要

・シンポジウム:「我が国の気候学研究と重点化政策に関する検討会」

・日時:6月6日(月)から7日(火)

・場所:サンルートプラザ東京

 

3.参加者と講演題目

中島映至(CCSR):CCSRの研究の現状と研究計画

木本昌秀(CCSR):次期全日本温暖化モデル研究

佐藤正樹(CCSR):全休雲解像モデルによる気候研究

住 明正(CCSR):東大の新しいプロジェクト、IR3S+TIGS

淡路敏之(京都大学大学院理学研究科):データ同化の現状と今後

石崎 廣(気象研究所):気象研究所における海洋モデリング研究

川辺正樹(東京大学海洋研究所):海洋循環と水塊の研究の見通し

中根英昭(国立環境研究所)国立環境研究所アジア自然共生研究プログラムについて

野田 彰(気象研究所):気象研究所における気候研究

花輪公雄(東北大学大学院地球物理学専攻):冬季海面水温偏差の再出現と気候の数十年変動

山崎孝治(北海道大学大学院地球環境科学研究院)北海道大学における気候学関係の動向

余田成男(京都大学大学院理学研究科):21世紀展望

江守正多(国立環境研究所)環境研の温暖化リスク評価プロジェクトについて

沖 大幹(東京大学生産技術研究所:気候学研究への水循環科学の貢献について

小池俊雄(東京大学大学院工学系研究科):地球観測データ統融合

日比谷 紀之(東京大学大学院理学系研究科)東京大学21世紀COEプログラム「多圏地球システムの進化と変動の予測可能性」

早坂忠裕(総合地球環境学研究所)地球研プロジェクトの現状について

安成哲三(名古屋大学地球水循環研究センター):アジア地域での気候・水循環予測研究をどう進めるべきか(仮題)

山中大学(海洋研究開発機構地球環境観測研究センター):(1) 日本のNOAAは成るか?海洋研究開発機構における気候・気象「観測」研究の現状と今後;(2) 惑星気候学の建設へ向けて: 神戸大学における気候・気象研究の現状と今後

西尾文彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター):千葉大CEReSにおけるリモートセンシング研究の動向と連携研究について

阿部彩子(CCSR)

今須良一(CCSR)

遠藤昌宏(CCSR)

金田康正(東大情報基盤センター)

神沢 博(名古屋大学大学院環境学研究科)

近藤 豊(東京大学先端科学技術研究センター)

笹野泰弘(国立環境研究所)

佐藤 薫(東大大学院地球惑星科学専攻)

高村民雄(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

高橋正明(CCSR)

高薮 縁(CCSR)

露木 義(気象庁)

時岡達志(海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センター)

新野 宏(東大海洋研)

羽角博康(CCSR)

廣岡俊彦(九州大学大学院地球惑星科学専攻)    


4.会議議事録

はじめに

中島:気候センターは全国共同利用施設で、基盤を提供するにあたっては皆さんの知識をお借りしたい。研究の方向性、指示をいただければありがたい。そこで、日本全体を見てキーになる先生方をお呼びした。本会議では、気候センターの事だけではなくて全国的にものを考えたい。現在の一つの現象は、世の中が急速に動いている割には我々自身が危うい状況にあると言う危機感も持っている点である。

 

発表 中島:気候センターの今までやってきたこと、何をしようとしてるかについてお話させていただきます。気候センターができて15年になるのかな?最初気候センターで気候モデルなんてできるかっていう話があったんですけども、今となってみては住先生、松野先生が打ち立てた礎っていうのはいい線をいっていた。現在では大きくモデリングが広がっております。まず大気海洋結合もでるがうまくできまして、これが動き始めて、今FRCGCと一緒に、これは地球システムモデルの基礎となってます。これからは能動植生だとか海洋地球科学なんかを取り込んでいって、この地球システムモデリングのところは発達していくと思われます。このMIROCを使って、東大のCOEの方では、例えば地震研だとかそうゆうところとの共同研究が進んでいます。つまり地殻研究をやっている連中と組み合わせてもっと良い地球史までカバーできるようなものができつつあります。つまり大陸モデルを入れるとか雪氷とか、海洋もありますけども長い時間に対応できるようなモデルを阿部さんなんかを中心に作り出しており、これもうまくいってる。これがMUSESという名前の多圏モデルです。また大気化学では、須藤君だとか竹村君だとか若い世代が作ったCHASERやSPRINTERSがあります。今彼らは、名大と九大に居まして、それぞれの大学で新しい種が育っていくんじゃないかと思います。で、これは大気化学のひとつの方向として衛星との組み合わせが重要になっている。GOSATは環境省とJAXAの衛星ですけれども、そこでガス物質とか粒子物質とかと同化しようという話が出てます。また、全く新しいダイナミックコアということでNICAMができています。これについては、後で佐藤先生が話しますけども、現在、3.5kmの全球モデルができつつあります。そこで、今度はSPRINTERSをNICAMに組み込んでアジア域から出ている大気汚染プリュームを詳細にシミュレーション行うとか、最後にはビンも組み込んで粒形分布の発達までやろうというような話になり始めていて、けっこう楽しい状態になっています。阿部さんはMUSESで十万年サイクルを始めて再現することができました。そのためには、雪氷と地殻の変形までいれなきゃいけなくて、結構これ画期的な計算になっています。本郷と一緒になってできるようになったところも波及効果だと思います。

 共生プロジェクトがうまくいって、20世紀21世紀シミュレーションができるようになりました。これを受けて今度は共生フォロー期に入るわけです。これと同時に10ペタFLOPSの京速コンピューター対応が必要になっています。全球の雲解像モデル、海洋高分解能、気象研のアンサンブル温暖化予測の基盤的研究、今須さんが衛星リモセンなどのベンチマークテストが始まる状況です。共生のフォローオンの方は将来30年程度の詳細な高解像度アンサンブル気候変化予測、地球システムモデルによる過去100年間の再現と300年ぐらいが重要です。それから新たに出てきた全球の雲解像実験や確率法的なものができるようになるでしょう。やはり日本型モデルの共同利用体制をしっかり作るということをやったらいんじゃないかということを今、企業等に私なんかは話をしています。

ということでモデルとしてはこの三つぐらいが重要なところなんですけども。

 今GEOSSといって地球観測統合システムという色んなデータを集めてですね、気象衛星だけじゃなくて農業だとか健康だとかいろんなことに役立てる構想があります。安全保障まで考えた上の国際的なイニシアチブが、エビアンサミット以降、小泉首相の呼びかけによって始まったわけです。これに関しては、東大社会基盤の小池俊夫さんががんばってひとつの柱として重要になっています。国の第三次科学技術基本計画の中の地球観測にこれが書かれていて、今それをがんばろうということで予算がつき始めています。これを地球シミュレーターを動かすモデリング的研究と組み合わせることが大事だと思います。そのような方向で、小池先生が作ったものをこれどうゆう風に生かすのかっていうことをこれから考えなきゃいけないと思います。ただ、小池さんがデータを全部集めようとしているだけれども、私はそれぞれのデータについて詳細に知っているセンターとかグループがまず、データを分散的に解析するところが日本では欠けていると思っています。まあ集中と分散ですね。

 やることとしては、雲・降雨のところが重要、それから大気汚染、陸面植生それからブイ観測と海洋観測。この三本柱ぐらいだろうと思います。これらはもちろん温暖化実験に役立ちますが、データ同化とかにとっても重要ですね。準リアルタイムに物を動かして被害とか起こったらすぐに計算するような準リアルタイム計算とか結構大事だと思います。気象庁の言葉をで言うと長期天気予報、気候コミュニティーから言えば短期の気候予測っていう数年先までの予測研究がいよいよ本格化するはずです。私は共生でだいたいこのような研究を遂行するための中心的なグループがはっきりしてきたのだから、なんでもかんでも競争的資金でやるのではなくて、もうちょっと長い視点に立って研究基盤ができるような予算をつぎ込んで欲しいと思っています。その中で大学の役割なんですけども、気象モデルって言うのは優秀な人が数人いればできた。気候モデルは気候センター十人で始まった。統合モデルはフロンティアや環境研を入れると数十人が必要です。これをさらに大きなコンピューターで動かすと色んな応用ができるようになり、経済モデル等も入ってくる。すると、最低百人ぐらいいるような高度に複合的な気候環境モデルが作られていかなくちゃいけない。大学にはいろんな事をやっている先生いっぱいいるのでこれを使うっていうのは大事だと思います。この辺から気象庁とか環境省とか機関の枠を超え始めていると私は思っています。だからこれは連携でやるしかない。大学という知識のるつぼを使ってこうゆう複合モデルを作っていくメカニズムがこれから大事ということでですね。気候センターを中心に今起こしているイニシアチブはいくつかあります。この15年間培ってきたフロンティアや国立環境研との大規模なモデリング開発。それから千葉大の環境リモートセンシングセンターともMOUを結んでいます。こちらから何が欲しいかというと、全球の静止衛星データです。それから新たにできる企業コンソーシアムや小池さんの所とJAMSTEC、それからJAXAがジョイントして作るコアデータセンター。それから、余田さんとか木本さんがやってるThorpexに関わる実験的気象予測コンソーシアム。これらとも一緒にやる必要がある。また、今年、動かしたのは総長主導の領域創成プログラムの中の気候環境高度複合系モデリングの基盤整備プロジェクトで、まずは柏4センターでいろいろな研究者との連携を図っています。もうひとつのフォーカスは、伊藤忠、NTT、東京海上日動と連携して、企業体からアプリケーション候補を色々集めて開発するコンソーシアムができつつあります。他大学対応では、地球環境気候研究を行うために全国協議会を作りました。

このような知識のるつぼの活用に関しては、最終的には東大総長がやっている学術統合化プロジェクトに対して、成果をアウトプットしていくつもりです。ここは住さんが面倒を見ています。

 以上のような連携活動を扱う機能として、領域創生プロジェクトオフィスを作りましたので、皆さん利用してください。ここでは、外部とのインターフェイスになって気候センターの大循環モデルとかのソースコードの管理、それからマニュアルの管理、それを皆さんに説明してプログラム相談もするとかを行います。今、新たに5人ぐらいの人がユーザー登録をしていただいていますが、このようにユーザー登録のリストを増やしていくということが非常に大事かと思います。

 第三次科学技術基本計画では、重点化のまた重点化をやろうと言うわけで、地球環境とか観測とか重要だから、お前らがんばれよって国が言っていますが、その実態は、気象研究所、国立極地研究所とかそうゆう大型の研究組織に国が一生懸命、予算を投入して、ここで大型研究、温暖化研究やりなさいと言うことになっています。それによってシナジー効果を出しなさいと言ってるんだけれど、計画の中身を見たら、ずいぶんと不十分な体制になっています。その中で、大学の教員はお手伝いと言う感じですね。若手人材はこうゆう大学とかから派遣されてるし、大学教員もここで兼任共同研究者としてやっています。ある意味、出稼ぎ部隊がある程度これを支えているのが実態です。全部じゃないんだけど、ここのとこは大きいと私は思っているんですよね。このような体制を支えている、大学の基盤部分にも投資をするべきだと思います。しかし、法人化以降、文科省は面倒みない、関係が切れちゃったし手つっこめないから抜本的な改革はできない。だから物性研に99人以上の専任教員がいるにも関わらず、気候センターは国の重点施策があるにも関わらずたった十人の専任教員でやりなさいと、バカバカしい話になるわけですね。だからここのところをもっと活性化すればもっと大きなシナジー効果がでると思います。センター間でデータやりとりすると結構効率が良い。ここを文科省さん忘れてませんか?って言いたいです。で、やっぱり予算提案してくださいってことで今ここの予算提案をしました。それが「地球気候系の診断に関わるバーチャルラボラトリーの形成」と言うものです。東大気候センター、東北大学の大気海洋変動観測センター、千葉大リモセンセンター、名大の水循環センターが提案しています。基礎研究をやりながら、なおかつ連携によって少し余裕を作って、重点化への貢献をしようというメカニズムを作ろうということであります。それによって地球気候系を診断する学問を作りましょうと言うことです。機関課が長い時間をかけて、長期的な視点でやはりお金をつぎ込む必要があると言いたいということであります。

 

質疑応答:

山中:大学の位置づけってことで言えば、やっぱり大学機関はやっぱり教育であると思います。なぜそれを言うかというと一つは、時代は若い子をどんどん大学が供給すべきと言われているけれども、例えばフロンティアなんかもそうなんだけれども、大学を含めてポスドクがどんどん余ってくるわけですね。ですからその新陳代謝をやらなければいけないと思います。もうひとつは、東大にいるとあまり気がつかないのかもしれませんが、若い人はやっぱり教育をしなきゃいかんと思うわけですよ。それに関して言えば、その教育機能が最近やっぱりどこの大学も、みんな忙しいからですけど多少下がってきていると思います。高校の教育がやっぱり、一般の高校の教育のレベルが少し落ちてきているので、大学でやっぱり多少教育しないと使い物にならないということがあります。ですからその二つの側面を持った教育みたいなものをやはりなんかうまく位置づけないと、大学で研究してる意味がないと思います。

 

中島:それはCOEの意味なんですよ。やっぱり。高度教育はCOEで金つけて各大学院ごとに競争させているわけです。だけど研究所やセンターは、そうゆう手当ての枠の外なんですよね。いずれ、そうゆう教育が大事だっていうのは分かります。

 

山中:というか、さらにこうゆう大きな大学についていう先端的な物だけのネットワークではなくて、変な話だけどその、医学部が色んな地方大学とか国立大学病院にネットワークを張ってるように、地方の大学では逆に今地球環境だとか気候をやる先生が欲しいとこが結構あるわけですよね。そうゆうところにうまく人を派遣していくような役割も果たす必要があるんじゃないかなと思う。

 

中島:そうゆうネットワークが大事で、データ統融合連携研究機構とか海洋アライアンスとか、横型の組織が出来つつあります。だからやっぱりみんな、なんとなく連携はするんだけど、連携してなにが得かと言うことを良く考える必要はあると思います。

 

沖:トップサーティーが復活しそうで、今のCOEではない、全部で30拠点、年間10億円かけると言うことを文科省が言い始めています。ですからどうゆうところが研究拠点トップサーティーかと委ことが重要になってきます。CCSRも是非がんばってもらいたい。

 

中島:それは、リサーチセンターにもCOE的なファンクションを持たせるようなことができるような枠組みなんですか?

 

沖:トップサーティー自体は大学の出島のような所でもいい。どこがトップレベルの国際的研究機関なのかと言うことだと思います。ただしですね、例えばその教員の2割は、外国人雇っているとか、いろいろセンシティブな点はあります。

 

発表 木本:

・領域創成、環境研、共生などで、気候モデルの利用推進の活動を広げている。次の共生も基本降水量のデータを社会情報に変えるような活動が必要。さんまなど。

・また、新しい雲解像モデリングへ進むことで、不確定性を低減が必要。

・ さて、僕の今日のメインはですね、気象業界の内の非常に狭い範囲、モデルとかの範囲、予測とかの範囲で考えていることを、お話したいと思います。確かに温暖化モデルを一生懸命やるし、GEOSSで観測もやって結構なんだけども、気象庁では、気象予測、あるいはデータ同化等が非常に進んでいます。でそれに対して大学ではですね、せいぜい地球シミュレーターでGCMを動かすぐらいの、あるいは気象庁のモデルでちょっと予報の真似事をするぐらいの感じなんですね。このまま行きますと気象庁のデータ同化やらの技術のレベルがどんどん上がって行って、かたや大学ではですね、学生と数人ではっきり言うとオモチャのようなモデルでですね、お茶を濁すということになってしまうんではないかと私は心配しています。要は研究にはその時代時代に応じた道具がいるわけですから、それが研究の人が何かアイデアが出たときに、それなりの道具を使える環境っていうのを整えた方がいいだろうと思います。そのようなコンソーシアムをたち上げています。データとモデルを融合したり、予測メカニズムがどうであるとか、そうゆう研究をやろうと思ったときに、プロフェッショナルな道具で出来るような体制を確立する取掛かりをいま付けておかないとならないと思います。そうしないと、多分十年後には、大学ではパソコンで小さなモデル、気象庁では大学の人が見たこともないようなシステムで毎日の天気予報やって、お互いなんの交流もない、お互いに何のフィードバックもない状態になると思います。

 これからですね、地球シミュレーターでGCMが100年走ってよかったんですけども、まあ言ってみれば十年前からあったGCMが100年走ったそれだけの話ですね。で、ここから五年十年ぐらいは、観測データの解析、観測データとそれからモデルの計測ともうちょっと融合しなくちゃいかんと思います。メソスケールの人は予測もやったりしてますが、GCMなんかだと、GCM走らせました、OLRこっちに持ってきて、横に並べて比べてるだけですよね。有機的に融合されてない。ですがこれから五年十年では有機的に融合しながら色んな研究が進まなくちゃいかんと思います。これからは、温暖化でもそうだし、メソスケールでもそうだし、長期予報でもそうですが、やっぱり気温はこうなってました、降水量こうなってましたと言ってもだれもそんなことは信用しませんので。我々の外の社会の人に使ってもらうためには、やっぱり確率情報って言ったらおかしいけど、不確定性がどこまであるのかっていうのを定量的に教えなくちゃいかん。それで、データとモデルを同化して、それからそのアンサンブル不確定性を出す。

 突然その細かい個別の課の話になりますが、アンサンブルカルマンフィルターの研究を推進しなくちゃいかん。気象庁では多少推進しておりますけども、それじゃたりん。多分フィジックスアンサンブル、メソスケールアンサンブルを含めたりしますと、或いは衛星データの同化だとかそうゆうのを含めますと、とても気象庁数値予報課の50人や60人では足りないと思いますので、研究コミュニティが本格的に参戦した方がいい。そうしないと、もう研究の人たちはいざとなったら役にたたないんだという雰囲気が蔓延して取り返しのつかないことになると思います。ですから個別の述語を何回も言ってるのもあんまり憚れるけども、私はまあ雲解像モデル開発もやってていいけども、アンサンブルカルマンフィルター等のデータ同化をもうちょっと本格的に研究すべきであると思っております。科学的には何がでるんですかととすぐ言われますが、そうゆう問題ではなくて、これから十年先に生き残るためには、それをしなくちゃいけないと思います。そのことを胸にですね、気象庁のデータやなんかで研究する段取りを作って、気象庁から研究用のデータを流していただくシステムを作りたい。気象庁からデータをもらうコンソーシアムの委員会を作ろうとしています。その時に例えば、GEOSSの小池さんのデータセンターにそのデータをかしてもらってそれをプラットホームにすると、まあそうゆうことを考えておりますのでご協力お願いします。小池さんは重点化してデータ解析を一ヶ所で全部やろうとするんですが、それはデータを色んなデータを統合して何かをしようと思ったらそうゆう方がいいと思うんですが、こっちの方はですね、置く場所は一ヶ所でもいいんですけども、そこを使う人とか、或いは置く場所もばらばらでもいいと思います。なるべく多くの人が自分の得意な範囲のデータを整理したりドキュメンテイション整えたり使ったりするようになる方が実効があがると思います。まあ小池さんは今日は来られると思ったんだけども、以後ですね、気象のデータについてはこっちの業界でケアしますので、ということをお話しております。

 僕は観測のことは分かりませんが、こうゆうシステムっていうのは、例えば台風ですが、こっちへ来るのかこっちへ行かないのか分からないような二者択一的な予報がでた時に、アンサンブルシステムというのはどの辺りを観測すればその予報がより確からしくなるのかっていうような情報が得られる。そうすればですね、まあそこへ行ける場合には行って、或いは衛星データのそこで細かいデータが手に入るのであればそれを重点的に見て、より良い予報を出すようなことができます。まあちょっと夢のようですが、システムの研究もですね出来るんではないかというふうに思います。これ自体はTHORPEXっていうWMOの計画で言ってることです。大学の研究者がこうゆうこと言って気象庁の仕事とは別にお金を取れるかどうかは別ですが、こうゆう研究もあると思います。GCMを毎日学生がパラメータ変えてまわしてるっていう状態が後十年も続きますと、気象学はおしまいになると思いますので、新たなフェーズに入れるような雰囲気を作らなくちゃいけないのじゃないかなと思います。

 

質疑応答

中島:GEOSSが出来たんでそこを通すっていうのは僕はいいと思うんですけども、その辺は、まあ作戦というか小池さんたちと相談しないとならない。

 

住:気象研が積極的にならなければならないんじゃないかと私は思う。だから気象庁がどうなるか別としても従来の方向ではだめで、どうゆうスキームでどうゆう選択をやってくか、少なくとも独立法人になると、外側とのリンクとかが大事になる。

 

笹野?:環境研の場合、比較的その前とあまり変わらないですね。この人達と我々も非公務員化しましたけども、だからといって今のところさわりはない。ただ気象研の場合は、なんか今気象庁との関係もあるので、ちょっとちがうのかなという感じはしますけどね。

 

木本:僕はですね、そんなに心配する必要はなくて、当然気象研は気象庁の予測データ同化の為の研究を仕上げてそれが成果になるんですよね。それで、それをコンソーシアムで大学にも取り込めれば、それはめでたいと思うんですよ。ただ僕が唯一恐れているのは、それがさっさと始まっちゃってですね、その時点で大学の人達は、物の役に立たない。だからここだけでやる。というふうになるのは避けなくちゃいかんと思います。例えばフロンティアなんかで、データセンター、予測センターできたりするのは大変結構だと思うんですけども、それがそこだけでやっちゃってですね、全国の本来なら参加するほうが良い人達を置き去りにしてですね、なんか知らないけどやってしまう。結局、数値予報課とフロンティアだけがやってるような事になったんでは何にもならないと思います。それだけ避けられれば研究所を法人化してこっち来るのもなんともないと思います。

 

中島:だからいくつかチャンネルができると、今GEOSSのEDITORIAという東大生研のもあるし、コンソーシアムの動きもあるし、気象研もあるというような、いくつかの競争となるところが良いのではないか。

 

余田:やっぱりすごく流動的な気がしますね。コンソーシアムも最初は気象研がこう窓口になりましょうみたいな感じなんだけども、誰でも契約できるという話が出始めると大学だとか京都の防災研なんかが非常にオーバーラップするわけですよね。そうゆう時にこれから気象研はどうゆう形になっていくかはすごく影響は大きいんじゃないかと思っています。巨像が目が覚めちゃうわけですし、気象コミュニティってすごいインパクトがあり得る状況になっていくと思います。ただ、ここははっきりと読めないしわからない。

 

木本:淡路さんが途中で来られたんでもう一回話しますが、僕の要旨はですね、今後10年を見込んで大気気象学は、アンサンブルカルマンフィルターを大々的に中心的に研究しなくちゃいけないという話をしました。あの4DVARの場が悪いというわけじゃないんだけども、その方向へ行ったほうが良い。

 

淡路:あの別にあのしょっぱなから喧嘩するわけじゃないんだけども、ラージシステムに適用するときは、4DVARの方が計算機的な負荷は小さい。

 

木本:僕も今どっちがいいと言ってるんじゃなくて研究的にモデル依存の少ないシステムの方が応用範囲が広いことを言いたい。

 

発表 佐藤正樹:私は去年4月に気候センターに来たのですけれど、5年以上前からフロンティアの方で新しいモデルを開発していて、ようやく今年になって全球雲解像実験を行うことができました。開発が第一段階が終わったというふうな状況です。モデルは、フロンティアとか私が気候センターにきて気候センターの基で開発しています。全球雲解像というと、色々この言葉はナーバスなレスポンスも色々あるんですけど、一応10km以下の解像度のモデルで標準で、5km以下の解像度のをいくつかやっています。水惑星実験と陸海を入れた実験としては、2004年4月実験、短期の実験とPerpetual July実験をやりました。新しいモデルっていうのはまあこうゆう正二十面体格子を使って細かく分割していくと、まあ全球3.5kmになるというNICAMというモデルです。陸海のある実験結果のアニメーションを見せますけど、これはスナップショットですね。3.5km実験。7日間のアニメーションですけどもこんな感じになっています。新しいモデル開発して検証を色々やっていくのですが、従来のGCMだとまあ長期間走らせて気候値を合わせるというような形だと思うんですけども、まずESを使って長期積分できないっていうのと雲レベルで合わせなきゃ行けないということで、まず短期の比較をすると、でこれは客観解析データを与えて一度の格子に与えて数日でスピンアップして走らせると気候システムができていくというような状況です。短期実験・予測なので1週間もすれば台風の位置とかもついていくんですけども数日間は台風の形・位置がまあある程度、うまく行きます。インドネシア付近で対流が立たないとかいくつか問題もありますが、ファーストステージはとりあえずやったということで、セカンドステージは、これを良くするということをやりたい。まあチューニング等、或いは色んなものを改良しなきゃいけないと思っています。先ほど木本さんが言ったように今やってるのはですね、左側にモデルの結果を置いて、右側にOLRの結果を並べて比較して目で見るという段階でそれをまあ超えなきゃいけないんですけど、まあ並べてみても欠点が分るんで、まずはそれを直さなきゃいけないという状況です。悪いとこばっかり見てもしょうがないので、いいとこを見ると、まあ台風の形等はそれなりによく出てるんで、TRMM等とうまく合わせるっていうことをやっていくべきかなと思います。と言うことで衛星との直接的な比較はできるようになってきたと思います。例えばまあ降水ですが、台風の降水と衛星による降水パターンを分解能3.5km、7kmについて絵を描いて、これから定量的に比較していきたいと思っています。昨年やった水惑星実験ですが、これはある程度インパクトあったと思います。こうゆう組織が自励的にできて、これが東進してゆきます。ちょうど水惑星実験の比較実験みたいなのがあって、GCMをもっと低解像度でやるとモデルのチューニングによってパラメタリゼーションによって東に行ったり西に行ったりと、バラバラな振る舞いをするということだったんだけど、解像度をあげてメソシステムを改像するとクラウドクラスターが西進して積雲???クラスターを放出するという構造がでてきました。まだMJOというわけにはいかないんだけれど、こうゆうモデルというのは予測というかシミュレーションというのに期待を持てると思います。

 で、色々見るところはあるけれど、熱帯がまず見るべきところで、そこで重要なポイントは台風の発生やMJOというところだと思います。そのためにはフィジックスを改良しなければいけない、特に境界層や浅い雲、或いはサブグリッドスケールなんかも考えなきゃいけないし、ショートタームやロングタームの実験やチューニングをするというのがある。それから衛星との比較っていうのは重要になってくると思います。例えばモデルのアウトプットを例えば衛星観測量に相当するような量を作るForwardモデルとか、例えばCLOUDSATのセンサーに相当するような量をつくるとか、まあForwardモデルを組み込むとかいうことをやって、さらに同化、まあ木本さんが言ったようなアンサンブルカルマンフィルターとかの開発の可能性があります。それからSPRINTERSの組み込みっていうのはもう既に済んでいて、ポスドクの鈴木健太郎さんがもう昨日から作業をしている。ビンモデルっていうのは井口さんとかが開発している。現状だとこうゆう全球高解像度実験を行うのはESでしかできないのでESの時間の確保というのは大問題です。科研費等では問題にならないほど巨額な金額になるので、そこは色んなこと考えて確保していかないとこうゆう実験はできない。ただコンピューターリソースがどんどん進歩していくので、5年スパンの中で考えるといろんなとこでこうゆうモデルは使えるようになるんじゃないかなと期待しています。例えば京速コンピューターはESの250倍なので、今ベンチマークテストをやってるんですけど、一応400m解像度まではいけますよということになっています。まあそうゆうさらに高解像度というよりも、今までの実験がもっと容易になるような環境になればいいと思ってます。

 この雲解像モデルのCCSR、或いはあの我々の役割としては、今はESを使った結果をいろんな人に見てもらいたいということで、データを公開するようにしたいと思ってます。それからNICAM自体の開発も興味ある人には参加してもらって、いじってもらいたいとは思います。それからもう一つ重要なのは、モデルの比較で、まあ色んなモデルがあるんですけど例えばNICAMだったら全球として見ればGCMだってそうだし、雲解像として見ればNHMなどのモデルとかがあるのでそれとの比較。比較することによってそれぞれ特性を理解すると必要があります。それを出来る場として、例えば非静力ワークショップなどがあります。

 中心的な課題が熱帯気象ということでMJOなんですが、多分季節予報の方に繋がっていくんだと思います。THORPEXの活動で季節予報というものがあればは、そこの部分とオーバーラップして協力してやっていきたいと思います。それから台風の発生です。衛星データとモデルとの融合ってのはこれから色々考えなきゃいけないんですけども、比較するだけでもやってみると結構大変で、例えばモデルのアウトプットと衛星のデータっていうのは色んな意味で違うので例えば、雲判定のの閾値が違ったり、アルゴリズムによって弱い雨が衛星に引っかかんなかったり。それから雲物理のスキームによって雨とか雪とか違ったり、それをよく理解しないと比較はできないということです。非静力学モデルワークショップっていうのは、東北大の岩崎さん、海洋研の新野さんとが中心になってやってるんですけども実は割りと限られたメンバーでやっています。学会に行くといろんな非静力モデル、例えばMM5とかワークモデルに使ってる人が非常に多くいますが、でそうゆう人達はあまりこれに興味がないんですね。このような外国のモデルを使っている人たちと交流したり、もっと情報交換する必要があると思います。それから積雲対流ワークショップは、気候センター中心にやってますけど、フィジックス、特にパラメタリゼーションとか雲物理とかを作る部分っていうのは全く日本にはいない。それからESと合同のワークショップとか水惑星ワークショップも来年日本でやることになりそうです。それから感じるのは、数値スキームだとかのモデラーを育てるのも重要です。ESが出来るときにはフロンティアでそうゆうのを作る余裕があったけれども、5年も立つと暇がない状態です。ですから、大学の中でもこうゆう人材も育てなきゃいけないと思います。力学などはさんざんたるもので人材を育てるのは至難の技です。スキーム、特に雲とかは、本当に研究しなきゃいけないと思います。

 

質疑応答

木本:この雲全球解像モデルは、松野先生の悲願でもあるし、将来性もあって大事にしなくちゃいかん話題だと思うが、身内でこんなこと言って申し訳ないんだけども、今は地球シュミレーターでこの全球雲解像計算ができるようになって全世界が驚いたけど、これからはサイエンスが出てくるようにしないといけないと思う。このままモデルのチューニングのフェーズにはいっちゃうと、モデルのチューニングはよそから見てるとおもしろくもおかしくもない。

 

佐藤:MJOってのは一つあると思うんですけど、良きアドバイスを。

 

余田:サイエンスということに関して言えば、MJO季節予報というのはそれ自体アプリケーションなわけですよね。気象研究所とかが本当に当てることに、どれくらいの意欲を持って踏み出そうとしてるのかなということを聞きたいんですけども。逆にその応用側のニーズからすると、MJOが本当に当たれば、今までとは全然違うアピールができる。それで本気でそこを狙えばサイエンスじゃないかもしれないけれども、ユニークさがでる。

 

発表 住:昨年から色んなこと、新しいプロジェクトだとかが動いてまして、今年の4月から本格稼動しましたので、そうゆう話をあまり皆さんにしていませんので、します。地球持続戦略イニシアティブというのを作ったんですね。これがどうゆう趣旨かと言いますと、要するにサステナビリティをやる。これに関してはものすごく因縁がいっぱいあるんですが、要するに21世紀、これからどうやってやっていくか、いろんな問題を抱え込んでる、ほんとにどうやっていいかわかんない。そうゆう問題に対して大学っていうのはなんらかの発信をすべきだろうというのは考えたことがあって、サステナビリティに関するものを出しました。特に問題に対する構想化っていうのは大事です。要するに現代の特徴の問題っていうのは知識が多すぎることなんだと、ものすごい情報が氾濫をして、何が大事かわかんなくなっている。それと同じように問題が非常に複雑化してて、どう取り組めばいいかわからなくなっている。そうゆうとこを構造化して組織化すると同時に、大学ってのはもっと社会に対してどうあるべきかって、発信する義務があるのではないかと考えています。それで、そんなことは一東大で出来るわけはないと言うことで皆の英知を集めて公募したら、京大、阪大、北大、茨城大学に入ってもらってですね、一つは学部横断型の組織を作りましょうということになりました。東大はTIGSを作りました。京都はKSI、大阪はRISS、北大がSGP、茨城がICAS、全部その学部横断型の組織を作ると。それぞれの所に本部からのリソースがさかれています。東大の場合は事務員の定員が3名と教官の定員が2名という形でやってます。

 この中で考えることは、要するにサステナビリティですので、全体の中での個人の問題とか、人間と社会といわゆる地球と、その3つのインタラクションを考えましょうと言うことです。東京大学も入ってますが、例えば東京大学は、哲学の牙城みたいな所もありますので、まあそうゆうのもちゃんと考えましょうとかですね、色々やります。サステナブルサイエンスっていうのは本当はまだないので、それを作り上げていきましょうということです。各大学が今の連合を組んで、戦略をつくるとかいろんなものを考えてやろうという話になっています。結論としては、東京大学は今まで色んなことやってきたんですが、そのネットワークを作ろうとやっています。各大学で色々ネットワークを作ってやってるんですが、みんな多分個人営業が多いなというのが私の意見です。やはり敵は非常にグローバルな戦略をもってやっている。東京大学もそうですが大学としての戦略が全くない。みんな各部局、もしくは先生方個人の戦略を持ってやっているので、やっぱあんまり良くないんじゃないかと思います。大学としてそうゆう点のストラテジーをもつべきだというのが、まあ発端ということです。とくに、アジア重視。それから、ポイントは問題から引っ張っていく組織作り。全部部局が強すぎるので、本部に研究者を置きましょうというのが当初のアイディアです。これが結構大騒動がおきてですね、本部が中央集権化するのか、部局の定員を抜くのかと大騒動が起きたんですが、サステナビリティに関してはみんなどうでもいいってあまり問題は起きないのです。当時東京大学では生命科学連携研究機構がありまして、これが大騒動を起こした。医学部があたりがむくれてですね。学部横断型の組織を作ろうと言っても、部局に属しているとその先生が言ってくると大概、それは侵略か、騙しにくるとか、必ずよその部局は大体変な風にまず疑う。大体連携は成功しないのが普通なので、やっぱり関係ない組織を作った方がいいという考えもあってですね、まあそうゆうのを作る。後はアカデミックスタッフと言われる様に従来の研究部局では雇えないような専門的な人を雇う。例えば、ファントレードとかコネを持ってこれるような人だとか出版が非常にうまい、従来雇わなかった人を雇いましょうということです。それからお金を稼ぎましょうという話になっています。それで何をするかというと僕はやっぱり基本的に企画をするところ、色んな人を集め調整をする機能をしようと話しています。あとは、教育をどうやって展開しようという話もしています。これは5大学で連携した、例えば今、僕はあまりよくはわからない、できるかどうかは知らないのですが、将来的にはですね、ダブルで東大と京大の博士が同時にもらえるようにしようとか。それはそれで大変らしいが。現在主として東大がやっているのがメジャー/マイナーで、例えば理学の人がマイナーで経済学をとるとか。それから英語で教育をして、海外から20人ぐらいの奨学金付のコースを開く。そうゆうのを柏の監督でやる。それから社会とのリンクが非常に大事なので、Newsletterとか、広報誌とかBlogとか、要するに相手に応じたきめ細かな広告活動をやろうとしている。これはファンドの獲得で、まあお金はそれなりにどっかから持ってこようという話をしています。後、東大では、共通基盤科学というのと温暖化、エネルギー、水食料、こうゆうようなものを作る。地球温暖化というのは非常に大きな柱ですので、CCSR含めて皆さんにがんばってもらおうと話になっています。温暖化に関して、温暖化インシアティブの本を見ますとものすごい研究がやられているんですが、一応、建前的にはどこが欠けててどこがダブってるっていうのもちゃんと評価することをやっぱりやった方がいいんじゃないかと思います。それからできればですね、IPCCの報告が来た段階で、多分これはどうゆうわけかみたいなコメントを出す必要がある。実はエネルギーのことは書いてないんですが、エネルギーのことは非常にややこしい問題が一つあります。それは原子力にどう対応するかっていう大問題があってですね。みんな東大が原子力というと、ちょっと発言はしたくないよというのがありましてですね、なかなか難しいのと、特にアプリケーションサイドの人はそれぞれの役所とリンクしてる人が結構いっぱいいますので、役所の立場がでてくる。まあその中で出来るだけアカデミー的にやりましょうという話をしています。

 モデルを使う話はいっぱいある。例えば、環境研と考えてますけどやっぱり我々基本的にはアプリケーション、特に政策対応みたいのが非常に大事で、温暖化によって深刻になっているので、適応戦略といろんなことをやるだろう。今のところ何らかの形で気候モデルと一般統合モデルの結合をやる。

それから政策の評価のプラットホームみたいのがいるだろうと、そんなことを今考えているところです。後で江守の方から話があると思いますが、茨城の三村さんとか環境研と東大ぐらいである程度そうゆう影響評価等をやっていきたい。後今考えてますのは、これはどうするか知りませんけど多分非常に将来的に大事になると僕は思っているバイオロジーエネルギーをやらないかん。特にその非常に大きな問題は、現在一番大きな問題は貧困なんですね、世界的に考えますと。それ非常にアジアの中で農村が貧乏なんですね。なぜかしらないけど食い物作ってんだけど貧乏で何もやってない都市部が豊かだと。こうゆうおかしな構造になっている。バイオマスの廃棄物なんかを使ったようなバイオエネルギーの問題ってのは、農村の貧困解決に非常に大事ではないかと考えます。 そのほかにも色んなことやってまして、健康の問題とかですね、それから、教育活動。東大ではIPOSと呼ばれる合宿型の教育活動をやるようなことをしています。アウトリーチな活動は色んな所とやるという形にしている。最終的に全体的な制度を変えるという考えですので、東大の人も新しい仕組みを作ろうという考えです。政府の定員の給料の一部を研究費かなんかで払うような構造にしようというようなことを今やっています。運営費が減る分、人件費を外部資金で補填できれば、運営費が減ること自体がそんな定員削減には繋がらない。

 

質疑応答

高橋:研究者を本部に集めるというような話なんですけども、そうゆう時、学生なんかはどうゆうふうに教育を受けるのですか。

 

住:本部で直轄する時には、学生は元々の研究科でやりますので適当な塀の中でやるとして、本部に学生を置くことはしない。

 

中島:このIR3SとTIGSの関係ってのはどうゆうもの?

 

住:IR3Sっていうのは現在東京大学にあるだけども、これが終わった段階では外に出ると思います。要するにIR3Sっていうのは大学間の連合体の組織であって、各大学が持ってる組織がTIGS。

 

中島:それは解消する?それともその下にもっと独立した機関を作るんですか?

 

住:IR3Sはできれば自前のファンドを持って独立して外側にでるようにしたいと思ってて、ものすごくうまくいけばIR3Sが自前で例えば何十億金を稼げれば。そこから各大学に金が回ってくるような構造になるのが一番望ましい姿だけど。ただ、そんなふうになるかという問題になっている。何故かというと、どこもそうなんだけども皆自分の金は集めるけど人の金は集めないんだよね。人のために働くことはみんなしないのでIR3Sなんて言うと金が入らないんじゃないかという話もある。一方でですね、各大学、東大なら東大に金をだせというと、各企業は何で東大だけださなきゃいけないのということがあって、大学全部をひっくるめて言うと金が出やすいという意見もある。とにかく文部省に頼るような投資は、変えた方がいいと僕は思っています。やっぱりうっとしいんですよね。だから膨大な民間のお金があるので、そこからちゃんとお金が入ってくるような構造にしてかなくちゃならない。例えばハーバードなんかはものすごいお金の資産があってそこでやってるわけですよね。国に頼ってるとあまりにも方針が変わりすぎてですね、役員はころころ変わるし言うことは変わるし。そこを自助努力するようなことを考えたいと思ってます。まあうまくいくかどうかは知りませんけどもまあそうゆう方向ですね。

 

山中:仕組みは違うけども、やりたいことは地球研がやろうとして考えていたものと近い?

 

住:地球研とある部分近いんだけども、一つ違うのはね、エンジニアリングが入ってる。地球研は完全にエンジニアリングを排除してたでしょ。要するに僕らは地球研のプラス、エンジニアリング。それで具体的な社会をちゃんと回す。

 

山中:松井さんのあそこのバイオロジーとはどうやって関わるんですか?

 

住:あれは無関係。松井考典は、皆さん知ってるようにJR東海と組んで、同じように文理融合型のそうゆうネットワークを持ってるわけですよ。山本良一先生も自分なりのソサイエティをもっている。

東大の先生は、それぞれサステナビリティでも皆一派があるわけで、それを統一しようとするともめる。だからそうゆうのをこうゆう中でまあまあ仲良くやりましょうよとやっていった方がいいんじゃないかという話です。

 

発表 淡路:京大とかフロンティアとかそうゆうところでやってるデータ同化のことと、それから今後のことについてお話させていただきます。今、海洋関係でですね、データ同化に関するワークショップが2006年にある。IOC/UNESCOのOOPCが5月にあって、それからPICESのワークショップが開かれて、そのときにデータ同化のサマースクールが韓国主導で開かれました。日本からも出て行きますが。それからCLIVAR/GODAEのOcean Synthesis EvaluationがECMWFでありまして、これはクローズドのですね、スペシャリストによるワークショップです。日本からは私どものところと気象研の川根さんの所だけが招待されて開かれます。かなりハードなやつですね。これはNCARで開かれたワークショップを引きつぐ形で、海洋のリファレンスデータセットをどうするのかということで会議が開かれる。その中でもAir-Seaのフラックスを全部ひっくるめたような形で、要するに季節予報とか、経年的な変動、まあエルニーニョとかそういったものについてメカニズムを解明すると同時に出来るだけ予報精度をあげてやろうというようなことを議論する。それからGODAEのワークショップが北京で10月に開かれます。これは中国が並々ならぬ力を入れてですね、データ同化のことをやろうとしている。残念ながら日本にはお声がかからなかったというのがちょっと恥ずかしいところなんですが。だいたい海洋関係のデータ同化の人達の国際的な関心意義というのは、多様な海洋変動の状態推定への向上に役立つような再解析のデータセットを作ることです。それの品質向上を図っていくと。その品質向上を図っていく時に、ポイントになっているのが例えば各フェーズごとに相互比較をやっていくというようなことで、それが進んでますが、太平洋ではかなり遅れてます。大西洋では相当進んでる。そうゆうことを垣間見ながらですね、データの流通とかモデルとか同化の情報交換をやっていこうと、色々とやっています。

 先ほど木本さんからお話あったんですが、NCARでやった時にですね、アンサンブルカルマンでやるのか4DVARでやるのか結構議論があったんですが、定式化をすると変分を使っていったらどちらも同じはずで、基本的にいうとカルマンスムーザーと4DVARが同じになる。要するに形式的には同じなんですが何を捨ててなにを生かすかというその辺のところの考え方によるんじゃないかと私自身は思ってます。予測精度の向上と社会貢献ということで、GODAEなんかを中心にやられてますが、このあたりの所については、研究的な短期とか長期の海洋変動のメカニズムの解明と実行できる範囲のハインドキャストなどを掲げて具体的に相互比較をやっている。もう一方、最近非常に関心もたれていることが、沿岸のナウキャストとフォアキャスト、もう一つ生態系も含めてデータ同化をどのようにやるのかとゆうことが関心になっています。今これが我が国におけるデータ同化に関する海洋関係のアクティビティとかやるべきことです。データのアセンブリィについては東北大学とか東海大学とかでやられている。もちろん気象庁の所ではヘッドクウォーターとか気象研で全てやられていて、GODAEのサーバーがあってそこから色んな物が発信されております。それからアシミレーションのアクティビティのところでは、JAMSTECとかJMAとか九州大学とか。後はまあ京大と海洋科学振興財団の共同研究とかございます。日本ではこうゆうジャパンGODAEでネットワークを作って、データのアセンブリィセンター、シミュレーションセンター、それからプロダクトサーバーセンターということで手分けをしながら異分野間がゆるやかな連合体でやっております。それなりにいろんな成果がでてます。そのへんのお話は止めさせていただきますが、先ほどのモデルのバイアスを減らすような形で再解析のデータを良くしていくということで、スーパーアンサンブルのデータ同化をやろうということで今いちおう計画はしております。この辺はずっと省略をさせていただいてですね、海洋の長期再解析とか結合系での再解析やっていますが、結合系での再解析やるというのは要するに、境界条件を修正するということで大気と海洋の間のフラックスの交換っていうのを調整することによって、上と下というのがどのくらいよくなるのかということをやってると思って頂いたらいいんですが、その結果として例えばエルニーニョの場合なんですが、左側が海洋単体でやった時のバックキャスティング、逆追跡で、例えば西の方の所に暖かいシグナルを与えたとき。右側は結合系のものです。見ていただいてわかりますが、大気と海洋相互作用してます。要するに結合不安定の不安定な結合波がよくでてくる。こうゆうようなことはエルニーニョの予報精度に貢献すると思います。

 気象研究所の方ではマルチバリエートの3DVARをやるということによって、エルニーニョとかの状態推定はよくなります。基本的に色々なモデルとか色々な同化手法の結果を比較することによってどうゆう同化技能を新たに作っていったらよいのか、どうゆうモデルの対応が必要なのかというようなことが議論でき、共働する形ですすんでいくんじゃないかと思っています。これは比較をしてる例です。K7のほうの結果とマルチバリエートで気象研がやったものの結果で、亜表層の水塊の状態推定がどちらがどうなってるのかというようなことを色々やっています。

 夏の学校も今年11回目をやる、それからあとはOSSEをこれから積極的にやっていきたい。これはObserving System Simulations Experimentというやつで、ターゲットオブザベーションみたいなものです。

 

中島:海洋の同化コミュニティっていうのは気象庁とか現業が強いわけじゃなくて研究所コミュニティの横の連携が非常に強いっていうシステムなんですか?

 

淡路:そのあたりは気象庁の人間じゃないんでよくしらないですけども、基本的には気象研の海洋研究部の方が、相当がんばってやっておられる。GODAEなんかはそこが中心になってやってます。そことの連携で海洋ではやってます。海洋起源のいろんな現象というのはですね、大気も含めてやっていかないと、結合系の現象は大気だけ、海洋だけやっててもわからないので、海の方から大気を見た場合、大気の方から見た場合っていうお互いが膝を合わせて議論するというそうゆうような状況っていうのを作っていかないとなかなか進まないんじゃないかなと考えています。

 

中島:今、同化手法を色々大気側と海洋側でどこを注意するかで随分違うので、そんなに急に統一するってことはできないんだけども、数学的コンビネーションに非常に似てるので、若干、かんかんがくがくやる必要があると思います。

 

淡路:そうですか。私自身はその辺の議論はもう済んだと思ってたんですけども。

 

中島:なんとなくお互いに不信感がある。

 

淡路:どんな道具を議論に使うのかっていうのはもう今までこの業界については国際的にいろんなところで議論されているので、もうほとんど決着はついている。あとは問題をどうゆうシステムでやるのかについての問題は議論する必要があると思います。

 

中島:気象研はなんか発言ないすか?気象研なんかは海洋と気象のコミュニティは、やはりそのへんをしっかりやっている?

 

淡路:ちょっと代弁しますと、気象研のほうではモウグとか、本庁の方ではコンパスとか現況予報とかいうので常に社会にも情報をだしておられて、気象の関係の方々がこれらをあまりご存知にないんじゃないか。相当色々発信されてて、例えば新聞なんかでも、去年でしたら黒潮予報というものが当たった、大蛇行が当たったとかですね、そういうのが大々的に出てます。色々と取り上げられてると思いますよ。

 

中島:まあ海洋の特に長期気象予報、それから短期気候予報予測、非常に重要なコンポーネントなんでまあ一緒にやりたいなと思います。

 

発表 石崎:今までの広いコミュニティ全体を見渡したような話に対し、個別具体的なお話になりますが気象研究所における海洋モデル研究ということで簡単に紹介させて頂きます。内容としては開発,海洋研究部で、主に海洋研究ですけれども海洋モデルとデータ同化システムを開発しています。それから、それを使って現在の研究,それから今後の予定ということで話を進めさせていただきます。

 まず開発ということですけれども、海洋モデルとしまして気象研究所の共用海洋モデルMRI community ocean model略しましてMRI.COMというように呼びますが、現在開発維持しております。それからデータ同化システムとしまして、海洋のデータ同化システムですけれども、淡路先生からいろいろご紹介いただきましたが、気象研究所の海洋データ同化システムということでmultivalued ocean variational estimation system略してMOVEモデルと呼んでいます。まずは海洋モデルの紹介ですが、気象研の海洋モデルはもともとはアメリカのUCLAで開発された高野先生が開発されて、時岡さんも改良されたモデルですけれども、それと東大で開発されて遠藤さんが気象研に来られたときに持ってこられたモデルこの2本立てでずっと進んできましたが、数年前にこれが統合されましてMRI.COMということで共用モデルということで、現在かなり汎用性の高いモデルでしていろいろオプションとかいろいろなスキームが入っております。このモデルは、ここ近年はCCSRのCOCOという海洋モデルと情報を密にしていまして、同様なスキームも入っております。ただ,細かいことですけれども、水平の格子の配列がちょっと違っております。それぞれ一長一短あると思いますがそういう点でちょっと異なっております。データ同化システムMOVEのことですが、基本的には3次元変分法を用いております。それから水温・塩分の結合鉛直EOFモードというのを用いていまして、この辺が特徴的なデータ同化システムということになります。

 以上,モデルとデータ同化システムを紹介しましたけれども、それを用いた現在の研究ですが、地球温暖化問題に関連したもの、それから季節予報,エルニーニョ予測に関連したもの、それから海況監視予報,黒潮とかその辺のものですが、この辺は気象庁の業務に関連した研究ということでやっております。あとは基礎研究でいろいろやっています。温暖化問題は当然、結合モデルということで気象研究所の気候研究部が中心となって行っているプロジェクトですが、そこで現在は地球システムモデルとか領域結合気候モデルというようなものを行っておりますけれども、それの海洋部分を提供しています。それから季節予報エルニーニョ予報の方は、海が直接関係しているのはエルニーニョ予報なのですが、気象庁の現業で使っておりますエルニーニョ予測モデルの次のシステムを開発するという位置づけで現在行っております。このへんのところには当然,海洋のデータ同化によって初期値を作るという作業が入ってくるわけです。海況監視予報についてはこれも気象庁で行っております。今コンパス系と呼ばれているシステムがありますが、それの次のシステムを作るということで、一応気象研の中では完成してすでに気象庁のほうに引き渡したという段階におります。あとは基礎研究ということで高解像度モデルとか再解析というようなことを行っております。

 温暖化とか数値予報に関してはおそらく野田さんの方からお話があると思いますので、ここでは海洋モデル関係だけのもの,海況監視予測ということにします。先ほど淡路先生のお話にもありましたが、

おととしの7月に黒潮の大蛇行の発生をこのシステムで予測ができたということが書いてあります。それから4番目の基礎研究ということですけれども、北太平洋の渦解像モデル12分の1ぐらいのモデル実験を行っておりまして、これを気候実験とか歴史実験を行っておりまして、目的としては水塊形成に渦がどういうふうに関与してくるかということを念頭において解析するということです。だんだん分かってきたことは,黒潮の位置とか,亜熱帯モード水の分布とか、中層塩分上昇、非常に海洋の個別的な現象になってしまいますが、比較的海洋の平均構造に関するようなものにも細かい渦の効果が効いてきているのではないかということがわかってきております。データ同化の方をMOVEシステムを用いて再解析の実験を行っておりまして、太平洋とか北太平洋の中緯度のいろいろな現象についての解析を行っています。黒潮続流の位置などが高解像度の渦モデルによりますと現実とよく合った位置になってくることを示唆しております。MOVEによる再解析は,期間は1948〜2004年、あとデータが貯まればあとでつけたしということになります。3次元変分法を用いて3種類の領域で行っております。それぞれこの海路が違うわけですけれども、全球1度、それから赤道域は1/3度、北太平洋,これが0.5度×0.5度、北西太平洋、これは西の方だけですけれども1/10度。このような海洋の領域でこのような期間でやっていくというわけです。データが全てそろっているというわけではありませんが、こういうことをやりながら解析もしていくというわけです。

 最後に簡単に今後の予定ということですけれども、我々としましては海洋モデル、データ同化システムを今後とも維持、管理、コード化をしていこうと考えています。海洋モデルにつきましては物理スキームの増加、データ同化システムに関しましては4次元変分法とかそういうものの導入、それから先ほどの話にもありましたとおり、大気との結合モデル自体の増加というものを視野にいれながらやっていくということであります。それから研究としましては気候変動に関する研究ということで、結合実験の参加、先ほどの温暖化実験,季節予報の実験に参加したりしているということです。実験データセットの解析、これは高解像度モデルの解析および再解析データを用いての解析。これは現在行っているのですがさらに継続していきます。それから気候変動に対する沿岸域の応答ということで、この辺のところも具体的なイメージがあるわけではありませんが、沿岸域あたりも視野に入れながら考えていきたいと思っております。最後に共同研究の拡大ということで、先ほどから話題になっておりますが、独法化ということが迫ってきつつあるということで、計算データあるいは再解析データをオープンに作るとかそういうことを考えております。

 

中島:GODAEのコミュニティーの同化モデルや淡路さんのモデルとの関係はなんですか?フロンティアのモデルと気象研のモデルは同じですか?

 

石崎:別のものです。

 

淡路:基本的に境界の方は京大の海洋モデルと石崎さんのモデルは似ているのですが。私自身は1色のモデルは使わないほうがいいと思っているのです。いくつかのモデルを使ったほうが、シングルモデルというのはモデルバイアスで消せませんから。モデルのバイアスというのをとっていこうとしたら、いろんなモデルを合わせた方がいいのではないかと思います。それが基本的にはマルチモデルアンサンブルの発想だと思うので、連携をしながらいろいろといろんなモデルが開発されていって、それを集める技術というのをこれからやっていったらいいと私は思います。

 

中島:気象というか、大気のほうは実験的コンソーシアムというのがあってデータを外から出してもらって、最終的にデータ同化だとか、データ解析手法のアルゴリズムをだすという試みようとしているが、海洋のほうはスムーズなのですか?

 

淡路:おそらく所帯が小さいから比較的今のところは何か障害があるとは思わないのですけれども。

 

発表 川辺:ちょっと今日のお話の主題からはずれるとは思いますけれども、海洋物理学部門海洋大循環分野でやっていることと考えていることをご紹介しようと思います。海洋大気基幹分野というのはもうひとつ新野先生のところの海洋大気力学分野というものがありますが、ふたつの分野で海洋物理学部門を構成しております。まずは研究のこれからというよりはこれまでやってきたことについて簡単にご紹介したいと思います。

 深層循環という北太平洋についてやっているのですが、よくコンベアーベルトのモデルということで大雑把に深層循環の流れを表していますが,見て分かるとおり非常に大雑把なものです。北大西洋で沈み込んで北大西洋深層水ができて、それが南極でできるものもありますが、主体はこちらが入ってくる。それはちゃんと表されていまして、このoverturnとよく言いますけれども、大西洋で沈み込んでくるということでこのmeridional overturning circulation、MOCといって大西洋、Atlantic Northというのは欧米諸国が力をいれて観測モデルで研究していこうとしているものであります。これと逆の性質のmeridional overturning circulationというのが北太平洋に来ているわけですが、太平洋に関しましてはよく分かっていないこともあります。こういう大雑把な図ではだいぶ違うということです。例えば上がって表層に行っているような図になっておりますが、決してそういうことではありません。それ以前にどうやって上がっていくのか、特に北太平洋でどこをどう流れてどれくらい流れたのかというのもよく分かっていない。海底地形が複雑でそして解氷域ですので水が混ざって特徴が薄れているというのが大きな原因です。

 90年代の後半から海洋大気基礎部門と言っておりましたが、海洋物理部門、この北大西洋の深層循環をきちんとおさえてこうとしまして今日も続けているわけです。これは95年に書いた簡単な模式図というよりはもうちょっと正確な図なんですけれども、5000m付近の深層水が南から入ってきたらこう流れているでしょう、それが4000m付近だとこうなっています。海底地形が複雑なものですから,深さによってこう違って2本に分かれている。大体その辺のところはこの地点でも私どものhistoricalデータであるとか、WOCEというプロジェクトで我々が取ったデータであるとか、アメリカの人が北緯10度でやった観測であるとかそういうものから想像してだいたい分かっています。これを具体的に確かめましょうということでその後何回か大きな観測をしています。これは99年にやった白鳳丸での観測の測点ですが、日本があって、ニューギニアがあってマリアナ海がある、こういうところでCTDをやって係留計を入れて大きな観測をしました。その結果、深いところ、深層というのは2000mよりも深いところを言いますが、深層循環の話を北太平洋でするときにはさらにそれがふたつ、深層下部と深層上部というように呼んで分けて考えた方がいいですが、これは深層下部に当たるほうです。4000m〜5000m非常に深いところの流れに南から上がってきた深層循環流がこの辺で2本に分かれて、4500mよりも深いところは主にこちら、東側分枝流と呼んでいますが、4500mより浅い方は西側分枝流と呼んでいます。こんな具合になっていますよというのがわかってきました。それでWake島水路に流速計を入れまして観測しますとこんな具合でして,一番上の図だけでいいんですが、下を分解したらでるので1年間の係留予測観測から推定しました流量の変動なのですが、こういう具合に4ヶ月弱の変動をしていて、平均をとりますと3.6Sv。Svというのはいくつか10の6乗/立方m/sというものですが、3.60 プラスマイナス標準誤差が1.3ということで、だいたいここの太い矢印型のところが3.6Svぐらいです。もう少し西側を流れる部分があるので,東側分枝流の流量としては4ちょっとSvということが分かりました。それからこちらの方で西側分枝流の方でも流速計を入れて観測したのですが、完全にはとらえきれなかったので、係留予測変動とかをリサーチしているところです。そんな具合で深い方の流速に分布とか流量の変動というのがこのphaseに関してはよく分かってきた。ここにクエスチョンマークがふたつ書いてあるのですが、だいたい今までの総合的にみてこうとっていることはわかって、このシャツキーライズと伊豆-小笠原海嶺この間が通過していると、ここがひとつのポイントになる場所だと言うことで、9基の係留系を入れてCTD観測をする。2004年に入れて2005年にあげるという観測をすでに行いまして、今は解析を始めたというところです。さらに次はこの辺だなと、この2本が合流してこの辺を北上するわけなのですが、そこで深層の流量,流速変動をとらえることを来年再来年にやりましょうというところです。だいたい深層下部を北上する深層西岸境界流についてはだいたいのところがわかるだろうと思っています。それでもちょっと上の深層上部というのは南極から入ってくる流れがありまして、酸素の豊富な水が流れにのっかってきて、フィリピン海に入っていくというわけで、フィリピン海は閉鎖海なんだけど酸素の豊富なわりと新しい水に満たされた海になっているということです。

 これを説明してると時間がなくなってしまうので省略しますが、これは2000mぐらいのSilicaの分布と酸素の分布なのですが、深層上部に入ってきた流れというのは2000mぐらいになりますと、伊豆海嶺のここをぬけるようになります。フィリピン海というのは入ってきた水にとってひとつ大きな役割をしてまして、もうひとつシリカを見てみますと東の北東太平洋海盆でシリカが多いのですが、深層下部を北上してきた水が最終的に北東太平洋海盆に集まりましてここで海底とかあるいは2000m、3000mあたりでシリカを受ける?ということで酸素が減ると、急速に年老いてしまう。逆に深層上部に入ってくるあたりでむしろ若返るという具合でして、それが新しいほうはこちらをでていく、古い方はこの辺から西向きあるいは南に伸びるという具合でこの古い水と新しい水がこのように接してここにフロントを作っているということがわかってきまして、この辺をさらに詰めていこうとしています。こうした深層の話はこれからも続けて、その路線にのっかって順調にきているわけですが、深層、表層を含めて、全体を水塊というのをキーワードにして研究していこうじゃないかということです。それからここが塩分のminimumの北太平洋中層水,それから塩分鉛直に一様な亜熱帯モード水と、ここが塩分の高い熱帯水という具合でして、例えば熱帯水はこのあたりで作られていると、,蒸発が多いからだということはわかっていますが、それ以外にもここで特別塩分が高くなるためには海のほうのそれを許すような状況もあるだろう、この辺に循環があるだろうと、そういう海の状況というのも調べていこうじゃないかということで、これは失敗に終わった特定領域研究の未遂事件みたいなものですが、北太平洋循環と水塊の基礎構造の解明という題名であわよくば今年度から発足させたいと思い申請をして門前払いをくったわけですが、要するに水塊というのは海の海水の構造を示すものでして、海を理解するのに非常に基本的なもの,それが層構造を作って今の図のように分布しているわけですが、そういう層構造がどのように作られるのかと言うのが今までの定性的な話はいいんですけど、定量的につめていくのが必要なんだと思います。で、それは大気から温室効果気体が海に入るとか、エアロゾルが入るとか、なんかあって、その海の中の水がさらに運ばれて広がっていくと全く同じなのでまず水塊の形成・輸送・変質をつめていこうじゃないかと、それが重要なんだということでいくつかのグループでこういうグループを形成したということです。深層水を特にやるとこと表層水を特にやるとこと、ここは花輪さんや須賀さんと東北大学が中心で、表層のことを主に観測データを中心にやる。変質に関しましては鉛直の拡散係数の関係の乱流とかあるいは二重拡散を計測するようなことで東京海洋大の方でやりました。それからモデリングの方は前にお話になった石崎さんグループで、本当にタイミングのいいプログラムの順番でして、ひとつ前にお話になったまさに気象研の共用モデルというのを使いまして水塊というのを議論していろいろ解析の方で挙がってきましたfailureのようなものを検証しましょうという具合です。例えば観測の方でいきますと今Argoという観測,表層・中層の方で水溶塩分を測るプロトによる観測が行っていますが、ここ数年非常にたくさんデータがある。これから先数年は期待ができるという状況ですし、衛星データも海面フラックスについて非常に精度が上がっているということでそういう最近の大きな進展があります。それから鉛直の計測もこれはTurbo Mapなのですが、こういうのが市販されるようになって比較的手軽に測れるということになっています。そして数値モデルの方も気象研の非常にいいモデルが開発されてきているということで、水塊の関数、定量的な議論をする上で非常にいい環境ができているわけなので、なんとかそれをそれぞれのグループで集まって研究したいと思ったわけです。で、そのときに観測が重要になりますので、去年3年間の計画を決めるシンポジウムがありまして、そこに提案をして実際採択されたのですが、ここは亜熱帯モード水とかここ中モード水とかできるあたりで観測をする。ここは深層流めがけた係留系の観測をするというふうなことで、これは2007年の5月末に実際できることになっています。その翌年に係留系は回収する。それから亜熱帯モード水のところは今度は渦の構造をとらえるために南北線をとるような観測をしています。ということで、特定領域の方は門前払いをくらったのですが、白鴎丸の観測の方は認められまして、これを来年、これを再来年やる。ただし、50日前後希望したのですが、30日ちょっと、申し込み多いのでつかないので、その辺はいろいろとCTDをやるのをXCTDに変えるとかいろいろ考えてやっていこうと思っています。お金の見通しはたっていませんが、研究としてはここで考えてきたようなことを草の根運動的にスタートできないかなと私としては思っています。

 

日比谷:モデリングなんかの値なのかもしれませんけれども、なかなか北太平洋にひきこめないというか、なかなか入らないいという状態ですよね。深層流の話ですけれども、例えば東だけで4Svでしたっけ、まだあるんですよね?

 

川辺:西側の分枝流は2とか3とかなので、おそらく北西太平洋海盆に入っていくのは7とかそんなものです。また、その前にぬけていくのがあるので北東太平洋海盆に入っていくのは10ぐらいが入っていくのではないかと思っています。

 

日比谷:とてもそれだけ入れられないんですよね。どれだけ確かなものかと聞きたいんですけれども。5ヶ月くらい変動が激しいし、渦かなんかの影響の関係がひっかかっているのではないかと思うのですが、脈々と流れていく1000年スケールのものとして考えたときの精度と申しますか、どれくらい確度があるものと思っていいものか?例えば地衡流計算なんかがどうやっているのかとか。

 

川辺:地衡流計算というのは例が少ないんですけれども、やられるときにリファレンスのとりかたであるとか非常に問題もあって、だいたいこんなもんだろうというところにあわせている節もあるんですね。それから実際測ってみますと今回のように添加してやるときはほとんど0であるというときもあって、僕らも式でやったときにはちょうど0あたりになったものですから、地衡流計算するとほとんど流量がでなかったです。ただ流速計を入れているのでそういうphaseだったというのがわかったので、今の研究から言いますと、深層流が流れているまさにそこで係留系を入れて測っているという例が極めて少ない。それをやってやるとこういう変化があって、平均がこうで、その範囲での誤差がこれくらいということで。言ってしまえばこれが最新の情報なのですね。今ここで東のほうで4ぐらいだというのは今もっている情報からすると一番正確ということです。一年ちょっとの係留ですから何千年後のを代用するというとちょっとわからない。

 

発表 中根:国立環境研究所にこの4月に第2期の中期計画が始まりまして、アジア自然共生プログラムというのができましたのでちょっとご紹介させていただきます。4つプログラムがあるのですが、これがひとつ新しいものです。こういう自然共生とアジアという名前がついているのですが、実際何をやるのかと言いますと、3つの中核プロジェクトというのがありまして、アジアの大気環境評価手法の開発,それから東アジアの水・物質循環評価システムの開発というのがあって、それから流域生態系における環境影響評価手法の開発というのがありまして、その中でも大気を見るために、広域越境大気汚染の時間空間的特性、アジア大気関係のモデリングの将来予測、それから黄砂の観測ネットワークと予測モデルの導出があります。このリーダーとして大原さん、アジアの大気汚染のインベントリートとか都市大気汚染とかやってた人なんですけれども、秋元さんなんかも一緒に仕事してきています。それから,主な研究者としては、観測,中国で飛行機を飛ばしていた畠山さんとか、そのほかに領域モデルをやっていた菅さん、気候モデルをやってきた長島くん、谷本くんですね。この辺の人たちがやっています。ライダーネットワークをやってきた杉本さんなんかが入ってきています。このあたりは長江・黄河の観測をやってきた人たちがいまして、モデル屋さんが3〜4人ほどいます。その人たちが長江を中心に黄河との関係も含めて、主に陸水のほうをやる人、それから海,東シナ海に近いところをやる人、それから将来この水をどうしていくかということで拠点都市における将来の技術面、政策などをやるという人たちがいます。それからここは主にメコン川の研究をやるという生態系の人たちのグループがあります。

 環境研では4つのプログラムがありまして、温暖化のプログラム、これは笹野さんがリーダーです。それから循環型社会、自然共生、それから化学リスクですけれども、環境省の今年から始まる5年間の推進,環境技術研究,技術環境推進戦略というのがありまして、そこに4つの中心的な課題がありますが、それが全体として持続可能な社会を目指す中で、4つの側面というのが書かれていまして、これがそれぞれ総合科学技術会議の温暖化イニシアティブとかそれから水循環・生態にわりあい対応しています。こういう4本の柱をたててプログラム化したというのが環境研の新しい体制であります。この自然共生というプログラム、自然共生型社会を目指すということと、全体を横串でつなぐためにアジア地域に重点をおいていくということでアジアと自然共生というプログラムをつくりました。

 自然共生とは何をやるかというとですが、健全な生態を可能とする水環境および大気環境の実現と言うことで、大気と水と生態,この3つが鍵となります。実際,問題としてターゲットとしているところは、大気汚染の黄砂、越境大気汚染、長江・黄河の水、東シナ海,メコン川このあたりの問題をやって、国際貢献,環境安全保障をやっていこうというそういうターゲットになっています。実際何をやるかというと、越境大気汚染の黄砂の観測ネットワーク、それからこの辺の観測データのデータベース、それからマルチスケールのモデル、将来予測,こういう排出イベントリの改良,このあたりを大気でやる。水の方は、観測とモデリング、それから将来への対応です。ここでは主にメコン川の流域の生態系をやるということで、最終的にはアジアの環境管理政策支援の基盤としての科学的な知見の集積と、モデルも含めた環境管理のツール、この辺を中心にやっていって、政策軽減につなげていきたいと思っています。大気ですが、環境,観測のデータでサブテーマ1というのが主に観測なのですけれども、サブテーマ2というのがモデリング、ブテーマ3というのがコースで、観測のデータベース化をやっていくということでモデルのほうはグローバルモデルから領域モデルまでいろいろなスケールがあるのですけれども、それをマルチスケール大気汚染モデルというのを作って、越境大気汚染の影響の定量化,広域大気汚染の全体とか、モデルは気候モデルをベースにしてですね、CHASERとかSPRINTARSとかのユーザーになりつつ開発を進めていきたいというところです。それから黄砂については宇野さんとこの九大のグループのデータ同化モデルを走らせますから、ライダーデータや地上観測のデータをあわせて同化をやる。もうひとつは黄砂の上での表面での反応をモデル化する。ということで,黄砂の将来予測,黄砂の物質循環,このあたりのデータも至急出していきたい。このあたりについては将来シナリオとかです。今環境研では昔からやっている、Asia Integrated Model 、近隣モデルとかです。今50年先単位のバックキャストということでビジョンシナリオ研究というのがありますので、このあたりが絡んでいるということです。それから全球モデルから私たちのターゲットのところと連携してやっていくという感じです。プロジェクト2で水のプロジェクトがありますが、そこに水の方も将来の水循環がどうなるかという,流域モデル,流域の環境がどうなるかというところをモデル化していますので、そのあたりは気候モデルのデータをインプットしていかなくてはいけないし、それから水の方で、例えば硫酸イオン、硝酸イオン、そういうものがどういうふうに水の方に入っていくかというのは大気汚染モデルから入力するということで、大気と水のモデルですね、その辺をうまく連携してやっていきたい。それから生態系の方も割合水と生態系は一緒にやってきたこともありますので、大気と水と生態系のインテグレーションをやっていくということを研究所内でやりつつ、割合アジアと言っても大気は広くできるのですが、水とか生物のほうでは長江とかメコン川とか限られたところをやっていますので、全体像をつかむために大学とか研究所との連携をやっていかなくてはいけないなというところです。

 今までそれぞれ地球環境変化総合推進プロジェクトとか所内の特別研究という形で割合ばらばらでやってきたアジアの大気の研究,水の研究単独でやってきたものがこういう形でひとつになったということをご報告しまして。さらに連携を進めていきたいということです。

 

中島:ダイオキシン関連だとかはどこにあるのですか?

 

中根:化学リスクというところです。全部環境研のプログラムは書いてありませんが、温暖化プログラムと廃棄物循環型プログラム、それから化学リスクのプログラムがありまして、ダイオキシンはこの辺に入っています。これは環境省の文章ですけれども、環境研の中期計画のホームページを見ていただきますと化学リスクがあります。

 

中島:サイエンスの主題とかテクノロジーの主題とかでわけるのではなくて、アクションの主題でわけるのですか?

 

中根:持続可能な社会のための4つの側面に対応させてわけました。

 

中島:大間違いだと思うのですが。そうではないのですか?そんなので研究できるとは僕は思えないのですが。

 

中根:こういうターゲットにあわせていろんな分野の人たちが集まってやっていくという形です。

 

中島:だぶるのでは?

 

中根:温暖化と自然でだぶるし、循環型と温暖化もだぶりますし、いろいろだぶることはあります。それはむしろいいことだと考えます。

 

余田:アジアというキーワードがでてきたのですが、アジアの国々との関係について聞きたいのですが。キャパシティビルディングとかアウトリーチとか、そういうピュアな研究以外の関係というのはどういうふうなプロジェクトの位置づけになっているのですか?

 

中根:実際にキャパシティビルディングなんかはプロジェクトの中でやっていかないと意味はないんですよね。だけどもなかなか研究に専念しているので難しい。そこで、アウトリーチとかキャパシティビルディングとかをやるための環境を作るというのをプログラムとしてやっていく、それが私たちの仕事です。

 

早坂:エネルギーとか経済とかはどういう扱いでしょうか?

 

中根:この辺で非常によくやるんですけれども。温暖化プログラム,笹野さんがやってらっしゃる温暖化プログラムの中でエネルギー、経済のビジョンをやる人がいまして、将来シナリオとか、AIMとか、ビジョンシナリオ研究というのがありまして、このあたり,温暖化プログラム中心に横断的に基盤研究、温暖化研究をプログラムを中心に一緒に横断的にやって、それをベースにして循環プログラムもアジア自然共生もやっている。そういう横串というか横断的にやっていくことになります。

 

発表 野田:ご存知のように独法化にむけて公式に動き出しましたので、いろんな情報収集とかそういうことはきちんとしなくてはいけないのででてきました。未来を今の段階で話せないので、気象研究所として気候研究どういうことをやってきたのか振り返りながらこれから何をやろうかということを考えようと思って資料を作ってきました。ここに書いてあるのは日本の全球大気モデルのケースですけれども、全ての始まりは数値予報と時岡さんがUCLAから大気大循環モデルを導入したところから始まったわけですけれども、そのあと数値予報課の方で天気予報に付随したモデル開発と、気象研究所で気候モデルによる研究をするためにUCLAモデルを用いたモデル開発から始まって大気海洋結合モデルの開発というところまでいったのですが、そのあと気象庁としてモデルを統一してやろうという機運が高まりました。どうしても計算資源が不足していることもあった。しかし、この(統一?)モデルは解像度をなかなか上げられないというそういうところがありました。数値モデルというのは効率化を第一に考えて開発しているので、そのへんの両方のいいところを取り入れたモデルを開発するのとして、統一モデルができるのではないかということでやったわけですが、実際はこれの年代としては96年あたりからやったのですが,統一と言うことは言葉で言うのは簡単ですが、10年間かかったということです。住さんがCCSR,東大に行ったあたりから数値予報モデルがあって、また新たに沼口さんが開発したモデルで別の流れがこうできてきました。ここで何が言いたいかというと、分岐していくのは簡単なのですが、いかに統一するかというのが非常に難しい。誰が考えても、統一的にやれば効率が上がるだろうと言いますが、それにはものすごい労力がいるということです。実際、ここで注意していないとすぐわかれていくのです。日本の統一モデルと簡単に言うけれども、きっちりそれを監視しておくというシステムというのをしておかないと、言葉で言うのは簡単だけれども、これはかなり難しいことではないかと思います。温暖化研究で気象研究所は初期の段階からIPCCに関わってきたわけですが、最初は大気海洋モデルではなくて大気海洋混合層モデルのほうから出発して、最初は10年くらいの積分というのが大変だったというような、今から考えればずいぶん大変なところから始まっているわけです。それから大気海洋結合モデルを開発して、IPCCの第1回から第3回,第4回とこうやってきて、その間にはじめは温暖化予測モデルというのは気象研究所だけだったのですが、CCSRとかフロンティアとかでてきて、日本国内でも競争関係になってき、,気象研究所として何をやろうか、特質を何に出そうかというところで我々も少し考えたわけです。気象庁という枠組みの中では日本付近の温暖化予測ということで必ず情報をださなくてはいけなかったので、全球モデルと地域モデルの両方を並行して開発するというそういう立場でやった。それは良かったと思います。結局全球モデルでは日本付近というのは難しく、そこに注目したようなパラメタリゼーションというか、そういうところを考えないと日本付近の気候の再現性というのはうまくいかないというのがよくわかってきました。この流れというのはこれから独法化しても多分気象庁の方にかなり付いた形でやらなくてはいけないということで、日本付近の地域,気候変化というのはきちんとやっていくというな体制にしたいと思います。

 

(中島:アジアではなくて日本と言うのは?環境研がアジアだから?)

 

計算資源の問題があって、実際やってみるとアジアまで広げるには計算資源が足りません。そのへんはこれから考えないといけませんが、リージョナルモデルをやっている立場から言うと、アジアまで広げるには解像度が数kmの解像度でやろうとすると難しいのではないかと分かっています。まずは日本付近からアジアに広げていこうと思っています。一方で地球シミュレーターを使ったRR2002、これは大気モデルを改造すれば温暖化予測に使えるかという経験をつみましたので、それを活かした方向でやっていきたいと思っています。現在気象研究所は国立研究機関ですが、一応中期計画で5年ごとに独法化を先取りしたようなことをやっていたのですが、それが本当になってしまって、独法化のサイクルと合っていませんから、これはまた見直さなくてはいけないということになっています。あまり詳しく話しても2年後にはまた違う研究計画になると思いますので簡単に言いますけれども、気象研究所では気象観測・予報、それから気象ですが地震・津波・火山に関する研究、それから気候・地球環境に関する研究ということで3つの大きな柱となって、この柱は今後も続くと思います。

 問題はここをこれからどうしていくかということなのですが、やはりモデル開発の経験を活かした形で先ほど言いましたとおり、日本付近をやるためには全球とのカップリングというのは絶対に離すことはできないのです。それから全球という面では地球システムモデルという方向でいかないことにはリージョナルな予測についてもあまりちゃんとしたことは言えないということですから、この枠組みというのは変えずに気象研究所の今までの結合モデルの開発を通して培ってきたノウハウは真髄活かしてリージョナルな方とこれを並行してやっていきたいと思っています。今朝一番最初の方に木本さんの方から、気象予測コンソーシアムの実施体制ということであったのですが、3月の段階まではこういうことでやろうと考えていたわけで、この中心となるところが気象庁と日本気象協会との共同研究という形、ここは変わらないわけなのですが、それの運営の方の気象研究所が主体になるという形で3月までは動いていたわけですが、独法化して非公務員型になりますとこの辺の関係が変わってきますので、これについては今はこういう形でいけるかということは不確定なところです。ですが、かなりのところは気象研究所もやっていきたいと考えています。で、これが正式に動き出したという証拠でして、行政減量効率化有識者会議の回答というのが5月12日に気象庁から出まして、気象研究所を独立行政法人化して174人を非公務員型にするので定員削減をするというものです。その中で、非公務員型に移行するにあたって研究者の積極的な人材交流と、これは主に気象庁との人材交流を考えているのですが、そこはうまく担保していく。それから多様な研究資金の活用、その中で、今話しましたけれども積極的な人材交流のところで、やはり気象庁と気象研究所の間での従来の通り円滑な人事交流を図るということです。が、非公務員型になったときにどのくらい担保できるかというところはこれからやらなきゃいけないというところで結構難しいのではないかと思います。それから研究計画の作成について気象庁と調整する枠組みを確保するということ、気象情報のことについて気象庁に提案する対策をつくる.そういうものです。確かに研究者の積極的な人材交流の中で大学との交流というのも重要なものですが、まだ勉強始めたばかりなわけです。昔の国立大学と国立研究機関の間の人事交流というのは制度上難しいところがあって、例えば退職金の算定方式というのは保険が違っているから継続できないとか、そういうところは日本全体で研究者の積極的な人材交流ができるような体制に向けてもっと働きかけていかなくてはいけないと思います。

 

住:人材交流のところで、大学を辞めた人は60歳をこえた人はどこに雇っているんですか?そういう形でやれば、しかも資金持って来い、給料自分で払いなさいという形でどんどん他のところからいっぱいもってくるということを考えていますよね。気象研の経費がなくてポストが偏るということも考えられますよね。そういうこと考えればいいんじゃないですか?

 

野田:極端に若い人と極端に年取ってる人にとってはあまり人材という意味では問題ないかもしれませんが、中堅所が一番問題になっていることだと思います。これは気象研だけの話ではありません。

 

江守:最初の話ですが、モデルがひとつの方がいいということですが、その絵を見ていると機能的に統一できないことが証明できたみたいな雰囲気がいやだなと思いました。3つありまして、ひとつは統一できない事情として役所的な都合が入っていて学術的な理由とは違うということ、もうひとつは時代が変わってきたのではないかということです。今まではどんどんあるモデルを持ってきて、自分Versionにして使っているうちにモデルになっちゃった。まだモデルがパーソナルな時代だったことに比べて、特に温暖化研究というのがビッグプロジェクトになっていって本当に大きなチームでやるかやることスケールメリットということがでてきますので。その辺をもう一度考えた方がいいと思います。もうひとつは忘れてしまったのですが、第3次科学技術基本計画の分野別推進戦略というやつで、文科省の書いたところに2010年までに統一日本モデルをうんぬんと書いたところがありますので。難しいところは僕も分かっていますが。3つ目の質問は、温暖化予測したときに,気象研では2度上がるといって他のグループは4度上がるというときになんで違うかわからないと大変恥ずかしいのでちゃんと説明できなくちゃいけない。そういうこともあるので、少なくとも共通プラットホームぐらいのphysicsのところから時間をかけてもうちょっとおつきあいいただきたいと思います。

 

野田:役所的なところもありますけれども、研究じゃなくてモデル開発自体、気象庁がうまくいったひとつは数値予報課というあういう確固としたコアがあったというところが非常に重要なところで、それを日本全体を考えたときに、そこのコアはもう少しちゃんと考えて作らなきゃいけない。

 

発表 佐藤 薫:みなさん、こんばんわ。(拍手)昨年の10月に人生ってこういうこともあるんだなというような異動がありまして、本郷のほうに来させていただきました。極地研が長くて6年間ずいぶんやってきまして、それこそ正負のキーワードに振り回されてきた6年間だった。そういうところから大学に戻ってですね、学生さんと付き合ってくると、本郷はだいぶ長いこと教授が不在であったこともあって助教授の方ががんばってこられたんですけれども。最初に思ったのは学生さんのスペクトルといいますか、それが非常にピーキーになってしまったというのが正直な感想でした。つまりですね、自分の専門に関しては最先端の研究ができるんですが、ちょっと関連したところの質問をするとわかっていない。つまり基礎が非常に薄くなってしまって。それは東大だけの問題ではないと思っています。私はまだまだみなさんと比べると若い時代で、それこそ10年くらいあるんですけれども、本郷の教授は気象学会をリードしていくポストであると言われてですね、本当にその通りで、自分が未熟であることも承知しているのですが、みなさんには長い目で見て頂いて最初の10年ぐらいは大学の普通の一教授として研究と教育をがんばっていきたいと思います。その後、ここにいらっしゃるほとんどの方が退官された後も私はおりますので、それなりに考えていこうと思っています。

 

発表 花輪:今日の私の話の内容は,近い将来どうしようかという話ではなくて、私たちの研究室ではどうしようかという話をしようと思っています。冬季海面水温偏差の再現とその気候の数十年変動ということで。みなさんご存知のようにCLIVARというのが1995年から2013年まで走っています。3つの柱があるんですが、その2つ目の柱というのが数十年から百年の気候変動の中身を調べましょう、

仕組みを解明しようということなんですが、95年から始まって、11年目、12年目に入ろうとしているんですが、これがまったく決着がついていないという段階にあるんですね。世界中の研究者,海洋研究者、気象研究者,気候研究者たずさわっているんですが、まだ万人に納得させるような説をだしきれていないんですね。そういう中で我々はどういうアプローチをしているのかということをお話させていただきます。とはいえ、今日はせっかくの機会ですので急遽今一枚差し込んだのですが、海洋研究者が今、海洋物理学に革命が起こるのではないかと期待しているアルゴ計画、みなさん聞いたことがあると思いますが、それの話をしたいと思います。これ、黒いドットが世界の海洋の上に打たれていますが、これは昨年10月29日現在のアルゴフロートの数です.分布です。2076。つい1週間まえくらいを調べてみますと,これが約2500あります。我々の期待では今年中,あるいは来年明け早々にでも目標の3000に達すると希望を持っています。このアルゴフロート、みなさんご存知の通、10日おきに約2000mから表面まで上がってくるんですけれども、そのときにとったデータを人工衛星経由でデータセンターに送ると、10日おきですから、それから3000個入っています。ですから1年に十万データくらい入手できるということになります。これは今まで船で測っている数っていうのがあるんですけれども、ほんの2〜3年でその点を凌駕するくらいのデータを我々は得られることができる。こういうデータを淡路さんがお話されていた。あるいは石崎さんがお話されていた海洋データ同化モデルに入れて物理的な解析を与えるようなデータセットを作りましょうということで進められておりまして、我々は非常に大きな期待をしています。気象の方はあまりご存知なかったかもしれませんが、こういう情報をお話します。計画もお話しなくてはいけませんね。この計画、日本で400個くらいのフロートを流しているのですが2000年〜2004年まで走ったいわゆるミレニアムプロジェクト、小渕首相が計画したプロジェクトで走ってきました。昨年の4月からまったく新しいプロジェクトになりまして基本的にはブイを流すのはJAMSTECと気象庁、JAMSTECが年間約80〜100,気象庁が15〜20流す。それをまとめるアルゴ計画推進委員会というのも文部科学省の海洋地球課の指導の下に今できていまして、引き続き昨年から我々が期待するのは5年間ぐらい,こういう体制が維持できるのではないかと考えています。世界的にもアメリカが大半入れているんですけれども、ロアナ?ももう5年これにファンディングするということがありますので、この観測体制というのは少なくとも5年以上は続くと期待しています。 

 それでは本題ですが、前年の冬季生じた海面水温の偏差、アノマリーが夏落としていって次の冬にまた現れるというのが再出現と言います。1970年代から知られていたのですが、研究が盛んになったのは最近です。例えば木本さんも,渡邊さんと一緒に北大西洋の研究をしてらっしゃいます。これはおもしろい現象であると思います。すなわちこの図はですね、冬季の海面水温と亜表層の400mまで書いてありますけれどもラグ相関係数の分布を2年分書いてます。冬季の偏差の信号が、相関係数の分布なのですが夏季に亜表層に入って冬季また混合層が発達するときに、また表面に現れてく。これが再出現なんですね。これを徹底的に調べてやろうと、世界中の再出現海域を調べてみますと、こんなところにでてきます。たくさん色が書いてありますけれども、これは海面水温データセット5つ使ったからたくさん書いてあるんですね。これは変数をもらう海域と変数を出す領域が同じところの図です。そういう意味で我々は定在型というふうに名前をつけているんですが、これと川辺さんの話にありましたモード水ができているところと一致しているんですね。海洋にも強い流れがあります。黒潮とかGulfストリームがあります。そういうところでは一部の水がアドベクションされて遠いところに再生を起こす。そういう可能性があるわけですね。それを太平洋で調べてみたわけです。実際ここが亜熱帯モード水ですが7〜8ヶ月同じところに再生させるわけですが、12ヶ月のさらに太平洋のど真ん中で再生するということがわかりました。これの移動速度を調べてみますと、だいたい11cm/s、この辺の地衡流を計算しますと13.5cm/s。ということで水が移動して遠隔地で再生するということを示しています。実際それを亜表層のデータから調べたのがこれです。同じように冬季の海面水温、亜熱帯モード水ができているところの水温偏差の時系列と亜表層のデータを使いましてラグ相関解析をした。6ヵ月後、9ヵ月後、12ヵ月後。そうしますと亜熱帯モード水ができているところの信号というのはたしかにadvectして太平洋のど真ん中に再生しているということがわかったのです。じゃあ、これがいつも起こっているのかということで約100年まではいかないのですが、80数年分の亜熱帯モード水のコア水温、代表的なコア水温の時系列を別の仕事で作りまして、それと亜熱帯モード水のコア水温と北太平洋の海面水温の相関解析をしたんですね。そうしますと移動相関係数が15年なんですけれども再出現する時期、しない時期、する時期、しない時期、する時期というふうに20年周期で再出現がしたりしなかったりというのがわかってきました。じゃあなぜこんなことが起こるのだろうということで、これは追試ですね。亜熱帯モード水とその年の冬の海面水温の相関係数の分布、相関の高いところを示しています。15年刻みで表しているんですが、こちらは1年後ですね。失礼しました。そうしますと同じように出現している15年、していない15年、している15年、15年というのはただ解析の信頼をあげるために15年。実際は10年ぐらいの周期で変わっているということがわかりました。ではなぜこんなことが起こっているんだろうということで、海洋にインプットされている風の応力場と相関をとってみたんですね。具体的にはみなさんご存知だと思いますがNorth Pacific Index、TrenberthとHurrell が定義した北太平洋指数,アリューシャン低気圧の強弱を示しますけれども、それとのラグ相関,North Pacific Indexの時系列、それと先ほどのrunning移動相関の時系列、これのラグ相関をしますと、ちょうどLPR,すなわちアリューシャン低気圧が4年〜9年先行してこの現象に結びついているということがわかった。つまり,アリューシャン低気圧が強くなって海洋がスピンアップし始めて4年〜9年後に再出現現象というのが起こるということがわかったということです。じゃあ、この再出現現象が太平洋のど真ん中の海面水温にどのくらいインパクトがあるのかということを調べるために重回帰モデルを作りました。データは2つ使ったので,2つの時系列がありますが、まず上がNorth Pacific IndexとSSTの重回帰モデル、そうするとNorth Pacific Indexの変動によって海面水温は0.58ぐらい説明できます。さらにそれに先ほどの亜熱帯モード水の水温の信号を1年遅れていれてやるわけですね.そういう重回帰モデルをつくるとかなり相関があがる。これは全体の割合の60%を占めているわけですけれども、結論的にはこの再出現のメカニズムを考えることによって太平洋のど真ん中の海面水温というのはよりよく表現できるというわけです。さて、じゃあ,これが20年周期の気候変動とどう結びつくのですかということですけれども、ご存知の通り,太平洋の数十年スケール変動には有力な説が2つあります.たくさんありますが、特に有力なものが2つあります。上の方がGu and Philander説,下の方がLatif and Barnett説で、ようするに海洋が10年、20年というタイムスケールを決めていることはどちらも同じですが、赤道域がからんで信号が起きているのか、あるいは亜熱帯循環系が閉じて起こっているのかということで2つの説があるということです。私はずいぶん前、15年ほど前にこちらの説をとってきたんですが、最近はこちらの説でアプローチしているんですけれども。例えばこんなストーリーが考えられないかということでこれが我々の仮説なんですね。アリューシャン低気圧が弱まっている状態、強まっている状態,どちらからスタートしてもいいんですけれども、アリューシャン低気圧が強まると亜熱帯循環系がスピンアップする。スピンアップすると当然黒潮の流量増加と結びついていますので、それが亜熱帯モード水の代表的な水温を上昇させる、あるいは下降させるという現象。これが1年後に太平洋のど真ん中に、SST,ど真ん中のSSTに影響を与える。で、この信号がアリューシャン低気圧にネガティブフィードバックをかける。ネガティブフィードバックをかけますとこれと全く対称的な経路をとる。今までの研究でたくさん研究があるのですけれども、ラグを勘定してみますとだいたいこの辺までで7〜8年なんですね。この太平洋のど真ん中の信号とアリューシャン低気圧の信号の強弱がどうやって結びつくかということは全くわかっていないのですが、この辺のところを明らかにする。ということがだいたいわかっているのですが、なかなか直接的な証拠がない。こういう一連のプロセスの中でまだ穴がいくつかありますので、そういうところを丁寧に解析していきたい,そういうところが我々の今やっていることです。

 

中島:東北大学の学生の質とかどうですか?学生さんは研究できるんですか?

 

花輪:そうですね、しっかりすれば東北大学の学生はまじめなのでやることはやると思うんですが、

 

やはり同じだと思うんですが、問題を設定してあげると解決能力というのは極めてあります。コンピュータを使う、解析手法を勉強する。それはできます。問題は一番大事な問題は何かとか、夢のある問題は何かという問題設定能力が極端に落ちているというふうに感じます。昔は何もできないくせに大変損をする学生が多かったのですが、ところがそういう学生というのは本当に少なく、先ほど佐藤さんが若干もらしておられましたけれども、東大もそういうふうにだんだんきているなと私もよく思いますけれども、問題設定能力が全くない。

 

中島:真ん中のアリューシャンlowが弱まるというのは大丈夫ですか?

 

花輪:わかりません。ここは今いろんなことを言っているのですが。続流域が一番大事だと。続流域というのはここまでのプロセスで、こんなのは関係ないよという人もいるんですね。で、中緯度ですから鉛直に起こる結合、大気と海洋の結合はそんなに強くない。むしろ上流側でおそらく水塊のようなものを与えてやるとか、下流側で偏西風の蛇行、つまりはアリューシャン低気圧が強くなるのではないかという考え方ももちろんあります。全くここは手付かずです。直接観測なども考えられないこともないんでしょうけど大変難しい問題です。私は気象と海洋の世界が一緒にやらなきゃいけない問題だと思います。

 

佐藤正樹:中島さんと同じような質問ですが、東北大では気象研究室では岩崎さんがいますが、その関係はどうなのか。あと、岩崎さんに聞くと、東北大とはローカリティーが重要で、例えばやませの研究とか地域性というのが重要であると北大の山中さんも言ってまして、その辺のそういうトレンドとかは?

 

花輪:まずローカリティーのお話ですが、岩崎さんのところは確かにローカリティーを非常に意識されていますね。もうひとり岩崎さん自身ではなくて余さん、助教授の先生がもっぱら領域モデルを使って、やませとかあるいはたちかぜの研究をされています。では海洋はどうかと申しますと、全くローカリティーは考えていません.やることが多すぎてローカルなことまでやれないというのが本音です。もうひとつ、岩崎さんの研究室と我々の研究室との関係はどうですかということなんですけれども、仲はいいんですが共同研究をするまでには至っていません。岩崎さんは我々に対して、海洋モデルを動かさないまでも結合させたモデルを動かしたらその海洋部分を見てほしいという話はしています。

 

佐藤正樹:僕が聞いたのは,地域の企業とかそういうところから資金をもらうとそういう研究をやるというベクトルが働くと思うのですが.そういうのはどうですか?

 

花輪:我々地球物理のいろいろな分野、それであれば全く期待できない。唯一衛星を扱っているのが関係ある。NOAAの受信設備を東北電力と一緒に作ったという話はありますけれども。我々の分野で特に地方の企業やる気があるうちはかまわないんですけれども、そういうものがあったりしたという例はありませんし、私どもとしても,ちょっと見つけられそうにないなという状態です。

 

発表 山崎:私はサイエンスの話も政治の話も出来ないので、単なる紹介で五分で終わりたいと思います。北海道大学で気候に関係する部局は理学研究院と地球環境惑星と低温研が有ります。ただし教育組織としては二つ。主に教育の話をします。理学部としてはこういう人が居ます。四月から新しくなって、理学部にはこういう人がいます。二つに分かれていますね。さらに専攻で言うとこの林、遊馬グループ、見延さんはちょっと違う。それで、理学ではCOEもやっています。地質が主だけど自然史?創成なんかがあって、見延さんなんかが入ってそれで一つその下が分かれたんだと思います。私の居るところは地球環境科学院ですが、去年から、ここが中核ですが、その他にいろんな低温研とか一緒になって、教育組織としては環境科学院になりました。環境科学院というのは環境起学という事で、学問を興すのか、起きて学ぶと言うか、寝て学ぶのは難しいから、まあ学問を興すという話らしいんです、池田先生が言うには。つまり、今までは分野で、たとえば環境分野で、これは化学ですね。これは我々の分野ですね。これは何かと言うと、問題解決型を目指すと言うことです。たとえば温暖化という課題や水循環、環境修復、オゾン層の破壊とその影響評価とか。それぞれの課題の解決を目指すと言う専攻を作ったわけです。半分は本当にそういう研究をやるということも有るんですが、半分は学生さん、さっき世代の話もしましたけれども、今の世代の人がこういう問題を取り組もうという事で人を引き付けるという事も有るんだと思っています。それは有る意味では成功していて学生さんも結構受けてきている。それに対応する教員組織は統合環境部門と地球研と環境生物があります。さっきの専攻と言うのは色んなところから、これはちょっと、中核部隊はここですね、そう起学、温暖化とか広域連携とか、ちょっと分からないですが、これはどちらかというと社会的学問というような感じでやっております。それで、これが環境科学院の概念図で学生を集める時に東京で説明会をやったりしますが、そのときの資料をお借りしてきました。こんな事をやるんだよと言って。先ほど言いました地球温暖化とかオゾン層破壊とか広域環境劣化とか水循環とか環境修復とか、この共生システムというよく分からない、これは社会と共生するシステム、と言うようなものを設けています。

 後COEもやっています。一つ強調しておきますと、北大は生態が強いです。気候と生態の分野で一緒にやっていくという部分が大きいと思います。これはCOEの模式図で、こういう所でやっていこうという話です。あとサステナビリティも行っています。それで研究としては山中さん、康裕さんですね、が中心になってやっています。COEと関係するんですが、この山中さんが、グローバルの研究はフロンティアでやっていて、リージョナルな研究は北大でやっています。そういう使い分けをやっております。北海道では東アジア域で海洋生態系モデルと海洋循環モデルを動かす研究をやっております。

 

 

中島:今の環境学の専攻ですか?それとも、起学というのはどうなっているのですか?まったく別の二つの専攻に、教官はどちらかに?

 

山崎:教員はどちらに入っているかと見せますと、こうなっていて、こうなっていて、私とかもう、いい加減な人たちは池田さんとかは統合部門に入っているのですが、元のグループは地球研と言うグループに入っていて、起学…、ちょっと複雑なのですが、教員組織としてはこうわかれています。教育組織としては、専攻としては、長谷部さんとか山中さんは起学の方が主になっています。我々の居るところは言わばセンターみたいな地球環境科学研究庁みたいな感じになっていると。

 

中島:非常に面白い。

 

山崎:例えば我々は低温研と教育も一緒にやっていますし、水産の、例えば岸さんとかサンマの研究をやっている、一緒になって教育をやっている。組織としては一緒になって、だから教授会なんかも岸さんと一緒になってやっている。

 

安成:環境科学院というのは、そうすると横断的な組織なんですか?

 

山崎:そうです。環境科学院というのは我々の所が中核ですが、他の色んな所が一緒になって、でも教育組織なんですよ。

 

淡路:皆さん方は二束のわらじをはいていて、教育組織と研究組織っちゅうので、同じ地球環境科学研究員でも、教育組織としては同じだけれども、研究組織としては違う所にいっておられるという、そういう事なんかなと、そうなんですか。

 

山崎:そうです。今まででも例えば低温研の先生方は研究組織とか教授組織としては低温研に居て、教育としては地球環境が主だったんですけど、いわば地球環境科学院の一つのセンターに成り下がったと。

 

淡路:ついでに酔った勢いで聞かせて頂きますけれども、こういう組織形態を取ろうと思ったのは、内在的に出てきたんですか?それとも外圧でこういう事になったんですか?

 

山崎:それは私の見るところ池田さんのイニシアティブが強い。そうしないと、全体の学院研究院構想ってありましたよね、何年か前に。それに乗ったって所もあると思います。だから外圧もあった。出て行った人も居ますけれども、改革があった時に。

 

安成:環境科学院にも別途予算が付いているのですか?

 

山崎:環境科学院というのは教育組織だから、予算は教育予算しかありません。だから、学生の予算がありますよね、それがここにつく。

 

中島:それはドラフト機能として活きているのか、あるいは本当に真面目に次世代にそういうクロスオーバーする人を育てようとしているのか?

 

山崎:半分くらいは真面目にやっています。だから、非常に難しいんですよ。教育の話として入ってくる人は色んな分野から来ますので、なるべく、そうですね、そこに興味があれば、興味がない方も居られますけれど、この次のスライドかな、すいません良いですか?教育の話なんですけれど、修士二つ、我々の分でこの環境起学統合コースと言うのがあって、これが新しいのですね。先駆と言うのは今までと変わらないのですけれど、これは言わば色々な分野を総合して問題解決をしようというような感じで。ですからこれ、必ずも一つではなく、文科系も入ってくるような入試にして、教えるのも指導教員と副指導教員で複数体制でやって、環境問題的なものをやろうと言う事でやっています。ただしこれは、多くの人は就職してしまうので、我々の研究分野に貢献できるかどうかは別ですけれども、要するに学生さんを集めて、それの求める、今の若い人の求める教育をしようという事です。それがなんなのか。強制された部分も多少はあるかもしれないけれども、我々の意思で、我々と言うか池田さん達か、我々の意思で始めた言う事です。

 

中島:東大ほどのこだわりではないんだ。横型の組織が今ボコボコ出来た。出来つつあるし、今これでよく分かるのは一人の教員がいくつもの顔と、その時間を割いているのが良いのかどうかという問題。さっきの環境研が私はあれで良いのかって言ったのはその、色んな問題解決だって言っちゃうと、オーバーラップしても色んな所に入り込んでいるので、かえってロスが大きいのではないかと思う事もあるし。勿論理詰めで行くとこうなっちゃうんだけど、っていう、そこはこれから面白い所ですよね、そこが今回変わるのかという所が。

 

山崎:まだ一応二年目なんで、まだ修士の学生が出ていないんですよ。こういうシステムになって、これからが楽しみですね。楽しみというか…ただ、大変です。色んな事が入ってきて。

 

佐藤正樹:本当に山中君とかの話だと、なんか本当に山中君一人で引っ張っているのではないかという気がしてですね。あの、実際に大気の人が居ますよね、環境起学としてはどういう顔の事をやっているのか?本当に何かやっているのか?大気の出身の人はですね。北大に行って、気象に就職して、本当に気象は出来るのかという事になっちゃうんですけど。石岡先生や余田先生の所をでて、気象で今居ますけど、気象をやっているのか環境起学をやらされているのか?その辺はどうも。

 

山崎:どっちの話ですか?教育の話?

 

佐藤正樹:教育の話です。

 

山崎:教育の話ですか。えーと、じゃ先ほどに戻るか。そういうのをやらされているのは私と山中さんと池田さんぐらいで。例えば渡部さんとかはやっていません。だから大丈夫です。心配ないように。ちゃんとそういう研究者的な人はそういう事をやって、こういう事をやっているっていう人はこういう事もやると。山中さんは器用な人だからこういう事もやっていて。だから風力発電とかね、そういう事もやっています。

 

余田:京都で言うと環境学堂みたいなイメージで聞いていたんですけれども、例えば工学系のですね、地球工学だとか衛星工学だとかそういう所とは距離がある訳ですよね。

 

山崎:そうです。工学は無くて、社会も無くて、ただし授業でカリキュラムで北大は公共政策大学院というのがあって、そこのカリキュラムを聞いてくださいだとか、非常勤講師を読んで来るとかやっています。だから内部に居る人は理系の人なので、必ずしも…。

 

発表 余田:私は話をするともしないとも、このテーマであるともないとも何も返事をしていませんので、ただ根が真面目ですからこれで話すというメールを先週もらいまして真面目に取り組んでまいりました。想像するに私の先代はこうやってこういって辞めたんですね。二十世紀、特に広範は素晴らしい時代であったと。で、気象学は目覚しいと。それで多分これを聞いていた誰かがそんなら二十一世紀はどうであるかと、私にご指名がかかったんでないかと思うんです。で、今の若い人たちは何か問題に行き当たるとgoogle先生に聞いてみるというのが正解です。それで、「二十一世紀展望」と聞いてみました。そうすると良いことが一杯書いてあると、それで私は生き延びられて紹介します。最初に一番トップに書いてあるのが「中央教育審議会」の十年前の第一次答申です。で、二十一世紀を展望したわが国の教育のあり方について、まだゆとり教育がまだいいんだ、まだゆとり教育でいけるという時代の答申です。で、子供に生きる力とゆとりを。で、第一部、第二部、第三部とある。このキーワードが非常に勉強になりました。それで作ってまいりました。「二十一世紀を展望したわが国の気象学、気候学研究の有り方について。」今日始めて発表させていただきます。

 

(佐藤正樹:海洋は?)

 

気候学に入っているという事で。研究者に、こう、どうしよう、生き延びる力くらいはより良いかなと思ったんですけども。それとゆとりをと。皆さん本当に競争疲れというか、ゆとりが無くなっているように思います。本当にこんな事をやっていたら学問は疲弊してしまうというか、じゃないかと思います。それでやっぱり急ぎ良い題が付いていると思います。まず第一部ですけれども、今後における気象学気候学研究の在り方。を、まあ見出しだけしか書いてありませんから。あの、よく考えましょうという訳です。ここを少し変えたんですけれども、今後における気候学、気象学のありかた。大学、研究機関、それから社会の役割と連携の在り方。それで、研究機関というのも大学を細分しての大学の研究室、研究センターというのと、独立法人化してのこれから向かうであろう気象研究所とか環境研究所とか、またそういうところ。それからやっぱり一番今の時代大事なのはその外側、社会とどう関わっていくかという事は常に考えておく必要が有るんじゃないかと思います。

 第三部。国際化、情報化、科学技術の発展等、社会の変化に対応する気象学・気候学の在り方。ここは章立てになっておりまして、まず最初は社会の変化に対応する我々の研究の在り方。それでやっぱり、二十一世紀になって社会はどういうニーズであるかと。先ほど教育、いや、本当の学部教育一、二回生教育からやっぱり何がニーズなのかという辺りは考えさせられているんじゃないかなと。そういう意味で社会が何を要求しているか、それに対してどう答えていくっていうのは大事な視点のように思います。二番目、国際化。で、我々の分野は元から国際化しているというか国境の無い学問をやっている訳ですけれども、やはり中国の伸びだとか、アジアを見ても色々な国際情勢が変わっている訳で、国際化とどう関わるかというのはやっぱり今日的な問題だと思います。情報化。それこそ小池先生とかGEOSとかもう、データと情報網を、山ほど情報が出てきて、さらにそこからいかにコンパクトなインフォメーションをとりだすかというのは今の時代よく考える、常によく考えなければいけない事だと思います。それから科学技術の発展と我々の研究。コンピューター技術もそうなんですけれども、先ほどの話でアルゴとかありましたけれども、観測に伴うセンシング技術というか。気象で言うと衛星観測のプロジェクトで素晴らしい成果が一杯ある訳ですけれども、今まで見えなかったようなものが見えてくる、桁で情報が増えた時に我々が、地球科学自体が飛躍的に進むと言う事は常に有る事で。そういう意味で、いかにはかって新しい事が見えると言う事と上手く折り合っていくか。

 

(佐藤 薫:パンジーとか巨大レーダーだとかもそうですけれども)

 

そういうような目というものとどう繋がっていくかっていうのは常に考える必要が有る。それから最後に社会との関係と言う事になるのかもしれませんけれども、環境問題、アプリケーション、それから別のキーワードを言うと時間スケールを短くすると、流行の「安心、安全」。気象災害から国民の生命や財産を守るというのも気象庁だけの仕事なのか。より広い意味で我々のコミュニティとして考えていく、ってな事になっていくんじゃないかと思います。

 

(中島:結びの章は無いの?)

 

無い。それで次、あっもう時間か?えっと三番目くらいにヒットしたのが二十一世紀COEのホームページです。これはごちゃごちゃ書いてあるんですけれども、キーワードだけ拾い上げました。一言で言うと「大学の構造改革をやるんだ」ってだけの事です。競争的環境で大学間を競い合わせると。で、ようはここで選択ですね、拠点の選択。こういう所で集中的に支援をして、国際競争力のある大学を作っていきましょう、と。ただ、地球科学なんか、例えば安成さんとか、それから山中さん、それから花輪さんとかずっと皆さん地球科学で競争ばっかりしていて本当に健全な発展になるか、という意味でなんかもう自己矛盾というか、苦しい戦いをさせられていると思います。それから沖さん。次のポストCOEがこうだよって、色んな、まだ揺れていると言う情報を頂きましたけれども、やっぱりこれ、こんな競争をしていて良いのかなという気もします。いつも言うんですけれども、九十年代に大学が重点化した辺りから構造改革が始まった訳ですけれども、あの中国の文化大革命をやっているんだと僕は思っています。十年、二十年、三十年経って振り返って中国の人が感じるように、あの時代なんであんな事をしていたんだろう、という事を我々は一生懸命やっているんだと思います。それで、生きていく為には何かやらなければいけないんだろうけれども、やっぱり十年先二十年先振り返ってなんか、それではなんかやったという風にしないと非常にむなしい事をやっているんじゃないかと思います。

 それでですね、google先生に聞いて、こんな事をやっていると。で結局住さんはいつも言っている。「余田君はいつも能天気で良いねー、何考えているんだよ。先生に聞いて何かしゃべれば良いのか」とおっしゃるのでですね、半年前に考えました。わたくしごとですが、学会の役員に立候補させていただいて、先月理事に認めていただきました。それで一応こういう事を考えているという訳です。で、あたまに二十一世紀はこうだと書いてしまうと、言ったようですけれども、やっぱり時代が変わっていく中で学会自体も新しい方向性を目指すべきじゃないかと思って立候補しました。スペクトルとしてはサイエンスの基礎もあるんですが、応用科学というか、木本さんとか例えば実験的予測とか、広い視野で在り方を考えなければいけないんじゃないか。それで連携ですけれども、大学、研究所、教育機関それから現業までもがこれまでとまた違う形での連携する仕組みっていうのは考えていきたいと思っています。そういうところで新たな人材育成というのがやらなければいけない事だと思います。それからもう一つは国際化問題と言うか、やはり二十世紀、本当に気象学と言うのはショートスクールの伝統で世界をリードしてきた訳ですけれども、多くの人がリタイアされて、やはり、日本というのはどこにあるのかというか、パッシング問題が起きていると思います。そこでやっぱり一人一人が国際競争力をつけるしかないと思います。それから、それこそCOEでアジアに出かけて、三月に行って、七月に行って、今年は十一月にもアジアに出かけてくるんですけれども、そういう海外での新しい学問の芽を育てるだとか。それから気象予測だったら本当に高度な技術をどう移転していくかだとか。そのような活動を上手くやる事によって、日本という国が名誉ある地位に付くと。私らは新しい憲法世代ですので、日本が素晴らしい国だというのはそういう事を通して実現可能ではないかと思っています。それで、やっぱり若い人が積極的にそういう所に出て、繋げたいと思っております。

 

(・・・明るくないなぁ、明るい話。)

 

沖縄の上の夜明けの写真を使ったつもりが、だいぶ暗いですね。

 

中島:今のはGHQ問題や天皇制の問題はまだ出ていないのですけれども、戦後の。なにか質問やコメントは?

 

安成:理事としての抱負をお願いします。

 

余田:これまで、割と若い頃は欧米ばっかり向いていたんですけれども、アジアの若者と何かやりましょうと。まだまだ三年ですけれどもね。年季が違うんですけれども、日本ならではというと欧米も見ているけれどもアジアも見ているとか、そういう両方性っていうのは我々の出来る事じゃないかと思っております。それこそ日中韓、韓国で十月ですね、シンポジウムとかTHORPEXがらみで出て行くつもりですけれども、なんかそういう所を地道に。

 

中島:ジャパンパッシングの話でね、国際競争力を個々人でつけるという事を言ったんだけれど、僕はどちらかというと、昔が異常であってね、今が各国の若者が(年寄りもそうだけど)平等に競ってる平常時代に入っていると僕は思っているんですよ。

 

余田:偏見かもしれませんけれども。

 

中島:今が普通なんじゃないの?ジャパンパッシングじゃなくて。

 

余田:国によって動き方、その、非常に限られた部分で言うと、モデル開発なんか、メソモデルとか、韓国なんかの動きは日本のと全然違う動きをしていますよね。アメリカのタイアップとか。

 

中島:だから、日本が異常過ぎたんではないかと僕は思う。戦後のあの良い子良い子の為にと団結されてね。今は逆に普通の子になって。             

 

余田:今は逆に、日本のメソモデル開発というのは国際化の流れで、別にアメリカに付いていけとは言わないけれども、じゃ別の機軸を積極的に打ち出しているのかどうか。なんか違う事は言っているかもしれないけれども。

 

中島:僕は今、みんな若いやつらは結構論文を頑張っているから、今から始まったように思うんですけれども、どうですかね。そう、結構買っているんですけど。

 

余田:若い人達?うーん。

 

中島:まあ、という話をしていてもしょうがないので、他にご意見は御座いませんか?それでは次は江守さん。段々若く行くから、この辺からちょっと年寄りは襟を正して聞くように。何が飛んでくるのか分からない。

 

発表 江守:あとの方にいらっしゃた方、この国立環境研究所地球環境研究センターというパンフレットをお持ちでない方。江守で御座います。私はですね、先ほど言い忘れましたが、この四月からCCSRの名前だけ客員助教授と言うのを頂きまして、晴れてCCSR/NIES/FRCGCの一個ずつポジションを持つ事が出来ましたが、今日は環境研の立場でお話させて頂きたいと思います。それで、環境研は気候モデル研究においては、ご存知のように今までは非常にCCSRの補完勢力で、自民党に対する公明党みたいな感じでずっとやって来たんですけど、それでもうちの野沢さんを中心としたグループで二十世紀実験でまとまった成果をだしたり出来てですね、独自色をこれから打ち出していこうというところがあります。特に先ほどから言われておりますが、アプリケーションの方向で我々は独自色を出していくのが一つの筋であろうと。先ほど中根さんの方から紹介が有りました、環境研第二期中期計画の中で、温暖化が中根さんのアジアのグループと並んで一つの重点課題になっておりまして、これちょっと見にくいですけれども、地球温暖化研究プログラムというのが有ってですね、中核プロジェクトと言うのが四つ有りまして。一番が温室効果ガス長期変動メカニズムの解明で、ようは観測で、船で測ったり、JALで測ったりするやつです。CO2など温室効果ガスを中心とした観測です。二番目がGOSAT、衛星を使ったCO2、CH4の観測です。三番目がこれから僕がお話しますけれども、モデルを使って予測をやるところです。四番目が、これも環境研が元々得意な社会経済モデルとかシナリオとか、そういった研究で、それぞれ連携し合ったり、他にも色々なプロジェクトが有って、全体としてプログラムでやっていこう。というのが、本来は笹野さんがいらしゃっているので笹野さんが喋る所ですけれども、代わりに僭越ながら。で、これが体制で、これが笹野さんでありまして、ここが私であります。地球環境研究センターという組織でこのプログラムを主として担当していくという事になりました。

 で、ここからが僕が担当するプロジェクトの話ですけれども、タイトルが「気候・影響・土地利用モデルの統合による地球温暖化リスクの評価」という事で、将来予測をやると。で、気候モデル、影響評価モデル、陸域生態土地利用モデルというのが、今まで環境研の中で別々にやってきていたんですけれども、今回一緒にして、統合的なリスク評価みたいな雰囲気で応用の最先端を行っているイメージを醸し出しています。特にこれから不確実性の定量化とか提言という事は非常によく認識されてきましたので、その辺を認識するリスク評価というキーワードとマッチするんじゃないかと。で、これ最近はどこでもよく言われている事で、次の共生なにやるっていう時もこういう風に言うと思いますし、

 

他のところでもこういう風に言うと思うんですけれども、これからの温暖化研究は短中期の視点と長期の視点があって、いままで百年後にはこうなりますとばかり言っていて、二十年、三十年先にどうなるか皆知りたいのに、っていうのをちゃんとやりましょうと。特に異常気象だとか温暖化したときに極端な現象がどう変わるのかだとか。長期に関しては究極的には「温暖化はどこで止めたら良いですか」だとか、そういう政治的な検討に資するようなモデル研究をしましょうという事です。これは色んな所で見せております共生プロジェクトでやったやつですけれども、温暖化したときにどうなるかというやつを、今後は、まあ現時点ではなはだスケマチックですけれども、自然変動の不確実性や気候感度の不確実性を考慮した確率的な表現で出していく必要がある。またですね、影響評価という事で言えばですね、例えば温暖化どこで止めるかと、安定化させる。450ppmでもし安定化出来たら影響は何が起こるか。例えば各国で水はどうなるか、食料はどうなるか、他はどうなるかと。550ppmだったら、650ppmだったらどうかというのを、例えば気候感度の不確実性というものを考慮に入れた形でちゃんと評価するとかです。あるいはこれはちょっと経済要素を含めたモデルという事で、一つ新しいアレになってくるんじゃないかと思うんですけれども、土地利用が気候変化にインパクトを与える事は、ローカルかもしれないけれど認識されていますし、CO2収支に関しては少なくとも非常に重要である事は認識されていると思いますけれども、これを例えば、林と農地でどっちが儲かるかと簡単に言うと、もうちょっとちゃんとした計算が要りますけれども、そういうことで、経済原理に基づいてこういうのが変わるのをモデルに取り入れてフィードバックさせていくとかですね。そういうので、今まで気候モデル系の青で書いたところと、影響モデル系のピンクで書いたところと、土地利用の緑で書いたところが別々でやっていて、こういうのの結果を貰ってこういうのをやっていたけれども、あんまりお互いを良く知らなかったのが例えばまつわる影響の中でも灌漑みたいなものをモデルに入れたり、あるいは農業影響と林業の、要するにGCMに農林業を入れるという話ですけども、それによって今度は熱水循環を通じてもCO2収支を通じても気候にフィードバックして、というモデルを作っていくという事を考えています。これは甚だ環境研の社内プロジェクトの話でして、次をどうしようかと思ったんですけれども、さっき住さんが「後で江守が喋るから」って言ったんで、しょうがないからちょっとだけ言いますけれども、まあ、こういった、今の事と直接かぶる訳じゃないんですけれども、それに類する政策筋での気候モデル研究を、環境省の、ちょっと生々しいので額は伏せますけれども、大きな予算で、オールジャパンでやろうという風になるかもしれない。今まだ公募の段階で詳細はちょっとお話できませんけれども、例えばポスト共生というのが有りうるんだとすれば、そっちではモデル開発重点、それの政策応用バージョンで補間するような形で、気候モデルに役に立つんだったら環境省でまとまった金を出しても良いかもしれないという話が有りますので、もうちょっとこれがまとまったらですね、是非皆さんの、オールジャパンのご参加をお願いしたいと思っているところです。

 

中島:前に山中君がうちのセミナーの方でやってくれたんだけれども、軽い放射強制力でドライブするようなモデルみたいな、あれは誰かが僕は作んなくちゃいけないと思っているんだけれども、この前別の所で同じ質問を受けて、工学系の人で、やっぱり評価する時にはどうしてもそういう軽いモデルが要るっていうのが…。

 

江守:あれはですね、ある意味で、いや、ある意味でっていうか、類するものが統合評価モデルの中に既に入っているんですよね。要はエネルギーバランスとパターンスケーリング程度の簡易気候モデルみたいなやつで、それはやっているんだけれど、彼らは良く分からないでそれをやっているんで、そこに我々がフィードバックして、例えばもうちょっとそこに年々変動だとか、局地、極端現象だとか、そういうのもパターンスケーリングして入れられるように手伝ってあげたりだとか、それによって統合評価モデルの中での気候モデルちゃんとしていってとかですね、そんな事をやんなくちゃいけないと思っています。

 

中島:それって産総研なんかではやっていないんですか?そういう、いわゆる。

 

今須:やっていないと思う。

 

江守:産総研じゃなくて、経産系、ライトっていう所が統合評価モデルに類する物は持っているんじゃないかと思うですけれど、彼らも気候をちゃんとやっている人は居ないので、我々の協力を割りと欲しがっているかもしれない。

 

今須:あれは電中研と絡んでいたりするんじゃないですか?

 

江守:ライトがですか?そこは微妙、よく分からない。

 

余田:一つは我田引水です。極端現象で、確立分布でというのはその通り賛成なんですね。だけど、たいてい書いてあるのはガウシアンで、温度だったら良いんだけれども、降水現象なんて非ガウシアンの典型な訳で、そのしかも???なんで、そこがサイエンスとして面白いんじゃないかと思います。それから、政策なんとかツール、全然違う、現在THORPEXで苦労しているんですけれども、やっぱりそのDecision makingに???、中期でも言わないと。言動が当てになっていない議論はもう説明にも、ニーズにもならない訳で、もう少し先のそこの情報持っていてどう判断するかという、そこのツールが、出さないといけない時代なんです、もう。そんなイメージだと言う気がしているんですけれども。時間スケールだけじゃ、より広いところのニーズに応えていかないとそもそも効率的ではないという気がしてきます。

 

江守:おっしゃる通りでございます。

 

中島:これは笹野さんに質問した方が良いのかもしれませんけれども、つまり問題解決型の組織って、さっきちょっと問題提起していたんですけれども、今日いま話したようにね、共生フォロワーではモデル開発っていうベクトルが有って、かたや問題解決型の上向きのベクトルが書いてあったと思うんだけれども。ただ大気物理っていう括りだとそれが非常に落ち着いて出来るんだけれども、問題解決型の中でそれは、基礎研究っていうかブレークスルーにはやっぱり裾野を広げていかなければいけないけれども、そこは問題解決型には環境研とか他の全てもそうなんだけれども、落ち着いてやる環境はどうやって提供するのか。あるいはもう食い潰すだけで、共生を食い潰すだけで良いのか?

 

住:ちょっと違うのはね、明らかに現在では日本の適応戦略に移っているわけ。温暖化は不可避で。じゃどうするかと、多分全ての国は自分のところでお金を稼ぐ。それは温暖化対策で要るからと言ってくる筈だから、絶対。そんでもうぶん捕り合戦に今は向かいつつある、日本中が全て。日本国政府。そうすると、どこかで行くかどうかは別だけれども、その時の合理的な政策感覚を取るってどっかで議論になってくる筈なんです。そうでないと例えば堤防を作ったは良いけれどね、それから海岸、護岸工事をやったりね、農村は無きゃいけない、林業は生やせ生やせ、で医者は作れと、どんどん無茶になって破産するわけ。だからそういうニーズは有って、その時にどういう、信頼できるような、正しく無くてもいいんだけども皆を納得できるような政策判断を出来るツールってのは多分これから非常に大事になってくるって僕は思っているんで、その時に、ただお金が、人の欲望と、お金が絡む人が一杯出てさ、その自分で金を稼ぐ人が山ほどいる中で正義が通るかって事がこれからの課題のような気がするんです。

 

笹野:僕はこういう類の研究は非常に重要だと思うし、環境省の大きな予算が貰えるという仕事をしている我々としては当然やるべきは事だと思うけれど、これが全て日本中の、この会の知った顔ぶれのやり方の研究でやっていいとは勿論思っていない。そこは分担でしょう。逆に言うと大学関係が同じようなスタンスでこういう仕事に張り出すというのは、僕は反対。そういう意味で裾野が広がるのは大学じゃないですか。その上に立って我々研究者としてはやっぱり目的志向というか問題解決に役立つ仕事で、それに関心を持った或いは適した人が集まって仕事をしているのが我々だという風に思っていますけれども。

 

中島:住さんのやつと一緒に混ぜると、ちょっと重心が皆で適応或いは政策の方に、全体の重心がこういう風に移動しているって感じじゃないですか。大学の方も移動しているし国権も更に移動しているっていう状況の中で基礎研究をどうするのか、それは結構大事な問題だと思います。

 

住:基礎研究で言うと、やっぱり科研費なんかの所の応募具合が、我々の方にだいぶ減っている気がするところがあって。ファンドが、非常にアプリケーションサイドからどんどん金が出ているっていう常識になっているでしょ。その時に本当に基礎研究をきちっとやるんだったら、やっぱりそういう所も強化するっていうのが大学として、人がそれなりにやっぱり力をこうしながらやっていくというのがやっぱり大事な気がします。だから、誰か昔、近藤さんが言ったのだと思うけど、我々はある時はサイエンスと言いながらある時は応用と言って、ダブルスタンダードで結構上手く立ち回って居たんで、そういうのが常に有るから、大学としても自分はどっちに立つんだと決めて、それを腹を据えてやっていく事がこれからは必要になるという気がします。

 

山中:だから、よそおう時が有るから、今はエフォートという変な数字が有って、神経質な事務官だと「足して百になりますか?」っていう話が有って、それで大きなお金の研究費を、たとえそのほとんどのお金が観測装置とかで消えてしまうタイプのお金で有ったとしても、それの代表者をしていると科研費に事実上出しにくい状況も有るんですね。だから、まあ言い訳だけども。

 

淡路:エフォートはね、大学は私の京都大学の本部に聞きました。百六十でも構いませんって、それは聞きました。それで、住先生のおっしゃっていた事も私は賛成しますが、ただね、科研費っちゅうのは要するに三年なんですよね。で、学生さんを育てると言うのを考えると三年では終わらないんです。そうするとやっぱり大学でそれなりに教育、研究科なんかに居ますと教育が中心なんでそれはちゃんとカバーしようとすると、有る程度の財政的な安定性というのは必要なので、どうしても二束のわらじを履かざるをえない。そこのところで例えば国研の方々が、これから連携特認研究と言う事で中心になられたら、先ほどおっしゃったんですけど、やはり裾野の部分も有る程度視野に置かれてやっていただけると大変ありがたい。そういう意味でいったら、大学をある意味使ってくださったら結構ですと。で、大学は逆にですね、そういう国権を使うような形で基礎研究を進めると。そういうような事が上手くいければ、良いんじゃないかな。私はリーダーになられる方がどれだけのバランスを取れるか、判断をされるのかっちゅうのが大変大事なんじゃないかなと思っておるんですけど。

 

江守:あとすみません、僕は特にハドレーセンターに居たときに思ったんですけれども、彼らは物凄く応用的な成果をこうやって並べる割にはですね、例えば気候感度の不確実性をどうやって縮めたら良いかだとか、雲のフィードバックをどうしたらいいかだとか、という突き詰めると非常に基礎研究的な問題にちゃんと取り組もうとしていますよね。で、応用的な問題に真剣に取り組もうと思えば思うほどやらなくちゃいけない物凄い難しい基礎研究って有る筈で、ですので、役に立つ基礎研究って言うか大学の方も今までのディスプレイに沿った基礎研究を一生懸命やられる方も勿論居て良いんですけれども、新しい問題設定の上でどんな基礎研究が必要かっていう視点も是非併せてやっていただけると非常に良いと思います。

 

沖:それでは私から宣伝させていただきたいと思います。あんまり何の会か分かっていなかったので、丁度先週生産研公開というのが有って、うちの研究室でどういう研究をしているのかというパネルで展示して中高生から企業の方まで説明するというのが有りまして、その時のパネルの内容プラスですね、ちょっと宣伝みたいなのを後ろに付けて、本日お配りしております。で、話の内容は二つありまして、一つは気候システムモデルへの我々からの貢献という事で、ご存知の方はご存知だと思うのですが、ご存じない方の為に念の為にですね、我々がこれまでやってましたのはGCMに河川を入れて水循環を閉じようという事で河道網を作りました。で、これはCCSR/NIES/FRCGCのGCMだけでは無くてハドレーセンターにも入っていますし、あと気象研にも入れていただいているのですが、気象研はうちのモデルをですね、ちょっと改良して名前を変えたので、もう引用してもらえないと言うちょっと悲しい状況ですけれども、あとはCNRS、フランスのGCMにも組み込まれております。これによって水循環推定精度の検証を気象データと全く関係無いデータによって出来るという事になっておりますし、ハドレーセンターなんかは今年の二月の会議の時に河川流量が将来どう変化するかという事を一つの目玉にしてもらっています。

 もう一つは陸面モデルの精度向上という事で、陸面モデルは主に気象系で開発されて来ましたが、水文過程を考慮する、地下水を考慮するといった事、また同位体のGCM化という事がFRCGCとうちを中心としてやっていますけれども、そうしますと水の同位体比によってもGCMの水循環が検証できる。それから適切な地表面パラメーターの与え方をどうするか。東南アジアのGAMEやマハスリのフラックス観測によって、陸面の精度を向上しようという事をやっていまして、陸面モデルで一番手間がかかるのがこういう、これ0.5度版ですけれども、河道、川の流量と流出というふうに考えられたものがどっちに流れていくかというのをいかに現実的に作るか、という所が一番大変です。あとは案外地味な事もやっていまして、MATSIROの改良例として、これはうちの芳村君とか平林さんとか鼎君とかがCCSRの方と一緒にやらせて頂いていますが、例えばですね、ちょっとちっちゃくて見えませんが、基底流出がほとんど出ていなくてですね、河川の底水流量というのがほとんど維持出来ていないというのが分かりまして、何が問題かと色々見た結果、一つはバグが有った、バグというか解釈の問題が有りまして、それを直すとまあまあもっともらしい基底流出が出るようになりまして、グローバルに良くなったというような事も有ります。

 それからこれは先ほど江守さんが言っていた統合モデルへ繋がる話ですが…

 

(中島:そうなんだ、ベッドロックを入れなくてはいけないとか、凄く凄く議論していたようだったけれども、バグだったんだ)

 

いや、バグというか、基底流出に使うべき浸透係数のところをどの深さに設定するかというので、文献値を持ってくる所が不適切だったという所が有ります。それからもう一つは、陸面・河川・灌漑・ダム統合モデルというので、灌漑とかダムとか人間活動をこみでグローバルでシミュレート出来るモデルを花崎さん、今年の春に卒業して今は環境研にお世話になっていますが、彼がやったモデルが今後もまだ発展していくという事になります。例えばそうしますと、水だけではなくて農業生産量推定もまあまあ合うように、まだまだそのこれが50%ですかね、違うので、まだそんなにピッタリ合うわけではないのですが、例えばカナダのようにデータがしっかりしている所ですと、年々の変動はまあまあ捉えられるというくらいの精度にはなっております。

 以上がうちからCCSRのモデル開発への貢献なのですけれど、一方で気候・気象予測結果の応用という事で、まずは温暖化影響予測への応用。洪水流量、渇水発生リスク変化のアセスメント、日単位出力の威力という事でやはりAR4用にですね、やはり日単位の出力があったというのが世界で先駆けてまあ面白そうな結果が出始めている。水需要変化の独自予測との対照という事もこちらでやっておりまして、結果を使わせていただいております。また、長期の気候予測では無いのですが、短時間結果の検討という事も始めておりましてGSMやMSMといった気象庁の予報値を使って、水蒸気移流、蒸発から降水へのラグランジュ的移動を推定するだとか、これによってどこで蒸発した水が今降っているという事が順次時間で計算する。或いは土壌水分、河川流量なども計算しまして災害リスクを計算するといった事をやっていまして、範囲はグローバル、日本域、東南アジア域という事になっています。まずこれが応用例ですけれども、渇水頻度がK1のシミュレーションによってどう変わるか。赤いところが渇水頻度が増えるところで、ブルーな方が減るところなんですけれども、かなり広い範囲で渇水頻度が増えるのではないかと。それから洪水流量の変化という事では、インドモンスーンが強くなりますし、熱帯域が強くなるわけですけれども、ここで従来と少し違うのがですね、同じ場所で渇水リスクは上がるし洪水流量も増えるだろうという所が幾つか散見されるんですね。こういうメッセージはAR4に多分載せられると思っております。

 それから順次シミュレーションの方ですが、GPVですね、これを持って来まして、陸面モデルをドライブするのに必要な変数を作っていって、それからISO-MATSIROとかですね、isotopeのモデルを使ってですね、更に河川流量も計算して、結果としては、今もし運良くネットワークが繋がっている方はですね、このhydroのearthにアクセスしていただけますと、これ二月の結果ですけれども、過去三日のですね、降水量、降水の同位体比、それから河川流量といったものが出てきますし、これなんかはどこで蒸発した水蒸気がどういう風に移動しているのかというのを毎日六時間ごとに作られているという事になっています。で、グローバルばっかりやっているとですね、先ほどの話ではないですが、ちょっと日本の事もやれという事なので、日本域版というのも作っていまして、これも二月の結果です。japanにしていただくと過去三日分くらいの結果が出てきます。こちら側がMSMの雨でですね、こちら側が流出量になっていまして、こちら側が河川の流量に直したものだと思います。そうしますと、夜間の雨と昼間の雪解けの流出により河川流量の増加が表現されていると。それじゃ本当の精度はどうなのかなんですけれども、こちらが石狩川石狩大橋地点での流量の結果でして、観測流量はこれですね、このギザギザのやつ。昔バケツモデルでやった頃は全然駄目だったんですけれども、MATSIROは積雪過程が良く出来ていますので、この辺がずれていますけれども、この辺りがよく合っています。一番細かいのが六時間刻みですので、多分遠めにはかなり良く合うという事がお分かりいただけると思います。じゃあ肝心な事はパラメーターをチューニングしたいんですね。初期値を合わせたり何もしていませんので、これで日本全域やっています。なので、MSMの予報はまだまだ使えないという意見も有るんですけれども、我々の今のところの感じでは、少し工夫していけばかなりもう実用に耐えうるというかですね、それなりに分かる事も有りますので、予報に使えなくてもプロセスの研究には十分使えると。ただしよく見ていただきますと、現実の方は日周期が出ていまして、こういう所はまだまだ、多分僕は人間活動の影響が大きいと思うんですけれども、出ていません。

 で、現在の課題なんですけれども、先ほど申しました通り、大きな予算が終わってしまう。で、先ほど私酔っ払っていて言い忘れたんですけれども、2007年問題ですね、ああまた言う事を忘れました。ああ、住先生がおっしゃった「ポジションが空くのにそこをどう埋めるのかが問題だ、お前ら考えろ。」とおっしゃていたんですけれども、やはり内閣府に行って大学の事を見ていると、段階の世代を教授にする為にですね、助手とか講師をポコポコ削って教授ばっかりにして頭でっかちにしたというのが今の大学をかなり歪めているという気がしますので、空いたポジションを埋めないと、まあ自分の首を絞めているような気もしますけれども、そうやってちょっと大学の先生の人数を減らして有り難味を増やすというのが多分大学の生き残る道なのではないかと。そうすると給料を、もし定員を半分にすると皆さん倍貰っても良いわけですから、そういう事が道かなと個人的には考えます。で、それはさておき、現在の課題なんですが、あと人間自然系の地球水循環モデルの構築という事で、地下水とか水質、炭素循環が入っていませんで、これは水質は単に水質を考えるのでは有りませんで、灌漑とか食糧生産を考えるときに、窒素、リン、カリなんかを考えないと上手くいかないので、この辺いっしょくたにやっていこうというのが今のところの野望になります。それから食糧生産の推定、そういう意味で食糧生産推定精度向上とヴァーチャルウォータートレード、食料貿易なんかも込みにして、人間自然系の地球水循環モデルをやっていこうと。そういう事が出来ると。この辺やる時のコツはですね、無理矢理合わせないというのが我々のポリシーでして、あんまり無茶して合わせても先が無いので、そこそこの精度で合わせておいて、ただし温暖化した時にどうなるのかという時に無理なく合わせられる。「一応この現時点ではこのぐらいだと思われます」というのがもっともらしく出るようなところでやっています。

 で、喫緊の研究課題なんですけれども、温暖化がいけないのならば寒冷化すれば良いのかと考えるとですね、多分温暖化だから悪いというのではなく、寒冷化するともっと社会にとっては悪い訳ですね。多分実際起こる可能性がどうかという問題で今温暖化が問題になっている訳ですが、多分今から変化すると、変化は温度が上がっても下がっても、雨が増えても減ってもどっちもまずいので、真面目に寒冷化をシミュレーションしてみるとですね、温暖化がどこら辺でどう悪いのかという事が良く分かるだろうという事を今少し考えています。あとはグローバル、日本だけではなくて水問題、まあグローバルな水問題はだいたい過去五年で分かりましたので、もうちょっとホットスポット的なオガララとか中国北部とかインドシナ半島とかその辺をやっていきたいなあと思っているのですが、予算が無いという事ですけれども、個人的にはそういう事をやりつつ、私は自分で考えての趣味はこういうイラストを描く、この数字を埋めていく事でして、思えば十五年くらい全球の水循環でどこにどのくらい水が溜まっていて、とやっているのですが、最近はこういう所に土地被覆ごとにどの位雨が降って蒸発するとかですね、croplandにどの位行くだとか、そういうのが入ってきて段々アップグレードしていますので、こういうのを楽しみにしつつ社会のニーズに応えていきたいと考えております。

 

 

 

中島:沖さん今は、総合科学技術会議でやってんだよね?

 

沖:はい、総合科学技術会議の、以前笹野さんが参事官でいらしたところの部署で参事官補佐というのをやっております。

 

中島:という事でそういう質問でお願いします。

 

沖:あの、気象学会の時にもうそれをやったので、そういう事やっているとこんな事ばかりしているようで。

 

中島:ここはそういう会議です。

 

沖:ああ、そうですか。

 

中島:ここ以外でやらない方が良いってだけで。じゃあ後は飲みながら聞きましょう。

 

佐藤正樹:MSMって解像度はどれくらいでしたっけ。MTASIROって細かくなると使えない、使えるという話があるので。どうですか、細かくても使える?

 

沖:MSMは5kmですね。5kmか10kmか。最近5kmに上がったんじゃないかな。

 

佐藤正樹:MATSIROはどの位のレベルまで?

 

沖:MATSIROをそれで走らせています。

 

佐藤正樹:原理的にはどうなんですか?

 

沖:原理的にはなんの問題も我々は感じていません。

 

佐藤正樹:なんでしたっけ、その斜面の所の土壌の…。

 

沖:それはですね、斜面はやっぱり100mとか数10mになってくると結構斜面を考えなければいけないと思いますけれども。一応MATSIROにはそういうのを込みにしたTOP MODEL的な考えも入っておりますので、そこでなんとかなっているというか。他のアンサーテニティの方が大きいので見えていないと思います。ですから逆に言うと、MATSIROは5kmで走らせているんですけれども、見ているのがまだ数10kmアグリゲートされたエリアですから、それを鶴見川とか神田川とかになってくるとちょっと難しいかもしれません。

 

佐藤正樹:あと地下水とかいうのは大変なのですか?話に出てこなかったんですが。

 

沖:えーっと、地下水はサボっているだけです。いや、「サボっているだけです。」という意味はですね、難しく考えるとちゃんと解かなくちゃいけないんですけれども、そこまでをするより前に簡略化して地下水タンクみたいなものを考えるだけで良い筈なんですけれども、あのー、はい、やっていません。

 

佐藤正樹:河道モデルは正二十面体格子に簡単にシフト出来るのですか?

 

沖:正二十面体格子に移植するよりは、多分解像度をトランスレートするカップラー越しにやる方が拡張性や将来性の事を考えると良いような気がします。今でももう、GCMの格子に必ずしも合わせないという方針でやり始めている。

 

佐藤正樹:非常に細かいデータベースが有るんですか?

 

沖:今のところ全球は0.5度までです。

 

新野:佐藤さんのと同じなんですが、MSMによる雨の予報ってそんなに良くは無くて、特に雨量が多いときはあまり良くは無いんですけれど、それで合っているっていうのは、どう解釈するのか難しい問題もあるんじゃないかなって、少し思います。

 

沖:その辺はまだ吟味が十分ではありませんので、これはレーダーアメダスとMSMを入れた場合です。それから、比較とかですね、モデル間の比較だとかやっているんですが解析が追いついていないという部分が有りますので、その辺きちんと、何が上手くいっているのでこうだとか、流量に直すと、住先生が前におっしゃっていましたが、雨の本当のエラーはかなりダンプされるという事で、そういう事なのかと、ちょっとまたきちんとレポートしたいと思います。

 

発表 小池:私夜は早くて、こんなに遅くまで勉強する事が無いものですからもう半分寝かかっています。えー、こんな話をしようと思います。データが、コンピューターの性能がこう上がっていくという事と、観測あるいは計算する事によって出力が出てくる。その推移なんですが、これがテラ、ここがペタ、2010年くらいがペタという事で、後でちょっと言いますが、いま私どもが預かっているのが数100テラで、だいたいおかしくなる。これは2000年の初めに予測されたものです。そういうものを扱いながら、有用な情報を取り出していこうという訳なんですが、非常に沢山のデータ、多様なデータをどう扱うか。二十年位前までは全体の内の三分の二までが色んな研究をする、三分の一がデータ。ところが現在では逆になっていると。先ほど統合化って話があって、応用していくと色んなデータを扱わなくてはいけなくなるんだけど、それがどこに有ってどれくらいの精度で、また違う分野、違う言葉で表現されていると。これは一つの話なんですが、data manipulationに八割の労力がかかっていると。これをコンピュータサイエンスを使いながら逆転出来ないかと。そうしないと人間の知恵と言いますか能力を使える時間を増やさないと、新たなサイエンスや社会的に有用な情報を生み出せないのではないか、という訳で御座います。1997年にCEOPというプロジェクトをやらせて頂いて、なかなか日本の中では駄目だったんですが、国際的にもなかなか上手くいかなかったんですが、2001年くらいから動き始めてます。これが先ほど言いました、これが使うデータが300テラバイト、だいたいこれくらいの量です。現在、皆さん、MODIS、ESAのENVISATがまだ入ってきていないので、今70テラくらいです。実際にアーカイブされている中で公開されているもの。あまり大差ないかな。CEOPでは地上データ、実はこれが一番厄介でした。このバラバラの情報を統一的に使えるようにするには物凄い労力がかかりました。衛星データと十一の数値予報センターからの、気象庁からも出していますが、モデルのアウトプットなど。これが各国NCEPとかUK Met Officeだとかがどれくらい、これがCEOPの期間ですが、データを出しているかという。地上のデータを品質管理して、統一データセットにしてやるというのは物凄い労力を。特にアジアは全部観測、研究観測のデータですので、それを統合化するというのは非常に大変でした。JAXAは非常に協力的で、この三種類のデータを作って、全て、提供していただいたシーンは百万シーンを越えます。こういうものがアーカイブされて、二年分ですけれども、分散型、集中型データサービスをオープンにして、皆さんが使える環境を作りました。で、作りましたって人の為にやっているみたいですけれども、自分の為にもやっていた訳で、私はアジアモンスーンが日本に大きな豪雨をもたらしたり渇水をもたらしたりする、日本だけじゃなくてアジア全体にも、それをなんとか研究しようと思ってやっている。きっかけは現地で1991年に大畑さんにチベットに連れて行かれてですね、連れて行ってもらいまして、非常に雄大な積乱雲がボコボコたっているのを見て、ここでの熱の開放あるいは水蒸気が対流圏上層に効率的に運ばれていくってのを何とか分かって、それが下流地域というかあるいはモンスーン全体の循環に影響を与えて一番下流に居ます河川の水資源だとか洪水対策に役立てたいという、先ほどちょっとお話をしていた。それで、見てみれば世界でホットスポットでウェットスポットになっている。こういう所で観測をしようと思ったけれども、何も観測点が無い。それでGAMEで観測点を作りました。で、作ってみると、これはNCEPの比湿ですが、全然違うと。で、集中観測地域できちっと収支解析をとってQ1、Q2と比較してみると全然違うと。ほとんどの研究がこういうデータセットを使って行われているという訳です。2000年始めから大型の衛星が、まあMIDORI IIは一年保ちませんでしたけれども、それでもこの時期大型の衛星が揃ったと。これでAIRS 3Dを企画したんですが、AIRSの水蒸気、比湿がチベットの上で全然違うんですね。それで、地上データを使いながら補正して、水蒸気のデータを作って、NCEPなんかと比較をしてみると、ようするにもう対流圏中層です、チベット高原の上で言うと地表面付近が非常に多くずれている。要するにフラックスが上手く出ていないという事だろうと思います。で、その更正されたデータで、こういうITの力を使いながら色んな形で可視化していくとのこと。今お見せしましたこれは水蒸気がチベット高原の周りから中に入っていく様子を見つけて、それではどこから入ってくるのかという事を分析しました。そうしますと大きく分けて三つの経路があって、チベット高原の水蒸気量がポコポコポコと上がった時は全部その経路を通るとやってみますと、この南西から入ってくる水蒸気量が一番大きいというのが出てきます。それから衛星データと数値モデルが揃っておりますので、数値モデルの出力が揃っておりますのでデータ同化をし易い。こういう物を併せて、AMSRを使ってこうチベット高原を同化してやりますと、この青色の円が同化の結果ですけれども、こちら潜熱ですが、NCEPが過小、UK MetだとかJMAのは過大になってますが、だいたい良く合うと。それから観測値は皆さんご存知だと思いますが、春先は顕熱が多くてモンスーンが進行していくと潜熱が増えていく訳ですが、こういう数値予報のモデルは全然バラバラであると。で、データ同化をきちっとやってあげますと、衛星を使ってやってみますと、きちっとそういうのが出ると。で、こうボーエン比の季節変化をみてやると、こちらに乾燥域が有って、こちらには湿潤域があるような特徴が非常に明瞭に出てきます。でfluxはきちんと出るように。そうしたデータセットを気象庁にお渡しして、数値予報にどれくらい影響が有るのかという(???)予報して頂くと三日先くらいまでの予報値に影響を与えると。そういう事で非常に膨大な多様な或いは色々なソースからのデータを効果的に使うと、今までに無い価値を産むのではないかという事を提案して、それが第三期の科学技術基本計画の中で採用されたという事です。そのバックグラウンドは佐藤さん、いらっしゃいますが、地球観測推進戦略を作って、その中に体系的な収集、合理的な管理、データの統合、情報の融合。

 それからGEOSSの10年実施計画の中にも入力から補間、配布までのデータライフサイクル。あるいはこういう技術を開発する必要が有るという事がうたわれております。で、その中でもデータマネージメントというものが比較的大事だという事が国際的にも国内的にも理解されて来たんだと思います。先ほどからデシジョンメイキングに有用な情報を出す為のデシジョンサポートツールも必要であるという事ですが、そのツールに入れる情報をどうやって作るのか、という事が大きな課題で、これがGEOSSの目的となっています。国家基幹技術の中では融合、データ格納、注入サーバー、検索、マイニング、それからこういう分析を支える支援するようなファシリテーターの開発、それから分野を超えてデータを有用に使うための様々なシステム。こういう物を使って、GEOSSの行くところアシストのシステムを実現していくと。具体的には観測側からデータを入れて、観測側からはデータの統合だとかマイニングだとかの機会を得てプロセス理解の向上に繋がりますし、モデル側は統合的な解析、或いはモデルに入れる統合的な入力データセットを作る事が出来て予測精度の向上に繋がるでしょう。更に、こういうものを使う事によって、観測側とモデル側の協働が図れ、そして社会経済データとか空間情報を組み合わせる事によって、社会的付加価値のついた情報を提供していくと。計算機の、環境分野の内の三つのターゲットに対してこれを適応していくと。成果と言うのは、ようするに「システムを作り上げました」というのは成果にならなくて、データをアーカイブするのも重要な成果だと思いますが、世の中は必ずしもそうだとは思わなくて、科学的な理解を進化させるとか、この三つで現在課題をやっている。

 これは言っていなかったんですが、二年前は梅雨前線も台風もすごい大暴れして、いろんな所で水害が起きました。レーダーアメダスは雨を見ている訳ですが、雲も見ている、水蒸気チャンネルで水蒸気も見ている。これはAQUAのAIRSと数値予報の気圧だとか風だとかそういう物を重ね合わせて、梅雨前線を通ってどういう風に水蒸気を収束しているのかっていう事を分析しています。こういうのはプラットフォームが出来ています。それからこれを公共的な利益に資する情報へ変換するという訳で。ちょっと僕は説明出来なかったんです。木本先生から「そんな事を言っても、気象庁はずっとやってきて出来ていない。そんな簡単に出来るか。」と批判を頂いています。先ほど沖先生がこういう流出モデルを長期で一致させるのに、洪水の時にも初期値を入れないで走るようにするには、地下水から土壌水分から全て表現できないといけない。そういう分布型の流出モデルというのも我々も作っていますし、それから、それにダムを加えて、今は観測地ではなくて予報値ですね、予報値を入れたときに、これは確立になりますが、ある期待値でどれ位の流量になるかというのが出て、ダムをどう操作すれば最適な運用が出来るかという最適ツールも今開発しています。そうしますと、入力情報が、ある精度のものが、それは時系列で変わっていく訳ですが、その情報を取り込みながら、こういう物に入れていく。もう一つは全球モデルから、こういう所に入れる情報を高度化していくという努力が必要で、気象庁では青木さんが、あのAMSR委員の、水蒸気の実運用を始めておりますが、私どもは雲のデータ同化を組み合わせて、全球モデルからメソモデルへ入れるところで、気象庁の水蒸気のモデルの同化と雲のモデルを組み合わせる、という事をやり始めている。それから陸面データ同化を全球モデルの中に入れるという事をやっている。こういうような事で、我々にとっては四苦八苦な、信頼度の高い、ようするにある流域の中に雲域があるのか、ちょっと外れるのか、という所の精度が必要な訳ですが、そういう精度を持った情報を作って、奥深く迫って、そうそう出来ませんけれども、降水量(ピーク量???)をどれ位追加できるか、という事をやっています。これは、日本は周りは海なので、マイクロ放射計を使って、海の上の水蒸気だとか、雲の同化の時に入れられるのですが、それではこれが大陸ならどうなるのかという事で、これは上手くいかないんですね。けど、皆さんご存知かもしれませんけれども、私はずっと陸面のマイクロ波放射観測をやてきておりましたので、ようやく陸面の射出をですね、かなり精度良く推定する事が出来るようになりました。それでもって陸の上の水蒸気だとか、水蒸気はまだ無理ですが、少なくとも雲域のところは出るようになっています。陸のパターンにとらわれずにその上の雲域が出るようになっている。そういう事で大陸の上の同化に繋げている。そうすると、その応用、これは北アフリカですが、応用に繋がっている。

 それで、国家基幹プロジェクトですが、当初の五年はコアシステムを開発して、それから、それを最終的には長期的に運用しないといけないので、長期安定的なサービスの基礎開発を行う。システムオブシステムズのプロトタイプを作るという事です。その次の五年につきましてはそれを開発、高度化していく。それからのこの長期安定サービス機能の応用開発を行って、システムオブシステムズの開発を進めると。最後、十年経った以降は運用にすると。ただ、そうすると限られた機関だけになってしまいますので、フォーラムを作ってシーズの掘り起こしをしながら様々な分野に展開していくような枠組みを考えていくという事です。我々東大とJAXAとJAMSTECでそれぞれ分担しながら進めると。それから先ほど言いましたように、関連の機関と連携をとりながら進めていくという事です。東大の中にはこういう連携研究機構を作りまして、生研、空間情報、それからこれを使っていく所で、工学系、農学系、気候センター、海洋研究所というところが現在入っている。これを他大学の研究機関と連携を取りながら進めています。

 

山中:小池さんがこられる前に有った、一つが全部をまとめてしまうよりも、多機関でそれぞれ得意なものを分担した方が良いという木本さんの議論が有ったんですけれども、それに対してどなたか何か無いですか。私は小池さんの言う方に同調している方なんですけれども。

 

中島:要するに、全部のデータを集める方が良いのか、分散型で処理すれば良いのかという話。例えばここで衛星データを集める所で、CEOPもそうだけど、格子成果物を集めるているんですよね?

 

小池:いえ、1Bデータです。

 

中島:え、1Bを全部集めているの?MODISの?そうすると静止衛星なんかも全部集めているの?

 

小池:いえ、それは衛星のリストが有りますので。静止衛星も入っています。

 

木本:僕はそれに似たような事を言ったと思うんですけれども、ちゃんと解釈するとですね、そんなに言っている事は違わないように僕は思うんです。色んなデータをまとめて、そこから何かを生み出す為には、一箇所に集まる機能が必要である。それは僕も思います。だけどもそのデータ一つ一つを作るにあたっては、その個別分野の歴史も有るし思い入れも有る訳だから、そこは、その機能は残した。

 

小池:勿論。

 

木本:そうですよね?ですから、あんまり違う事を言っている訳ではないと。

 

小池:これがもう十年から二十年くらいたつと、今やられているデータグリッドというようなある種の、仮のコンピューターとコンピューターの間を素通しするような技術だけではなくて、いわゆるデータベース管理システムがきちっとグリッドの中で動くようなものが実現するともう一つ違ったスタイルが考えられる。現在はファイル管理システムで行われておりますので、要するに非常に高度なデータの管理というものが出来ない。そういうエキスパータイズが。ソフトウェアでもそうですし、そういうソフトウェアを開発する能力が、そういう能力を集中して管理した方が圧倒的に現段階では得であると。そこの話と今木本先生がおっしゃったところは相容れない訳ではなくて、両立する訳で、逆に言いますとデータの品質管理はデータを採った人がやらないと絶対に無理です。CEOPでは何をやったかと言うと、データを採った人がウェブを通してデータの品質管理をやる負担を軽減するシステムサービスを提供しました。だから、アジアの山中さんの所のサイトですとか、ほぼ生に近いデータを送ってくるんです。それをデータベースの中に入れるって物凄く大変です。縦横全然揃っていないものがあったり、とんでもない事が起こっています。それを綺麗にしてデータベースの中に入れてあげると、観測者がクオリティチェックを出来るんですね。その為の色んな支援システムを用意して、観測者が比較的負担無く品質管理が出来るような、そんなサービスを提供している。じゃあそういうサービスをどこで開発出来るかというと、これはもうITのトップサイエンスのグループと呼ばれる所と協働してようやく出来る事で、そういう所を分散的にっていうのは基本的に難しい。現段階では。そういう事をクリアしながら、一緒に科学的、社会的な価値を生み出す事によって、次のステージが描けるんじゃないかと思います。

 

笹野:CEOPはまだ水を対象にして、非常に本当に上手くやってこられたと思う。今度は地球観測データ、気候変動だとか水循環だとか生態変動だとか多種多様なデータが有り得る訳だし、あるいはそういうデータを採るような人達も多種多様な機関でやられているんですよね。そこである種統一的なQuality Assurance Quality Controlのシステムを作っても、多様なところにどうやって対応していくのか、というのが非常に難しいんだろうなという気がします。

 

小池:もしも水だけだったらこんな事をやる必要は無くて、もうかなりの部分が出来始めていますから、こういう基幹技術でする事は、する必要は多分無いです。ここに挙げていますが、システムオブシステムズの意味ですが、色んなスタイルの観測から統合するっていうのも有りますが、異なる分野の情報をいかに統合化していくのかという事はシステムオブシステムズの重要な意味だと思います。今回は、当初五年は生態系管理と気候変動と水の三つでトライしようと、それをこの五年間、プロトタイプ的にトライしてみようと。その中には農業も有りますし、産業も入ってくる訳ですね。その中の一つの鍵は、今QCの話が有りましたが、QCはプロトタイプは出来ているんです。だけど、分野を広げていけば色んな要求が出てきます。その機能を付加していくという事が有ります。しかし、もっと大変なのは言葉が違うという事ですね。言葉が違う、いわゆるオントロジー。ある物の表現形を統一していく。統一は出来ませんので、ある分野とある分野で同じ事を言っている、これとこれは同じ言葉だけど違う意味である、その互いの位置づけをするという事が相互流通性を実現する支援システムであると。これが分野を超えてデータを共有していく、一つの大きなハードルだと思っております。

 

 

発表 日比谷:どうもこんばんわ、さすがにちょっと昨日、無理して、、、、眠くてしょうがなくて申し訳ないです。2つとばしてやらしていただきます。ちょっと学問的な話をするのかと思っていたら、21世紀プログラムの話をしてくれという依頼を受けましたので、紹介します。多圏地球システムの進化と変動の予測可能性というタイトルになっております。このCOEプログラムの目的は、21世紀における地球惑星科学の最重要課題「多圏地球システムの進化と変動の予測可能性の探求」を推進する研究共有拠点を形成し、新しい学問分野「予測地球科学」を確立するということで、私がいる地球惑星科学専攻をコアとして、気候システムセンターそれから海洋研究所ですね、あと地震研究所、一体となって進めているCOEプログラムです。この予測地球科学は何かということなんですけれども、ここにちょっと書いてありますけれども、たとえば、地質データを使って、実地球史を復元する、これと平行して、数値モデルによって仮想地球史を再現する。この2つを比べることによって、過去に地球に起こった大規模変動の現象が、偶然性を持って起こったのか、それか必然性を持って起こったのかというのを判定する。それと共に、現在の地球システムが安定なのか不安定モードにあるのかというような検証も行える。こうした過去の現在までの地球の進化の知識を得て、これに乗せてマルチスケール高精度地球観測、地震研の観測システムとかですね、あとこの地球シミュレータを用いた大規模シミュレーション、これを融合して、シミュレーションによって未来変動予測の可能性を探究するというのが、この予測地球科学という分野の説明です。具体的にこの研究教育拠点をどういう形での確立を考えてるか、やってきたかといいますと、まず教育面の取り組みとしましては、東京大学の博士課程の方に、予測地球科学コースを開設すると。博士課程の学生、40人くらいですかね、1種と2種ですけれども、成績優秀な学生を研究拠点アシスタントとして採用して、研究をやってます。この人たちは、海外インターシップ制度を導入していますので、だいたい1ヶ月程度を予定にして、海外の研究拠点に派遣して、そこで海外の研究者とふれあう機会を設けて、国際的な経験を積ませるということもやってます。また、研究面としては、ちょっと見にくいですけども、海外拠点との交流を通じて、国際交流のプログラムを実施する。年に数回、国際研究集会を開催して、研究を進めている。

地球システム進化とか地球環境変動、地球内部変動、後で説明しますけども。それから、こちらの博士課程の学生がですけれども、もう既に博士課程の学位を取得している、ポスドクですね、それをCOE特任研究員として研究推進教員と共に研究にあたらせる。今年からはCOEの特任助手にしてますね。従って、演習ですね、学部の演習の後にもからませることができることなんですけれども、教育面とか研究面でも特任助手として、このプログラムの推進に手助けをしてもらって、国際集会にも積極的に参加をしてもらうというような仕組みでプログラムを進めているところです。この予測地球コースというやつですけれども、これは、コアでない、コアというか博士課程に設けたコースですけれども、多圏地球COE特別講義、それから先端計算機リテラシー教育、それから科学英語教育、この3つを中心に「予測地球科学」の基礎を成す授業科目で構成された分野横断の新しいコースであります。ちょっとだけ説明いたしますと、多圏地球COE特別講義というのは、海外の指導的な立場にある研究者を招いて、集中的型の講義を行ったもらう。今まで、ちょっと古い、中間評価の時のパワーポイントなのでちょっと古いですけれども、こういう著名な方を呼んで、集中的な講義をしてもらって、受講学生以外にもですね、若手研究者とも交流してもらって、研究の方向性について、強い影響を与えてもらっています。それから予測地球科学では大規模シミュレーションの役割が重要となるので、計算情報科学分野のCOE特任教員、中島研吾助教授ですけれども、招聘し、5年間の契約できてもらってますけれども、並列プログラミングの講義とPCクラスターや4次元、4次元可視化システムを用いた演習を通じて、大学院生の超並列計算機活用能力の向上を図っているところです。3番目に予測地球科学コースの3つのキーになる科目の1つなんですけれども、どうしても科学者でやっていくためには、英語によるコミュニケーション能力の向上がどうしても必要だということで、16年度から主にリスニングを中心とした科学英語演習を開講しています。ここにゲラーさんが写っていますけれども、かなり内情を聞いてみると、宿題が非常にハードでですね、(写真には)結構いますけども、最近ちょっと見てみると、数人でちょっと寂しくなってきているんですけれども、かなりハードにやってます。大丈夫かなと思うんですけども、多くの大学院生の科学英語能力が向上し、あまり多くないかもしれないですけれども、国際会議等で相手の話を正しく理解し、自分の意見を的確に発表できるようになりつつあるということで、中間評価会では言っているようです。先ほども申しましたけれども、拠点アシスタントですね、約1ヶ月をめどに海外に派遣している、いわゆる海外インターンシップ制度を導入して、16年度末までには「予測地球科学」コースの学生8名を海外拠点へ1ヶ月程度派遣している。貴重な共同研究とか交流の機会を与えているというものです。これは安田一郎さんのところの院生の増島くんですね。Woods Holeに行って、とても有名なPedloskyとかWhiteheadに囲まれて、彼ももうすぐD論頑張ってもらうというところまできています。今のは学生ですけれども、ポスドクですね、博士号を有する優秀な若手研究者、これ今何名いましたっけ、忘れましたけれども、

 今年からはCOEの特任助手として採用され、研究推進担当者の手助けをする、それから国際研究集会の開催に主体的に関与させることで、国際感覚を磨いてもらって、次代の国際レベルの研究者として羽ばたいてもらうというようなこともしているわけです。事業推進担当者のリスト、私このときまだ入っていなかったので、ここら辺に入ってくると思いますけれども、理学系研究科ですね本郷の地球惑星科学をコアとして、気候システム研究センター、それから海洋研究所、地震研究所、大学院の博士課程の教育に連携してあたり、主にこれ流体系で、地球環境システムの変動と予測可能性。それからここら辺が、いわゆる地球惑星システム系ですけれども、地球システムの進化と予測可能性。それからこちらが、固体地球科学の分野が主ですけれども、地震研と、その専攻の担当教員が連携して、地球内部システムの変動と予測可能性。ここら辺は、過去の地球の進化みたいなものですね。それからこちらが、どちらかというとこれからの未来予測の可能性みたいなものを探っていくという形になっています。というわけでこういうような、大学院プログラムとか、研究を進めているわけですけれども、これはさっきも出てきましたんで、説明することはないと思いますけれども、Abe and Nakajimaの画期的な成果のことです。最終氷期最大期の氷床分布、古気候から復元した氷床分布が、非常によく大気海洋結合モデルで再現されているということです。これがあの、リアリスティックな氷期-間氷期サイクルの再現もなされているということです。あとこれが、高精度の気候モデルによってできた20世紀の気候再現とか、21世紀の温暖化の予測なんかに成果が得られていると。それからあの、固体地球の方ですけれども、日本付近の地殻変動のですねシミュレーションモデルを開発して、この辺での大地震、プレートの境目のところでの大地震発生の予測可能性の、定量的評価なんかがなされているというような成果も得られています。甚だ簡単ですけれどもCOEプログラムの紹介です。

 

山中:えっと、あの今、我々が知っている情報だと、COEとポストCOEの間は半年くらい開いちゃう可能性があるんですけど、例えばもしちゃんとポストCOEがとれたとして、COEとポストCOEの間をどうやってつなぐの、こういうことは今までないの。

 

日比谷:場合によっては、今年という可能性もあるんですよね。今年に行くことになるのか、来年に行くことになるのか、ちょっとわからないんですけれども、とりあえず、今年行くことを前提として、私入ったと思うので、ちょっとそれは、まだ入って数ヶ月なのでですね、心構えしてないんですけれども。

 

山中: 1つ聞きたかったのは、たぶん東大が他のグラントもたくさんあるから、COE特任研究員という格好にしてあっても、実はPDとかそれから特任教員の財源を他の財源から出しているとかそういう言うことはないの。

 

日比谷:いやそれはないです。

 

山中:ない、あそうですか、失礼しました。

 

余田:同じ事で、予算的にはあと2年なのに、たぶん5年任期とかそういうスパンで雇っているわけでしょ、特任助手っちゅうのは。それとも2年で変えて耐えてるんですか。

 

日比谷:特任ですか、特任助手ですか?

 

余田 :ポスドクは1年契約とかって。

 

日比谷:だから契約更改でこれ終わったらとりあえず終わりです。あとだから1年しかない。

 

余田:それを特任助手と言っているんですか。あぁじゃあ名前のインフレなんですかね。われわれは研究者になったら、ポスドクと呼んでいるんですが、もうちょっと任期付き助手みたいなイメージかなと思ったんですけど。

 

日比谷:そうですね、まさしくそれです、任期付き助手です。

 

余田:2年という非常に短い任期付き助手なわけですね。

 

日比谷:形の上では1年契約更改のおわったらそこで。

 

余田:でも東工大なんかは逆に5年といって取ったでしょ。僕はあういうの方がすごく若い人を育てるという意味ではいいやり方だなと感心したんですけども。

 

中島 :これ後ろの方になるとだんだんきつくなってね、結局助手になってまた辞めるって、その辞めるって行為そのものが非常にキャリアにマイナスになるってことはあると思う。なかなか、そこんとこ僕は結構問題になって、うまく繋がらないと思う。それからもう1つ僕思うのは、COEってのは大学院の改革っていうけれども、何の改革もなくってね、ほとんど今やっている授業の上に、さらにおんぶしてやっちゃっているから、ものすごく忙しくなっちゃってるっていう問題が僕はあると思うんです。

 

発表 早坂:地球研って名前何となく噂で名前をご存じの方は多いかとは思いますが、遠いところからきているのであんまりご存じでない方も多いと思います。それで、今日は、私自身は地球研の中の人間なんですが、研究のコミュニティーとしては、気象とかそういうところにいますので、ちょっと簡単に、個々の研究の内容は紹介しませんが、どういう体制、どういう方式で、地球研のプロジェクトというのは動いているのかということの簡単な紹介と、それに対する私個人の雑多なといいますか、感想みたいなことをお話いたします。

 地球研はですね、ここにありますように、大学共同利用機関法人・人間文化研究機構ということになってまして、民俗学博物館と歴史民俗博物館と国際日本文化研究センターそれから国文学研究資料館という、全部文化系の中に放り込まれております。その中で、ちょっと理科系があるのは地球研だけというちょっと異質なとこです。地球環境の研究をやるために、一応5年前にできたんですが、何もなくただの地球環境をというわけにもいきませんので、一応、人間が絡む問題にしましょうということで、人と自然の間の関係をやると、作るときにだいぶ議論がありまして、地球環境というと、地球46億年の歴史の変遷だって地球環境でしょという人もいたんですが、そうすっと、もうきりがなくなっちゃうので人が絡む話。ただ、それでも漠然と人が絡む地球環境問題は何でもありというと、なかなかそれで新しい研究ってのはできませんので、一応なんか整理をするということで、そういうことを時間・空間だとか、不可変だとか、そういうふうにして整理をして、そこの基に、具体的な研究プロジェクトを作って走らせるという、そういうことになってます。ちょっと小さくて申し訳ありませんが、紆余曲折ありまして、最初はですね、沖さんも一番最初のプロジェクトで、今、鼎さんがその後やられてますけれども、最初は半分はデキレースで、地球研作って実際研究が走らないのも困るというので、ここにインキュベーション研究ってありますが、こういうものは、実際やらなかったです。それで、既にほとんど走るという状況で、FSを仮にやって、それからPRがあったんですが、これはとばして、本研究に、ですからFS1年で本研究5年というのが一番最初の人たちのプロジェクトです。今だいぶ整理されましてやっぱりいろんな所から、アイディアをもらわないとなかなか回っていかないということで、今、そのプロジェクトの種になるような、シーズを発掘するためのインキュベーション研究ってのは、所外の人に公募しまして、いろんなアイディア出して、地球研の中の人ももちろん出せますが、今年度は、ちょっと忘れましたけれども、7件8件ぐらい、全部外の人が出してます。その後にそれがFSに行くかどうかというのは、所内での研究発表会っていうのがありまして、そこでの質疑応答、その他も勘案して、一応、地球研の中で、要するに、???というのを決めます。で、FSに行った後は1年間やった後に、評価委員会にかけまして、そこで、本研究に行くかどうか決める。これわかりにくいプレリサーチってありますが、これは地球研の研究でですね、特別教育研究経費で概算要求事項、ですから毎年毎年積み上げて、財務省に要求しているという、非常に危うい資金ではあります。ただ、そういうお金を使っている都合上ですね、概算要求の時期とか、いろんなスケジュールの問題で、1年間どうしてもブランクがあいてしまうので、実際の研究が走る前の1年間は所内でお金を作り出して、1年間プレリサーチという形でやる、こういう形で動いています。ですから、ある意味では、完全にボトムアップで、国立環境研究所ですとか、それから今日はじめの方に住先生のお話にもありましたけれども、そういう大学が非常に戦略的に行っているような地球環境の研究とは全然逆でして、ボトムアップでやっていると、そういう形になっています。その評価、評価委員会が一応あるっていうことが、概算要求でお金を要求する時の重要なポイントで、お手盛りではないということを示す必要があるんですが、時々、こういう方々が、評価委員会の委員を、小さくて申し訳ないです。国内委員だと、九州大学の巌佐先生、それから佐和隆光さん、村上陽一郎さん、あと国立環境研究所の大塚先生なんかにも、最近は入って頂きまして、評価委員会ここで評価すると。

 じゃ、今、具体的に今年度、どういうプロジェクトが走っているか、ちょっとまぁ、課題名だけですが、ざっとここにあるのが、自然の変動が人間活動にどういう影響を及ぼしているか、それから逆に、人間活動が気候ですとかいろんな自然環境にどういう影響を及ぼしているか、っていうものです。

これをみてみますと、乾燥地の話だとか、それから黄河の話、これは当然、気候変動とか気象とかに関係してくる話です。それから、大気中の物質循環というのは、私がやっています。あと、「北東アジアの人間活動が北太平洋の生物生産に与える影響評価」というのは、これは、北大低温研なんかが中心となって、物質輸送的な話も入ってきます。それから、この辺にも大気環境が入ってきますし、それから、一番下は、アジアにおける人間活動による植生・炭素循環変動、FSですけれども、そういう意味では、気候変動とか広い意味での大気環境、気候変動に関係しそうなものがいくつかあります。それから、空間・時間という見方でいろいろやってますけれども、いろいろあります。沖さんが立ち上げられて、今、鼎さんがやっているのは、「地球規模の水循環変動ならびに世界の水問題の実態と将来展望」。これくらいの数のものが、今、FSと本研究とプレリサーチということで走っています。まとめて言う、まとめて言うことではないんですが、私5年くらいずっとやってて、いろいろ思っていることですが、一応、「人と自然の相互作用環」それから「未来可能性」に関係、まぁ、未来可能性という言い方ですが、言ってみれば未来持続性といいますか、ほとんどそれと同義語だと言っていいんですが。それから、研究は、今ちょっと紹介しましたけれども、完全にボトムアップで課題を決めて走らせるということになります。一方でですね、地球研の場合は、基本的に全部任期制、基本的には6年+3年ということになってまして、そういうこともありまして、今、長期戦略をなかなか作りにくい。研究自体もボトムアップで、研究所として、すごくなんか戦略をもってやっているということではないので、こういうところが、長期的に考えると危ういかなというのがあります。それからあと、どうしても、人間活動とか人文系の人も一緒に入ったような研究っていうことですので、地域、どこかの地域を対象とした研究課題、そういうものが多い。それからですね、文理融合ということがだいぶ声高に叫ばれましたので、その結果ですね、どうも最近、いろいろFSとかそれからインキュベーション研究なんか、全部課題なんか見ていますと、文理融合っていうことが目的化しているようなところが見えまして、本来だったら、地球環境問題を解決、研究するために、今までの体制ではだめなので、いろいろな分野の人が集まって、総合的にやりましょうということなんですが、なんか、文理融合っていうのが、金科玉条といいますか、最低限これがないとプロジェクトとしては評価されないということで、どうもそこに行っちゃうんです。そうしますと、例えば、最近は一つのパターンで見られますのは、歴史的なもので、歴史的な文書と、それから堆積物であるとか、そういうものをうまく組み合わせてやると、自然科学の人も歴史の人も入ってて、昔の、例えば、何かどっかの国がどうして滅んだとかですね、そういう所に行くとか、それはいったい地球環境の問題なのかというのは、地球研の内部にいる私が言うのもなんですが、私個人的には、そんなこともある。ちょっといろいろ問題が出てきまして難しい。それからあと、地球研は、先ほども言いましたように、特別教育研究経費で概算要求事項で、一つのお金の枠といたしましては10億円を超えてますので、総合科学技術会議で評価する際、ヒヤリングもあったりします。そうしますと、個々のプロジェクトはそれなりにわかるけれども、なぜ一つの研究機関でやる必要が、先ほどからいろいろ出ていますように、COEですとか、地球研ができたときには、まだCOEっていうのは走っていなかったんですが、COEなんかもありますし、そうすると、組織・研究機関としてやる意義はどこなのか、それを必ずちゃんと示すようにとかですね。それから、総合科学技術会議の方では、地球環境というと、温暖化ですとか、ごく一般的にイメージされている、地球環境、温暖化とか生物作用性とか、そういうのがどうしてもこの委員の先生方の頭にはあるようで、そことのずれがある。それからあと、一般社会の方も、先達、地球研、上釜に新しい建物ができまして、その竣工記念式典とかやったんですが、京都市長さんの話なんかでも、やっぱり京都っていうと雨水とか温暖化とかそういう話をされるんですね、で、そういうものに貢献するようなものを期待しますとか言われるんですが、実際は、中身はなかなかそうはなっていない。それからあと、住さんの話じゃありませんが、今はほとんどのお金、多少?RRのお金ですとか、それから科研費とか、振興調整費とかありますけれども、ほとんどのお金は特別教育研究経費ですから、文科省におんぶにだっこという状況ですから、そこからできるだけ自由度を増やすためには、お金をとってくる必要があるという状況です。そういう状況の中で、地球環境問題で、先ほど表題しか、課題名しか出しませんでしたが、気候が絡むものはかなりたくさんあります。一方で、気象とか気候の研究のコミュニティーに対する、社会一般の期待というのは、やっぱり気候変動と人間活動がどう関係しますかとか、人間の活動が気候にどう影響を及ぼすかとか、そういうところにもいっていますので、そこで、何かうまく、何かいいアイディアを出して、例えば、気候センターですとか、気象・気候をやっているコミュニティーと地球研でなんとかできるんじゃないかと、地球研をうまく利用して頂ければいいかなという感じが最近はしてるんですが、ちなみに、地球研はプロジェクトをやるときには、どうしても地球研にきて頂く必要はあるんですが、だいたいプロジェクト5年間で、5年のうち最初の3年ぐらいは7000万〜8000万というお金、4年目が若干減って、5年目は5000万とかそれくらいですが、非常に自由度は大きいです。例えば人件費なんかについてですね、だいたいプロジェクトの経費の3割くらいは人件費に割いていいでしょう、ということですから、ポスドクを3人とかですね抱えていられるという、で、しかも、プロジェクトをやって一応5年間ですから、途中で中間評価は入りますけれども5年間ですから、そのあいだ5年間ずっと雇える、そういう自由度のこともありますので、うまく、コミュニティー、気象とか気候のコミュニティーの中で、うまく地球研の枠組みを利用して、研究して頂けると、地球研としてもありがたいですし、いいんじゃないかというふうに思っています。

 

中島:地球研と連携しようとすると、もう既に地球研そのものが連携だから連携したらいかんと言われちゃうんで、すごく難しい、連携しようとすると地球研そのものが連携システムなのに、さらに連携することはあり得ないでしょっていわれちゃうんですよ。

 

住:そんなことはない。

 

中島:いや、それはありますよ。

 

住 :地球研は連携研究機構というのがあったんだけど、あっという間にそれは忘れさられてるよね。だから、当初はだからそのコアとネットワークで作ったのに、だから、文科省なんかあっという間に方針が変わってくるわけ。だから、だいたい文科省なんか信用しちゃだめなんだよね。すべて役所の言うことはたぶん2,3年でもうほとんど変わるから、それに頼ってやったらだいたいまぁ、あの、だから、逆に言うと、その場合、我々の方も責任は問われないわけ。言ったことが違うでしょと言われることは全くなくって、だからみんな嘘をついて、適当に金もらって、適当にやるというストーリーになってるっていうのが現状だと僕は思います。

 

淡路:文科省以外の予算を一生懸命よそからお金を稼いできたときに、運営交付金を減らされるいうことはないんですかね。

 

早坂:ですから、そのときに、その、その交付金とか研究経費というのは、プロジェクトをやるためということになってますから、それと別の観点ですよね。ですから、そのプロジェクトの成果を活かして、他の所と、プロジェクトをやること自体じゃなくて、プロジェクトの成果がいっぱいバーッと山積みになっているとしたら、例えば、そのいうものと、その、なんか・・・

 

淡路:まぁ大体、外部資金は3割取りますと言われるように、大体そういうご時世になってますから、そういう点で言ったら、私なんか総長に会うたびに、働いて外部資金取ってこいってのばかり言われてますけどね。

 

沖:いろいろ申し上げたいことなんかが生まれてきたんですが、まぁ住先生がおっしゃったことを、私が総合開発会議にいて思うのはですね、やっぱり役人は2年で代わりますので、影響力を駆使しようと思ったらですね、やっぱり半年くらいごとに電話してですね、あれどうなのというのがすごく大事らしいんです。これは国交省の方から教えてもらったんですが。ですので、笹野参事官の影響力というのも、もうなくなっているわけです。半年ぐらいごとに常に言っておかないとだめなんです。それで忘れられてしまう、それは本当にその通りだと思いますが。もう一つわかったのは、やっぱり役人はですね、全然大学のことを全然知らないんですね。全然知らないのに、なんか、こうかな、ああかな、と思って、こう、想像してこうすると、なんでしたっけ、給料上げるとみんなもっと働くんじゃないかとかですね、ポスドクがなんか余っているらしいから、いろいろ想像で物を言ったりですね、ちょっと知り合いの先生の話を聞いて、あっそうかと思って、すぐそれを施策に反映させようとするということで、もし皆様が、仲良しの役人の方がいらしたらですね、ものすごく責任が重い。本当にそれでですね、世界、日本中が動いてしまう可能性があるというようなことも思いました。で、もちろん、その、自分が責任を持ってですね、大きなプロジェクトを動かした経験もない人たちが、プロジェクトを設計しているわけですので、例えば、総合開発会議で大学から行っているのは何人かっていうのは、これは知らなかったんですが、5人なんですね事務局は。他はみんな、各省庁とかの普通のお役人か、せいぜい国研の方、という状況なんですね。なので、研究のことを全然知らない人が、想像で物を言って作っているということです。

 であと、この地球研の話に戻りますと、私、地球研の問題はですね、プログラム主幹がなにより癌で、あの人たちはですね、もうちょっとこの、私利私欲から離してあげて、きちんとここに書いてあるような長期戦略を考えられて、高所から全体のプロジェクト、あそこが抜けてるとかですね、あのプログラムはもうちょっとお金必要なんだから、ということをやるとか、そういう資源配分やるようなことを本当はしなきゃいけないのに、みんなそれぞれ自分プロジェクトがあって、評価も出るし、成果も上げなきゃいけないということで、なんか、一番大事なところが単なる喧嘩の場になっていて、

 

何のプロジェクトマネージメントもできてないのが問題じゃないかと思うんですがどうでしょうか。

 

 

早坂:申し訳ございません、一応、私がプログラム主幹やってますんで。おっしゃるとおり確かに、やっぱりなんですかね、現役のプレーヤーが監督もやっちゃうと、やっぱりそれは限界があります。ですから、まぁ、最初のやつが終わるので、まぁでも、そのあとも私がプログラム主幹やっているかどうか知りませんけれども、もし、そういう立場にあるんであれば、それはそういう風にしたいと思います。

 

中島:えっと、それでは、一応ここで、えっ、もうエンドレスでいくという宣言ですね、はいどうぞ。

 

江守:あの、地球環境で文理融合で、僕だったらやったらすごくおもしろいと思うのは、「価値」ですね。地球環境でですね、僕ら、なるべく理学的に客観的にやろうと思うと、政策研究をやるにしても、なるべく価値が絡まないようなところで攻めるんだけども、本当はたぶん、一番というか、非常に重要な要素の一つは「価値」で、環境研には実は、ちょっとライフスタイルとかですね、そういう方面でやっている人いるんですけれども、例えば今の人たちが環境とか聞いたときに、どんなことを考えていて、どういう種類の人たちはこういう風に考えていて、あういう種類の人はこう考えがちだとかですね、こういう教育をしたらあっちにいく可能性が高いとかですね、そういうのじゃないんですかね。

 

早坂:それは、あの、一応あるんですが、ただ、それは研究の仕方が非常に難しいんですよね。で、例えば、この、「価値」という言葉は出てきませんけども、この、「東アジアの人間活動が大気環境に与える影響の解明と環境強調可能性の探究」というのは、かなり「価値」とか、あの昔、???研にいて、地球研に来られた方がやっているんですが、これもFSにいくときに、いろいろ発表会があったりして、どういう方法でやるのか、例えば、アンケート調査とか対面調査とかそういう話になっちゃったんですね、手法が、そうすると、そんなものは、いろんな条件で、サンプリングをするだとか、誰に聞くかとか、どういう情報を持っている人にどういう聞き方をするとか、全部変わっちゃうので、そんなのだめじゃないかとかですね、ですから、おっしゃるとおり、「価値」とかかなり気にはしている人は何人かいるんですけれども、具体的にどうするかということになると、叩かれて大変なことになっちゃう。

 

江守:やっぱりね、フィールドや社会系・社会心理学研究???のアンケートが唯一とは言わないけれども、やっぱり重要は重要だと思うので、それを全否定しちゃうと、やっぱり、すごくもったいなぁという感じがしちゃう。

 

早坂:一応、FSまだ残ってますので。

 

安成:文理融合を目的としているというのは、結局、理系というのは基本的に「価値」を出したらだめだというのがありますね。客観的にうんぬんと。で、文系はむしろ、文化とかいろんな、元々伝統的にまず価値観の創造?みたいなのがあって、だからそういう意味で、その価値観をいれなあかんということで、たぶんそれが入ったんだと思うんですけどね。だから、それが、本当に何かこう、私も去年まで評価委員をやっていましたが、文系の人を1人入れなあかんとかね、そういう発想でしょ。あれはナンセンスな気がするね。むしろ、今、江守さんが言われたように、本当にね、さっきも「価値観の変化」とかあったけど、それを含めないと、地球環境問題とか解決しないところとかがあるわけですから、そこはちょっとやっぱり、地球研でね是非議論していい問題だと思います。

 

住:文理融合というのは昔から言われているんだけど、長谷川真理子という今、政策、彼女が書いてるんだけど、文化系の人は無理があるんですね、文理融合というのは。それはなぜかというと、文科系の人はね理科がなくてもいいと思っているわけ。それはもうそういう風に書いてあるわけね。だから理科系の人間は生活は文科系だから、要するに理科系の人間ってのは文科も含むんです、キャパシティとして。だから、文理融合ってのは理科系のサイドが言うしかない。だって、普段の生活は文科的な生活をしているんだもの。理科系の人間は職業として理学やっているだけ。ところが文科系の人も、相当数は、電気はスイッチを押せば入るし、そういうもんだと思っていて、全然そんなもん気にしなくても社会は閉じているわけ。だからそういう観点では、むしろ理科系の人がそういう構想を持っているわけだし、事実ね、例えば、工学系の人は相当、文科系に入ってますよね。例えば、環境経済なんか半分くらい工学の人が入っているし、今、Money of Technology(MOT)とかね、ものすごくやっぱりやってると僕は思う。それがいいかどうかは別にして。ただ、工学系が入ってくと、若干品に欠ける部分がある。ここが難しいところ。

 

中島:もう総合討論状態になっていますが。

 

沖:いや、あの、ちょっと私はやっぱり酔っぱらって、さっき言い忘れたことを先に申し上げますが、文理融合に関しては、総合開発会議で、野尻さんの置きみやげなんですけれども、その本当に環境問題で何が足りないかといったときに、人材が足りないと、で特に、社会とコミュニケーションして、せっかく生まれた技術を普及するための橋渡しをする人材がたりないと、ディスコミュニケーションとかそういう人が足りないので、人文社会と融合した人材育成のための環境イノベーション戦略みたいなのを作って、文理融合型の環境研究というのをサポートしようというのが、今、案を練っているところなので、19年度に間に合わなくても、20年度に向けてできそうだと、ただそうなったときに、住先生がおっしゃったとおり、私はできれば本当の人文社会科学者にやってほしいんですけれども、そういう人たちは偉いので、やる気がないんですね。で、私は住さんとちょっと違う意見があって、やっぱり希少価値が大事だと思ってまして、例えば、東大は経済学者はですね、農系を入れても50〜60人しかいない。ところが、工学部はですね、生研なんか入れちゃうと600人くらい、10倍くらい希少価値がちがう。そうすると、社会のニーズに応えているだけで十分なんですけれども、あぶれるので、工学系みたいにたくさんいると、そうすると、経済に手を出したり、理学系に手を出したり、そこを品がないといわれるんですけれども。やっぱり、だから希少価値を高めることは、私は大学は大事じゃないかと思うんですが、あの、さっきの話に戻ると、人社系は本当は僕は人文社会学専門の方にやっていただきたいんですが、どうもそういうことに乗らないし、周りもやっぱり環境系なので、もしくは今担当している方が工学系からきている方なので、どうしてもやっぱり工学系の人社に入って方にやってもらおうという方向で移っていて、やっぱり、例えば、今JSTで動いている社会技術みたいなあっち系になっちゃいそうなんですね。で、地球研はやっぱり、?所長がそういう環境系のやつ嫌だと、そういうのを除いたところでやろうとしているのでかえって難しいのかなと思いますが、まぁCSTPのいいわけをすると、地球研を評価しているのは、環境グループではなくて、隣のグループなんですね。それは、中身よりは、やっぱり、やり方について言ってんじゃないかと思いますので、先ほどのなんかは、ちょっと、一生懸命やってらっしゃる、たぶんそれが伝わってないだけではないかなぁと私は思います。

 

中島:はい、どうもありがとうございました。それじゃですね、いよいよ最後、あの、うまくこのプログラムはよくできてましてですね、最後また年寄りに戻るという、年寄り2人に締めていただくということになりますので。

 

発表 安成:えっと、もう、皆さん、お疲れ、私もお疲れなんですけれども、あの、ちょうど今の議論をフォローするような話に限ります。私はもう、組織の、私の名古屋大学のCOEの話とかフロンティアとかですね、いろんなお端折プロジェクトとかいろいろ関係しているのもありますけど、えっと、その辺の話はもうある意味では、すっ飛ばしてですね、たぶん最後に山中さんがしゃべるような話だと思いますので、私はですね、今回やったこのテーマは、要するに気候、これはまぁ地球環境問題を含めた気候研究をどうするかという話だったので、まぁそれに沿って、特にこれから21世紀の気候学、あるいは気候研究というのはいったいどうあるべきか、あるいはどういう方向に進むべきか、ちょっとオーバーですけれども、私はこう進みたいなと思っているだけなんですけれど、その前にですね、先ほどから最近の若い人は、何かどうもサイエンスができない、花輪さんの話にもありましたし、それからすぐインターネットで情報を調べようとする、本当にその通りで、その通りだなというのが全部書いてあるのがこの本なんですね、皆さん、これ、つい最近4月の末に出て、中公新書で、

酒井さん、私は全然知らないんですが、東大の教養学部ですか、「科学者という仕事」でサブタイトルが「独創性はどのように生まれるか」、これは非常におもしろかったです。これはあの、特に若いCOEの若手とかですね、フロンティアの人とかに、読め読めと薦めているんです。皆さん、はたと思うところが結構あるんじゃないかなと、例えばですね、さっき言いましたね、「考える前に情報をすぐインターネットで探そうとする態度は危険です。」それから、「論文は数ではなくて、原典をちゃんと読めよ。」と。それから、「問題を自分で設定することと、与えられた問題を解くことは基本的な違う。」ちゃんと書いてある、サイエンス・独創性というのはまさにこういうもの。いろいろですね、私も読んでいて、ふんふんと思って非常におもしろかったです。是非皆さんも、暇つぶし、違ういやいや、非常にいい本だと思います。さて、それでですね、さっきちょっと飯の時に言いましたけども、今回、気象学会に行って、感じたことがいろいろあるんですが、もうさっきの、この上の話は???めます。要するに、まぁ、いろいろ研究のあれが変わってきてますねと。それから、特にですね、「ことばを軽視している傾向が強い」といいましたのは、要するにあの、例えばあの、公開シンポジウムでしたっけ、ありましたよね。これ、一般向けというお話になってるんですね。その話している人は、全然、なんかもう本当に、学会の、なんというんですか業者、その、自分たちだけで話しているような感じで話している。これはですね、いや、それはどうしてもそうなっている、どうせ一般の人なんて、ほとんどいないんだろうというのが前提かもしれませんけど、これはむしろですね、気象学・気候学ちょっと危険だなと思うのはですね、社会あるいは外部に対する発信能力は非常に弱くなっている。これは、さっき住さんがちょっと言ってましたが、私はちょっとかなり危惧しているんです。これはいろんなところに実は出てきているんじゃないか。例えば、危険な話、学術会議なんかでもですね、気象も海洋も、本当は地球環境という一番大事部分なんだけども、ほとんどまともに入っていないですよね。これはまぁ、いろいる政治もあるかと思いますが、そういう面だけじゃないと思います。例えば、具体的に今、地球環境問題も含めて、今の地球の気候の問題をですね、わかりやすく一般の人に、本当にまともな意味でわかりやすく説明する努力というのは、本とかメディアも含めて、どの程度我々はやっているのか。これは、私自身の自戒もこめてですね、これは大事、かなり大事かな。で、結局、意外と、さっきの役人の話、沖さんの話もありましたけれど、結局お役人なんかは、そういう耳学問みたいなのを結構重要視しているんですね。そういうところで、結構、なんとなく決まってしまうというところが確かにある。だからやっぱり、これは無視できないかなと思うんですね。で、これ、皆さん、なんでしょう。松井孝典さん186000票、安田喜憲5万結構多いですね。佐藤勝彦11万、住さん2万。これはですね、Googleの検索数を、今朝たまたま、ちょちょっと調べて、私は、数字は出てますよね、何件、引っかかったと。あんなのあんまりたいした意味がないとは思うんですけれど。こうやってこう見てみるとですね、やっぱり情報発信をやっている人は圧倒的に多くて、それは、いや、意欲もあるからですよ。だからといって研究をちゃんとやっているかどうかっちゅうのは別問題、もちろん。例えば、研究といわゆるそのサイテーションナンバーとは無相関だよと思ってもいいと思うんです。例えば、中島先生なんかはすごいサイエンスしているのに700ですね。山形さんだってあのダイポールモードでワーワー言っているのに979、意外と少なかったです。住さんは頑張ってますね。沖さんは46000、すごいなぁと思って、やっぱりものすごく努力しているなぁ、いや、もちろんサイエンスもちゃんとやってますよね。例えば、真鍋さんとかですね、松野さんは、1万くらい、まぁ要するに、この人たちは非常にいろんな蓄積もあって、いろんな肩書きとかもあるし、いろんなところに出ているので、だんだん増えていっている。だけど、気象・気候でですね、誰が一番多いかというと、住さんは多いんですけど、倉嶋厚さん、知らない人もたぶんいるかもしれませんが、もうあれですよ、お天気おじさんですね。でも、お天気おじさん、こんだけ、もうあの先生も、もうお年ですけれど、こんだけ頑張っているんです、まだね。で、やっぱり、世間の人に聞くとですね、気象の話はどなたに聞いたらいいですか。松野先生に聞いたらいいという一般の人はあんまりいないですね。倉嶋さんとか、まえだったら根本???さんとかですね、それはもうちょっと古いです。で、一方ですね、やっぱりこの物理学の佐藤勝彦さん11万、固体地球の丸山さん19万ですね。確かにこれ、ものすごい、こう、対数的に変化しているのは、一冊本を、一般向けの本を書くと、ボーンと一桁は上がるみたいですね。住さんも結構書いている。だからこの辺の人もですね、一冊本を書けばすぐ1万くらいいくんですね。いや、そういう数字だと思うんですけどね。だからまぁ、松井孝典は書きまくっているからこうなると思うんですけど、まぁだけど、非常にやっぱり彼の影響は、いろんな意味で大きい、良くも悪くもかもしれませんが。やっぱりだから、気象とか海洋も含めて、地球環境コミュニティーもですね、いろいろこういう、これは飽くまで、たまたまこう、皆さんも眠たいから、ちょっとこういう数字を出すのもいいかなと思ってお出ししたんですが、で、大体ですね、ここにおられる方、ちょちょちょっと今日の名簿を見てですね、Googleで調べたら、大体、大部分の学者は500〜1000ぐらいですね、大体。普通の研究者は、ただ一生懸命研究している人たちも、普通こういうところに出てくるのは、これくらいのようです。私も気がついたんです、ついさっき。で、さてと、さてその21世紀の気候学の話に戻しますが、まぁあとサイエンスとしてはですね、私はやはりこれまで物理化学のいわば原理でいろいろ説明してきたんですが、やっぱり、これからは生命圏、生物圏が非常に重要になる。これはもう、間違いないと思います。で、そうすると、これまで生物っちゅうのは全く違うコミュニティー、全く違うprincipleで、ダーウィンの進化論と???みたいなのがベースだったんですが、そこと、やっぱり、そこと連携したと、これが一番サイエンスとして私は非常におもしろいと思ってます。それから、あとはですね、これはさっきの地球研の早坂さんの話に関係しますが、まさに、地球システムと人間活動の相互作用と、これはまさに、地球研でやろうとしていることそのもののはずなんですけどね。で、その場合にですね、これやっぱり今、予測、さっきの東大COEも予測可能性の科学ということなんですけど、我々もよく予測、気候予測、気象予測って言いますけど、やっぱり何のための気象予測か気候予測かというところまで含めて考える必要があると。そこは、20世紀の科学は、それはだからその他のコミュニティーに任せて、とにかく精度を上げると、おまえたちは、その???システムとしての気候の予測を上げろという話だったんですが、たぶん、その地球温暖化なんかの問題が問われているのはですね、何をどの程度まで予測しなきゃいかんかということを、自分たちも含めて考えなきゃいかん。どうせですね、予測なんてですね、完全な予測なんてありっこない。温暖化予測、100年後なんて、100年後検証できる人はほとんどその時いないわけですから、やっぱりそこで必要なのはある種の価値観ですね、江守さんが言われたとおり、価値観でどの程度の予測しなきゃいかんとか、すべきとか、したい、そういう話になってくるわけですね。で、ここはやっぱり、これからの地球環境問題、あるいは、この気候枠という、気候研究そのものが問われている、

 

だから、それも組み込んで、気候枠、気候の研究っていうのはやっていく。それからもう一つはですね、これは我々のGAME、あるいはプロジェクトに関係しますけど、これは、余田さんもちょっと言ってましたけど、それに南北問題ですね、アジアなんかはまさにこの、科学研究における南北問題というのは結構大きいなと、これは我々GAMEなんかをやって、ものすごく感じることなんです、で、これをやっぱり解決しないと、地球全体の地球環境の解決にならないという気がします。例えば、GAMEの実行過程で認識した南北問題、WCRPもGEWEX、あるいは、結局、我々がアジア、東南アジアとか中国に行ってですね、一生懸命、これはWCRPのプロジェクトであると言って、錦の目旗振ってもですね、えっ、WCRP、何それという感じで、ほとんど認識されなかった。WMOは結構知ってるんですね、さすがに、各国の気象局が入っていますから。しかしWCRPっていうのは、基本的に欧米の研究者中心の、まぁいわば、研究者のある限られた世界だというのは、もう、今でもそうです。そういう側面がある。それからやっぱり、国際共同研究とはいってもですね、日本と現地の研究者・機関には大きな格差、そもそもは、お金と物をバーッと持って行って、これを測らせろといって、まぁ成果を出して、それで我々は論文を書くみたいな話で、大体、大体、どこの日本のこれまでのプロジェクトはこういう形。しかし、もうそれではたぶん進まない。で、このような状況下でですね、まあその、WCRP・WMOの錦の目旗、データ公開、交換の原則とか、とか言ったってですね、結局、まぁ格差の助長にはつながっても、是正にはつながらない。だからこれは、あの例えば、今小池さんなんかが中心でやられてる統合、データ統合化ででもですね、あういうデータ統合化を誰が本当に享受できるかと、成果を、これはやっぱり発展途上国の人も、ちゃんと、その恩恵を受けるというシステムに持って行かないと、やっぱり真の意味で、いいデータもとれないし、いい形の、グローバルな意味での地球研究はできないでしょう。という、それはまぁ、具体的には、この、アジア各国の研究・教育、現業にどうフィードバックするのか。これはまぁ、キャパシティービルディング。これも、もう考えざるを得ない、というか、考えないと今後は進まないでしょうと。で、どうすべきかという話で、まぁ結局、それをできるだけ、現地の研究者・技術者育成とかですね、それからまぁ、例えばその、今WCRP/COPESという、Coordinated Observation and Prediction of the Earth Systemという、新しいこれは戦略ですが、戦略が提案されていますが、これ、こういうのなんかですね、いわゆる発展途上国が、どうちゃんと参加できるかっていうのは、WCRPなんかの課題でしょうと。で、まぁアジア地域あるいはアジアモンスーン地域においては、まさに、このアジア各国とのですね、やっぱり地球とか気候に関する、我々がこれが大事だと思っていることが、本当に彼らにとっても大事かどうかという、そこの要するに共通の認識を持たないといけない。まぁいわゆる、そのScience・Natureなんかで問題になっていることがですね、本当に、アジアの現地でも問題になるのかという問題ですね、やっぱり彼らはそれが非常に大事だと思うんですよね。一種の認識共同体という、こういう言い方をするらしいんですが。で、まぁ今、松本さん、今日はおられませんけど、中心に進めているMAHASRIなんかはまさに、こういう問題における貢献をめざしているはずである、と思っていますが、MAHASRIの話はもう、大体、また、Webとか見てください。大体、今回はこういう、おしまいかな。あ、最後に、ちょっとすみません、一つだけ、やっぱり各機関の話をせいということで書いてありましたから、

 

あの、名古屋大学ですね、COEの話じゃないんですが、直接の、あの、今度あの、振興調整費が通ってですね、若手研究者育成プログラムというのが通りました。で、これ一応、5年間で、総長、学長が代表者で出して通ったんですが、これでですね、まぁ要するに、まぁ一応、理系を中心に15名、若手の、もうとにかく国際的にバリバリやっているような研究者を、15名採用しましょうと、で、これは一種のtenure trackで、ただし、これまでは期限付きでですね、だから、さっきの話で、5年たったらどうなるのかという話がありましたけれども、とりあえずこれはですね、ここが大事なんですね。採用時に、5年たって、この人が非常に優秀になったら、ちゃんと、うちの各部局、あるいは大学で残します。残しますということを、各部局がギャランティーする。そのギャランティーの保証書を元に、全学で、成果評価とかをその審査をする。ということで、これはですね、40前後、まぁだいたいぐらいまでで、いいのはですね、研究費の心配、1人あたり500万保証しましょうということらしいですね。まぁ場合によっては、もうちょっと出しましょう。で、我々、名古屋には高等研究院というのがありますが、まぁ、そこの所属。で、これがですね、もうすぐ、8月の末頃にもう締め切る、だから、もうそろそろ公募が出る事になると思うんですが、まぁ、我々、私、地球水循環研究センターですが、是非、出したいなぁとは、少なくとも誰か推薦、いい人を持ってますので、よろしく、まぁここにおられる人は、だいたいもうちょっと、年を取った人が多いようですが、まぁ、いい人がおったら、よろしくということでとりあえず終わります。

 

余田:すみません、いや、僕はアジアなんですけども、南北問題というのは、すごく残念ですけども、感じてます。やっぱり彼らのニーズに、特に、私の観点?といいますと、アジアは入ってきますからね。

 

安成:あのですね、それで、ちょっと微妙なんですけど、最近、東南アジアとか、中国もそうですけども、先ほど淡路さんか誰か言ってましたよね、中国とか韓国は、もう日本に変わってですね、アジアの地球環境問題研究のイニシアティブを取ろうという、非常に強い意識が見えてきています。これは一応ある意味いいんですね。GAME始めた頃はもう全然、そんなもん興味ないという感じだったんですが、今むしろ、中国も韓国もですね、あるいはWCRPとか、ESSPとかいわゆる国際的な地球環境のプログラムの旗振りをやるということが、中国、韓国なんか、少なくとも、非常に高いインセンティブになっている。で、そういうところに、国内でも予算をつけるみたいな動きになっています。だから、ある意味では、もう日本なんかしっかりしないと、ほっとかれますよというような、日本も頑張らないけませんねという…。

 

余田:例えばforecast?でseasonal高気圧みたいなレンジになっているけれども、アフリカだったらEuropean Centerとかどんどん入ってます。アジアでもIRIとかもどんどん入ってますよね、入ってます、入ってますよねっていうか、で、気象庁は完全に内向きだから、もうなんかほとんど知らないっていう。

 

安成:そうなんです、だからね本当、気象庁はでも、モデルの質だってたぶんアジアでも一番いいモデルがあるわけですからね、やっぱり頑張ってほしいなと。

 

余田:私なんか、気象庁の人に来てもらったりしてるんだけど、

 

安成:でも、気象庁の人はもう誰もいなくなっちゃった…。

 

淡路 「あのー、えっとね、動かざること山のごとしの京大の理学部から見ますと、高等研究院というのは、なぜ名古屋大学が作ったのかというのは実は話題になったんですけど、狙いは何なんです。

 

安成:あのー、私もその、作ったときにいませんでしたから、その前の総長の松尾さんというのが作ったんですけど、まぁ要するに、あの学内でですね、何だったかな、全部の教官の数が、まぁ千何百人か千人か知りませんが、そのうちの、うん%かな1%か2%で、非常に数を限って、非常に国際的にやっているような人をそこに入れて、ある意味で研究専従的な形にして、それで、場合によっては、ある程度教育とか雑務からはずして、研究に専念してもらう。ところが、まぁこういう研究費というのがなかったんですね。で、今度、振興調整費が取れたから、これを原資に、まぁ要するにむしろその若手育成という、若手研究者。そういう形で、この高等研究院を活性化というか、活かそうという。何でかというのは私はわかりません。

 

淡路:何か、話聞いてると、起爆剤的なものとしてできたという…。

 

安成:そう、まぁあの、たぶん野依さんのノーベル賞がきっかけだと思います。

 

淡路:いやあのね、京都大学なんかでも、上席研究員っつうのをこしらえようかという話なんかがちょっと出てて、で、上席研究員というのは基本的には要するに全然協力しない、まぁMITとかにも上席研究員というのがありますが、そういうようなことも考えられるようになっているので、例えば、高等研究院て、ある意味先取りをされているのかなぁというのはちょっと思ってたんですが。

 

安成:だから、実は私、高等研究院の、そのなんか、研究員ということになってるんですね、まぁCOEの代表をやっているということもあって、だから多少の雑用、あの、私はむしろ、教育は私自身大事かと思ってやるといってるんですけど。学内で非常勤講師を割り当てて、授業しなくていいとかですね、まぁ、ある程度、学内のコミッティー、雑用的なコミッティーからはずすとか、それは多少考慮しています、その程度です。でも、その程度でもありがたい時もあります。だけどはっきり言って、あんまりねぇ、まぁなんか名誉職みたいな感じやったんですよ、これまでは。で、やっぱり何か高等研究院としての資金がほしいということで、今度初めて取って、それで特に若手の育成、若手の研究者・教育者の育成ということに、ある程度特化しようことになったんですよ。

 

淡路 「長くなって悪いんですけど、あの、南北問題というのはね、やっぱりほんまに解決しようと思ったら、相当汗かかないと解決できないですよね。

 

安成:そうです、そうですね、そうです。

 

淡路:私も今年行くんですけどね。バンドン行ったあともバリに行ってやるんですけど。やっぱりそのぐらいやらな、あの、ある程度、そのなんちゅうんでしょうか、研究うんぬんかんぬんというのは、和製ででもやらないと、なかなか向こうの人たちからも信用されないし。

 

安成:まさにその通りです。はい、だから、本当にそうですね。だからあの、京都の加藤先生なんかは偉いなと思うのは、リタイヤされてからインドネシア語で授業されたとかですね。私は、あういうのは非常に、あの貴重になってくると思いますけども。

 

今須:一番最後の全学で15人っていう純増のパーマネントですね、それは、どういう風に捻出したんですか。

 

安成:いや、それで、これはトリックがあってですね、結局、各部局で推薦せえというときに、5年後にポストを何とかするんですねと、で、だいたい、例えば、大きな部局はですね、まぁ常に空きホストがありますから、それを利用してしようと。ただ、私なんかいるところは10人しかポストがありませんからね、しんどいんですよ、5年後にとったやつは。ただ、幸い5年後には、例えば私はリタイヤしていない、だからそういうのを先取りして…。

 

今須:じゃ、純増ってわけではないんですね。

 

安成:だから純増ではないです。だから飽くまで特任で、ただできるだけいい人は残す、残したいというシステム。

 

中島:まぁでも、tenure trackだと約束しちゃうから、あとで絶対とらなくちゃいけない。

 

安成:まぁ、一応ね、3年後に中間審査をしてということになってます。

 

 

中島:じゃあ最後に、インドネシアへのはなむけということで…。

 

発表 山中:そればっかりやってると、なかなかいけない。南北問題ねぇ…。はい、どうもすみません。あの、皆さんお疲れのところ。で、えっと、1,2と二本立てなんですけども、1は8枚くらいで、2のほうは2枚ぐらいです。2のほうを何で付け足したかというと、まぁ、一つは主催して頂いた中島テリーさんの推薦で、私は9年前かな、神戸に行ったわけですね。で、そこを無事卒業しましたので、完全な卒業はできてないんだけれども、本務としては卒業したので、その報告です。1のほうは、たぶんあんまり、この聞いている人たちの前ではしゃべってないと思ったのでしゃべります。

 結論はこれです。プロジェクト研究と基礎教育というのものを分離した方がいいと、これは飽くまで私見です、それでかつ両立するということが必要だという結論です。で、もう先程来、沖君とか小池さんとかその前に住さんとか、いろんな人が同じになったので、背景は同じですが、JAMSTECですね、JAMSTECは今これだけセンターと称する、JAXAでいえば何とか本部に相当する、まぁ部局という物があるわけですね。で、何が問題かというと、いろいろあるわけですが、大雑把というか、暴論的に言うとですね、これまぁ、海洋という名前で昔はひとくくりにされていたんですけれども、大きく分けて、流体系といいますか、だから、海洋でも、海水の部分をやっている人たちと、海の底をやっている人たちといます。これがですね、よく見てみるとですね、かなりいろいろな面で違います。単に固体圏をやっている流体圏をやっているという話ではなくて、一言で言うと、固体系のほうの人たちは、ある意味では、何と言いますか、惑星科学と同じで、非常に基礎的な科学をやっているんですね。つまり、多少それをやったところで、災害が防げるとか環境の何とかに役に立つというものではない。彼ら自身もそういうつもりではないし、政府に向かって金を要求する場合も、そういうことは言っていない。極端に言えば。にもかかわらず、造船業界というものがありまして、これの強烈なバックアップがあり、かつ、それらがタイアップしてこうやっているわけですね。で、現実問題として、あれよあれよという間に、要するに、これはJAMSTECの中だけじゃなくて、日本学術会議から、何から、COEの審査員から、何からそうですが、もう、あれよあれよという間に、ほとんどの人が固体系で、つまり、JAMSTECの中にいる理事とかそういうクラスの人が、固体系で占められてしまった。ということは、発言力がものすごく大きい。あ、ごめんなさい、あのだから、私、若輩でこういう事を言っているかと、フロンティアのセンター長の時岡さんとかがおられる前で申し訳ありませんが、まぁ、若輩だから言えるということで、もうすぐ4年たったらクビになりますから。それで、流体系のほうはですね、それに対して、地球環境を考えるとかですね、気候変動を考えるとか、ある意味では、明らかに惑星科学的な意味から言うと非常に応用的なんですね。でかつ、本日いろいろ議論されてきたように、他省庁との関係というのは、非常に濃厚であります。にもかかわらず、にもかかわらずかどうかわかりませんが、結局だから、こちら側の発言力が増大している分、こちら側の発言力は低下している。で、結局それで、どういう事にしているかというと、まぁ予算削減は大学でも他の研究機関でも同じかと思うんですが、たとえば、我々、水循環は、さっきの安成さんの話にはなかったかな、安成さんを全体のリーダーにして、かれこれ7,8年前から加わってきたわけですけれども、その時点では、10年間観測をやりなさい、そのつもりで計画を立てて観測点を作りなさい、といわれて、私がグループリーダーをさせて頂いたグループは、チベットからインドネシアに至るまで、数点の観測点を作ったわけですね。ところが、予算がどのくらい減ったかというと、一番最初の年から比べると、今8年目ぐらいですが、今だいたい3割ぐらいです。まぁ、3割といっても、今でも2000万あるじゃないかと言われると、それまでですが、6000万の予算を2000万に減らされると、はっきりいって、いわゆる観測の息ができない。で、そのかわり競争的資金を取りなさいと言うことになりますが、えっと何人かの方のご指摘があったように、競争的資金は飽くまで短期的ですし、かつ、論文かいてなんぼという形ですよね、たいていの物は。とすると、結局観測の息をどうやってやるんだということになります。で、非常にしんどい思いをしながら、あえいでいたわけですが。で、そこへ降って沸いたのは、GEOSSというやつでして、まぁ、小池さんの話にもあったデータとか、あるいは、今日はあまり話がありませんでしたが、JAXAとか衛星の話とならんで、地上観測という話が出てきて、かれこれ2年半くらい前に、本省から私の所にいろいろ知恵を貸せと言ってきて、作文を手伝ったわけですね。で、まぁそれのご褒美かどうか、これがまぁ、当初はこれというものとGEOSSというものが混同されて、いろんな誤解があったんですけれども、これが一応、Japan EOS Promotion Programということで、JEPPというのが正式の略称です。で、このぐらいの数の課題が採択されて、ただし、この中には5年の、最大5年間のテーマと3年間のテーマがあって、JAMSTECではインド洋のブイとインドネシアのレーダー網とが、一応5年間の計画として採択されて、で、私自身の給料も含めて、今これで出しているという、そういう状況です。で、安成さんの方からMAHASRIという話がありましたが、MAHASRIというのは独自の財源を今持っていないわけですけれども、現実には、今述べました、いくつかのJEPPがアジアの地図を埋める形で、GAMEの後継、実質的後継として展開されようとしているわけです。で、私どもはこの辺にやるわけですが、あと沖君のやつ、松本君のやつ、石川君のやつとかいろいろあるわけですね。それでですね、この辺はおもしろくないでしょうから、インドネシアでは現実にはこのくらいの観測点を立てて、この辺ももうおいておきましょうか、こういういろんな今まである機械がこれなんですが、それに新たに、いろいろこちらも駆けずり回ってですね、予算がやっぱり減らされましたので、通総研じゃなくて、情報研究開発機構に行って、使い終わったレーダーをもらってくるとかいろいろやってですね、何とか4点くらいの観測点をインドネシアに作るということを今やりつつあります。で、2008年ぐらいが目標になっていて、この時までに、まぁだから、今もう2006年スタートしてますが、8月にレーダーを日本から船に乗せて出発して、今年の秋ぐらいにですね、海洋と一緒のインド洋とスマトラ島の共同観測というのをやって、それが皮切りで、その後まぁ、来年少し繰り足して、2008年ぐらいが観測の目標。このために全部そろって、うまくいけば、2009年度にこのプロジェクトが終わったら、JAMSTECのジャカルタ支所を作って、私は死ぬまでここにいるというそういうお話ですね。まぁうまくいくかどうかよくわかりません。で、海のグループを含めてまとめてみると、JAMSTECは一応今、TOGA/COAREの時にNOAAと共同で太平洋やっていたのに加えて、今度JEPPでここをやりますから、我々のインドネシアを含めて、一応、南米大陸の西岸からアフリカの東岸までを、一応、日本の観測ネットワークで固めることができるわけです。で、あと黒い点はそのほかのフロンティアの観測点ですが、だから、今後それをさらに増やすためには、やはり日本との関係で、この台形の部分抜けているわけですね。でなぜ抜けてるかというと、実はやっぱりここは、THORPEXに期待するためが多いわけです。つまり、そのこの、緯度がやや高い熱帯との違いは、こちらはもちろん台風の世界ですね。で、この緯度帯というのは、台風があまりない世界で、季節内変動とか日周期の変化とかが中心の世界ですから、気象学がこの緯度帯とこのちょっと北の緯度帯ではだいぶ変わる。ですから、台風となるともう、この台風は明らかに日本に直接影響をもたらしますから、私みたいな者がしゃしゃり出る場ではなくて、当然、気象庁の人とかが、本格的にやっていただくべき所だと私は思ってます。ただ、そのことがあって、ここが抜けています。具体的に言うと、フィリピンとか南洋諸島、旧南洋諸島のあたりですね。で、国益国益ということは盛んに言われるので、例えば、JAMSTECにいると、海洋法を作るから知恵を貸せとかいろんなのが回ってくるわけですね。で、余田さんなんかは、米の学会の時のシンポジウム以来言われているように、Japan Passingとか言われますけども、私個人的な意見としては、いいんです、中国・韓国やれるんならやってもらったらいい。ただし、やるんなら本当にやれるかというと、たぶん、これは、安成さんが言われたのか、住さんが言われたのか、私もそう思うんですが、とにかく、まだ、日本に代わり得る国はアジアにはない。つまり、我々がやらない限りは、アジア圏の観測的空白を埋めることはできないだろうと私は思っています。というわけで、これがJAMSTECの分の最後のスライドですが、この辺、書きたいことがあるんですが、文字にすると非常に怖いんですが、先ほど申し上げたように、流体系・固体系、基礎科学対応用的な部分というものあるんですが、JAMSTECの中ではですね、たぶんだからこういう、我々の水循環という、新たなJAMSTECとしては新たな分野と、海洋の海水の部分の、これは流体系だけのところですが、あと、温暖化の部分、これがまぁ、三者がバランスをとっていくようなことになるんではないだろうか。ただ、現状のJAMSTECだけで、本当に例えば、安成さんの言われたことと共通する、アジア太平洋に対する対応のほかに、アメリカのNOAAとか、あるいはヨーロッパの国々なんかに対応するようなことができるかというと、たぶん現状ではできない。で、何が違うかというと、日本の機関すべてですが、私の知っている限りでは、結局、皆さん純粋なサイエンティストが多いので、世界戦略とかですね、それからあるいは、政策官庁との結びつきというのをあまり好まれない人が多いわけですね。ところが、今や、さっきのような地球のスケールで観測を展開しようとすると、好む好まざるを関わらず、どうせこれをやらなきゃいけなくなるわけですね。そうすると、コンソーシアムというのはもちろんですが、コンソーシアムをさらに進めて、たぶん将来は、思い切った統合が必要になるんじゃないか。だから、JAMSTECが吸収するとか、そんな話ではなくて、日本のいわば、あらゆる叡智と資源と設備を集めて、大気海洋をやるというような組織がいずれ必要になるんじゃないかなと思っています。私が生きている間に実現するかどうかわかりませんが、上に書いてあるような、どことはいいませんが、たぶんですね、一緒に組んでやると、JAMSTECにない面がいっぱいあるわけですから、当然、非常に広い範囲の大気や海洋がカバーできるはずだと思っています。これJAMSTECです。

 さて、最後に2枚だけスライドを使わせていただいて、前からあちこちでは言ってんだけど、なかなか皆様経験がないとわかっていたけど、まぁ千葉の人がおられたら少しわかるかもしれません。地方大学というのは私は非常に重要だと思ってます。なぜかというと、ここに書きましたが、ポスドクを吸収するという問題とかですね、それから実はやっぱり地球環境というものを学びたいという学生は非常に多いわけです。いろんなレベルで、いろいろ目的でいます。そういう人たちに、ある意味では安成さんと同じ事を言っているかもしれませんが、そういう人たちに、正しい地球環境、あるいは地球環境関連の学問の先端を教える義務が、我々の分野にはあるんじゃないかと思う。ですから、地方に、やっぱりできるだけポストを広げる努力をですね、しなきゃいけないと私は思います。で、COEだけでもこれ、抜けてるところがあるかもしれませんが、流体系の、あるいは工学的な分野からさまざまな分野いますが、これだけの大学が、要するにCOEに採択されています。ですから、そういう意味では、国としてもですね、頑張っているところはケアする意志がある。ですから是非、皆さんの学生さんとか部下の人で、どっかに進出したいという人の背中を押してあげてください。そういう意味では、私はテリーさんにはものすごく感謝している。で、神戸大学ですが、今から9年前に大学院の改組というのがあって、その時に何の間違いか、今まで気象の人も海洋の人もいなかったところに、その時に何人か先生が偉くって、流体系の地球科学をとりたいと言いました。その噂が、ずっと、たぶんテリーさん他、有力な人に伝わっていって、誰か気象で人を推薦しろということで、たぶんこれ公募じゃなかったですね、ただし、十何名、たぶん推薦者がいたらしいですが、で、98年4月に、教授の私のポストだけが純増だったんですが、助教授のポストは振替でスタートしました。この時点では、実は、神戸大学の資産としてあった気象の雑誌とか気象の本というのはなにもない。同じ経験を私をある時期に、インドネシアの?大学に行ったときにありましたけれども、全く同じような状況から始めました。でも、結論として何が言いたいかというと、数年たつとですねやれるということです。だから0から始めてですねも、十分皆さんやれますよということが言いたい。で、それからですね、8年間に、今ちょっと計算したので、これちょっと有効数字2桁目は怪しいですが、59名の学部の卒研生がいて、そのうち51名、つまり、ほとんど9割ぐらいの人間、9割もいかないかな、は他大学院に進学してます。どこいったかっちゅうのは、まぁ言いませんが。で、まぁその人たちが本当に育てばいいんですが、結局今のところ私が認識しているのは、他の分野に行った人を含めて、たぶんですね、2名しか学位取ってない。つまり大部分はエスケープしてる。まぁ出来が悪かったと言われればそれまでですが。とにかくまぁそういう意味で、私の所の学生は、それなりに各大学の大学院には、人数面では少なくとも協力してきた形になっています。で、放っておけば10人、20人書きたいといってくるんですね。他の人がいないわけ。で、私は仕方ないです、04年からは???試験というのを課して、5人か6人だけを取るということをやってたんですが、その5人6人が全員京大東大に出てしまうという事態になりまして、もはや誰も学生が残らなくなってですね、だから修士に来ている学生は、これご存知ないかもしれませんが、神戸にいる学生は半分弱で、ほとんど神戸以外の大学から来ている。ところが、最近はさらにその学生もあんまり来なくなっている。修士の入試倍率は神戸大学は今も2倍以上あります。けれども、以前の2倍と今の2倍とだいぶ違う。これもあんまりシリアスに思われないかもしれませんが。以前の2倍というのはですね、結構いい、いい人というのはおかしいけれども、いろんな人が来ている。ところが、今はですね、神戸大学の出身者ばかりだってことは、要するに駄目になったかもしれません。その結果、結局、大部分が旧帝大にも通って、そっち行きますので、定員割れという状態なんですね。これは何とかしなきゃいかんということを皆考えている状況です。しかしながら、COEというお金をもらいましたので、他の大学、特に近隣のK大学とかO大学とかでやってないことをやろうということを今やってまして、まぁ、あのこういう話ですね。今日も実は向井さんが学長と会ってまして、いろんなことをやってるんですけども、まぁ、これが我々のポストCOEという意味ですが、惑星科学というと、何かさっきはちょっと批判的に言いましたから別分野と思われるかもしれませんが、要するに、最近はT大学でもあまりやらなくなった、基礎的な惑星科学ですね、その教育を小なりといえども、守れるようなものを神戸に作ろうということです。もちろん、これの観測所なんかは誰も持っていませんから、何を幹にするかというと、学問そのものを体系化するということと、あとはまぁ、できることは、そういう国際学校とかウェブみたいなことを中心にやっていきましょうということで、努力しております。ということで、未来話で失礼しました。

 

沖:あの、気候研究の、NOAAにどうなっていくかという話なんですけれども、気象庁の方があまりいなくなったということで、私がまぁ、第3の分野別推進戦略やったときの経験で感じたことを申し上げますと、やっぱり気象庁が国内のことしかやらないというよりも、所掌が決まっているということから、海外はやりませんと。で、水循環っていうと、例えば、国交省や農水省も海外のことはうちの所掌ではありませんってやらない。そうすると海外をできるのは文科省だけなので、今、海外について気候、それから水文でやるプロジェクトはやっぱり文科省の皆さんになってきちゃって、それが今、JAMSTECになっている、というということかなと思います。そこは、各省庁、気象庁とか国交省とか農水が、海外も、さっき山中先生がおっしゃったような意味での、国家戦略として自分の省の所轄にしてもらわない限りは、同じように結局、海外でも文科省のプロジェクト予算でやるしかないという状況が続くような気がします。で、もっと分野別にして悪かったのは、やっぱり温暖化予測というのは、予測情報の提起は気象庁の所轄ですと、だから文科省のプロジェクトでやらないで下さい、というような、言い方はもうちょっと丸いんですけれども、横やりが入ってくるんですね。で、そこで先ほどおっしゃって、あの、何についておっしゃってましたっけ。

 

山中:いや、だから、責任を持って完全にやってもらえるならば、私個人の立場だったら、何省がやろうが、何研究所がやろうが構わないじゃないですか。

 

沖:そうです、なので、横やりを出すんだったら、ちゃんとやって、ちゃんとやってないと言ったら語弊がありますけれども、やっぱり、もっとモチベーションがあって、ポテンシャルがあって、みんながもっとこういうことしたらいいと思っているときに、もう、うちの予算は、新規出せませんからとかですね、500億を守るだけで精一杯ですということで、ものすごく後ろ向きなので、全体をなんかサプレスするような方とかに今なっていて、下手するともっとなるんじゃないかと。なので、そこをですね、気象の方は是非、気象庁の方と真剣にですね、どうやって盛り上げていくかというのをやらないと、本当にアジアに手を伸ばすのは、環境省が環境に絡めてやっていかないとできないとかですね、なっちゃうと思うんです。

 

山中:一つのカギは、私は思うんですけど、他分野ですけど、例のスマトラの地震津波の時にね、やっぱり結局、日本はアメリカのNOAAが太平洋でやっていることを、アジア特にインド洋あたりについては、やる役割というか義務も権利も能力もあるんじゃないかという話があって、たぶん今は、日本の気象庁の地震や津波の予報が、東南アジアの各国の気象庁に行ってるはずだと思うんですね。だから、それと同じようなものを、少しずつですけども、日本の数値予報の結果を、東南アジアとか太平洋諸国の人に使ってもらうというようなことが、おそらく少しずつですけど、できるんじゃないかと、僕は割と楽天的だから思うんですけども。

 

中島:あの、気象庁の発表の時に、測候所もなんか300人削るってこと言ってた、これはもう、本当に沈没するような。気象庁本当におかしいと思うんだけども。

 

住:それは気象庁のせいではないから。

 

中島:いやでも、気象庁のカルチャー、なんだろうな、そういう人を再生産して、もっと重要なこといっぱいあるのに、全部内向きですよね。組織防衛しかないという発想で。

 

笹野:まぁ、どこで削減するか、苦渋の選択である形なんだと思いますけどね。

 

中島:でもそしたら、だから国内だけっていうさっきの問題、僕はそれを書き直せるかどうか知らないんだけど、そういうところにアタックするとか、いろんなやり方がある。少なくとも、そこが減る分だけ稼げると思うんだよね。

 

住:去年か一昨年か忘れたけど、松井孝典が総合科学技術会議で報告書出してるんだよね。それで、我々が書いたのは、気象庁も解体し、全部、海洋・地震研も出して、全部やって、地球庁という新しい組織を作るよなんていうような、ちゃんと報告書があってね、それでそういうことは動いてるわけ。だから、とにかくそれは、気象庁がというレベルじゃなくて、大学だって地震研を出せとかね、京都のさ防災研も出せとかでな、全部ばらばらのものをもっと大きな枠組みで変えるって主張しとけばね、そこで変わる可能性があるんで、まぁたぶんそう思ってやっぱりやる必要がある、たぶんあると思う。その時にはJAMSTECに出せとかね。要するに結局、先ほど言ったように結局、何がっていうと、自分の都合のいいように相手が変われってという場合が多いのよ。だから、大学の先生は自分を棚において、気象庁何とかせいって、そんなもん、全部結局、指示しようかとみんな思うわけ。だからそうじゃなくて、大学も全部出す、気象庁も全部出すと、ガラガラポンでやりましょうと言わなければ、そんなの絶対無理ですよ。

 

山中:地震の方はやっぱりだから、防災科研が中心になって、かなりそういう意味では、自主的ななんかそういう、気象庁は一つの観測をやっているという形になってますよね。

 

住:だから、地震の場合は、防災科研と地震研と気象庁が、イーブンのバジェットをもってるわけ。だから彼らは、地震の連中は、そのことによって、ごちゃごちゃ言いながらも、プラスになっている。それから、例えば、地震予知というと、弾が飛んでくるのは全部東大地震研がしょってるわけ。火山もね。だから何かあると昔から全部その罪人になってやってくれてるので、あそこは大学がやってますよ。で、気象に関して言うと、すべての非難は気象庁がしょってるってわけ。文句は気象庁で、大学がいい具合にとってる。だから、大学がもっとね、荒波に立って、金稼いでくれてるならいいですっていうことになってるわけ、だんだん。

 

中島:気象庁は少なくともね、こっちから見て、僕らが取るとか取らないじゃなくて、気象庁が取れるところがあるのに、それを言わないんだよね、立たないんだよね、彼らは。

 

住:いやそれはね、それはやっぱり、やってみればわかりますけど、ものすごい、例えば、要するにはっきりしてるわけ。大蔵省が、気象庁は3000でいいんでと思ってるわけです。気象庁が現在の規模だったら3000でできますねって、ガンとして僕らのことを見ているわけ。だから、そうするとね、3000にしてから考えましょうと。要するに、そんなに偉そうに言うんだったら、手をつけますって脅されなきゃならない。だから今だったら、黙ってればね、毎年5%の定時削減でいくんだけども、偉そうに言うんだったら、もうガラガラポンですよって言ったときにどうするか。そこはやっぱり、日本全体がね、そういうことに関して、やっぱり弱いというのがあれだっていうのがね。

 

山中:だから、今もう一つだけ言いたいのは、その年に我々が協力出来る一つの話は、例えばさっきの観測網で取ったデータをね、ちゃんとGTSに乗せて、私たちもだから、気象庁と同じマインドでやってますよということを、例えば、見せればいい、例えば。だから、そういうことなら私たちはやれるんじゃないかな、もちろんだから、クオリティーチェックの問題があるから、小池さんにも常に怒られているような状況だから、それは大変かもしれないけども、とにかく、データがなかったところで、データ出すっていうのは、それなりの意味は、気象庁も認めてくれるんじゃないかと私は思います。

 

余田:今のデータの所でね、どうせその予報につなげたとか、GTS、THORPEXとかあるけど、やっぱり気象庁も内向きだし、それを取り巻く我々もそれでなんかやりたいと思ってたけれども、全然力が足りない。

 

山中:だから一緒にやりましょうよ。

 

余田:で、何が言いたいかっていうと、そんな観測を展開する前に、欧米だったら、絶対OSSEとかね、これでこれだけインパクトがあるっていうのを、わかってからそれをしなきゃってするか、しないかするわけね。今は流す流すって言ってるけど、流すかどうかわからないぐらいでもうGOサインが出ちゃってるわけでしょ。それで、どれくらいインパクトがないかもしれない。

 

山中:まぁだからそこはおっしゃるとおりですね。

 

余田:でその辺がね、やっぱり気象庁だけじゃなくて、気象庁は業務もあるから、そんな余分なこともできへんからね、でやっぱりそれは、なんか取り巻きが一つの最先端のそういうことをやれる仕組みとかを作らないと、で、それ全然できてないからこんなこと言ってるんですけど。

 

山中:ただね、幸か不幸か神様はやっぱり見捨ててないので、例えば、安成さん今日触れなかったけれども、やっぱり、この最近のこの辺りの非常におもしろい観測事実としては、日周期の変化とかがあって、それは当然大規模な場の上に立っている日周期ではあるんだけど、現実に例えば、向こうで人が死ぬような豪雨とかを多く出している雨が何かっていうと、実は、そんな3ヶ月にいっぺん通るような雲集団というよりは、毎日毎日起きている雨なんですよ。だから、そういうものを、例えばその、また駄目だとおっしゃるかもしらんけど、MM5とかそのくらいのレベルのregionalなモデルでね、例えば我々の観測値を中に入れて、インドネシアの天気図が書けるようになれば、それなりの意義があると思う、インドネシアに対しては、少なくとも。だから、私たちは、大気をやっている人間は、どうしてもグローバルを理解しないと、大気科学にならないと思いがちだけれども、もちろんその通りだと私も思っているけれども、それを一色単にやれないんであれば、まず、まさに奥田立松が明治20何年の日本海海戦の時の予報をやったときと同じ話だけども、ポンポンポンとあるデータの中からね、それでも、おまえ対馬の海峡を通っている東郷平八郎に電報打てと言われた場合、何かやらなきゃいけないわけですから。だから、私の人生があと50年くらいあれば、余田さんが言われたとおり、今から数値モデル今度は勉強して、モデルやっていいです。けども、今の私がやれる話とすれば、例えばこの範囲からこの範囲にちゃんとしたものを作ってですね、で、さっき申し上げたように、大循環モデルのほうでまだ結果が出ないんであれば、まずは、このregionalな話で、それならば、私や私の学生でもやれる分があるので、やれるという。そこをやれば何か役には立ちますよ。無駄にはならないと思います。

 

中島 :じゃ、一応これでですね、夢を語ったところで、あとは・・・

山中 :夢じゃないです、実際やるんです。

中島:どうも今日は長い間ありがとうございました。