気候システム研究センター・伊藤忠商事共催
2007 一般公開講座


2007 一般公開講座「二酸化炭素のゆくえ −気候系と二酸化炭素−」 開催のご案内

東京大学気候システム研究センター・伊藤忠商事株式会社共催
日  時  11月29日(木) 14:30〜17:30
場  所 東京大学 本郷キャンパス大講堂(安田講堂)
〒113-8654 東京都文京区本郷7-3-1
受付・入場 13:40〜14:30
参 加 費 無料
定  員 500人

申込は締め切らせていただきました。
たくさんの方々からお申し込みをいただき、誠にありがとうございました。

        


プログラム
開  場 13:40〜14:30
開  会 14:30〜14:40 東京大学気候システム研究センター長・教授/中島映至
第1部:講演会 14:40〜16:10 東京大学気候システム研究センター准教授/今須良一
  テーマ 「二酸化炭素を宇宙から測る」
東京大学気候システム研究センター准教授/羽角博康
  テーマ 「海と気候と二酸化炭素」
電力中央研究所/丸山康樹
  テーマ 「二酸化炭素削減とその効果」
休  憩 16:10〜16:30
第2部:
パネルディスカッション
16:30〜17:30 パネリスト: 中島映至、今須良一、羽角博康、
               丸山康樹、清水寿郎(伊藤忠商事)


講演会講師、パネルディスカッションパネリスト紹介

中島 映至 Teruyuki Nakajima

東京大学気候システム研究センター長
国際放射委員会長
1987年から1990年までNASA上席客員研究員
【専門】気候物理学、衛星リモートセンシング

 第2回の気候システム研究センターの公開講座を開催致します。今回のテーマは「二酸化炭素のゆくえ」です。今年は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次報告書が刊行され、そのなかで人為起原の温室効果ガスの増加が近年の温暖化現象の原因であることが大きな確度で言えるという結論になりました。しかし、例えば二酸化炭素が排出され、気候系の各パートを循環していくプロセスは複雑で多くの研究が必要です。本講演会では、このような二酸化炭素の排出と循環について見ていくことにします。特別講師として電力中央研究所の丸山康樹氏を招き、人間社会と排出の問題についても考えることにします。温暖化問題対策のために、省エネルギー等、われわれ一人ひとりができることを考えるためにも、身のまわりの「二酸化炭素」について、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。
今須 良一 Ryoichi Imasu

東京大学気候システム研究センター准教授
旧通商産業省工業技術院資源環境技術総合研究所主任研究官を経て
2000年より現職
【専門】大気物理学、大気リモートセンシング

 地球温暖化の原因物質とされる二酸化炭素の大気中濃度の測定は1960年代から一部の研究者により始められました。その後、米国海洋大気庁や各国の大学、行政機関により定点観測が展開され、世界の二酸化炭素濃度が着実に増えていることが確認され、いわゆる地球温暖化問題への警鐘を鳴らす根拠となってきました。一方で、人間活動によりどのくらいの量の二酸化炭素が排出され、どこに吸収されていくのかということに強い関心が集まっています。そのために、発生源情報の収集や、吸収源の性質などが詳しく調べられています。また、大気中での物質輸送を計算する数値モデルを用い、観測データと組み合わせることで発生源、吸収源の強度を推定する“逆問題計算”と呼ばれるアプローチも開始されました。これらの結果を総合的に合わせ、現在では排出された二酸化炭素の約半分は大気中に残り、残り半分が海洋や森林に吸収されているであろうと推定されています。しかし、海上や熱帯雨林上空での観測データの不足から、これらの推定誤差はなかなか縮まりません。そこで、人工衛星搭載のセンサーを用いて宇宙から二酸化炭素を測定することが日本と米国で計画されています。他の観測手法のレビューと合わせ、人工衛星観測の原理と期待される成果について紹介致します。
羽角 博康 Hiroyasu Hasumi

東京大学気候システム研究センター准教授
WCRP/CLIVAR「海洋モデル開発委員会」委員、
PICES「気候変動予測評価委員会」委員
【専門】海洋物理学、気候力学
※略語:WCRP: 世界気候研究計画; CLIVAR: 気候変動及び予測可能性研究計画;
PICES: 北太平洋海洋科学機構

 海洋には溶存物質や生物など様々な形で大量の炭素が存在し、そのわずかな変動が大気中二酸化炭素濃度の大きな変化をもたらし得ます。中生代の温暖な気候や氷河期の寒冷な気候など、過去の大規模な気候変動は大気中二酸化炭素濃度の変動を主要因として生じていたと考えられていますが、その背景には海洋中の炭素量変動があったことが知られています。そして、現在進行中と考えられる地球温暖化においても、人間活動によって排出された二酸化炭素が海洋にどれだけ吸収されるのか、あるいは温暖化の結果として海洋がどのように変化するのかが、中・長期的な気候変動を考える上では非常に重要な問題となります。
 海洋中の炭素量は、海水温・海洋中の生物活動・深層までを含めた海洋循環などの様々な要因によってコントロールされており、それらが地球温暖化の中でどのように変化していくのかはとても複雑で微妙な問題です。地球温暖化という問題の中で、海洋という立場から何を考えなければならないのか、どこまでが確かなことなのか、そして何を明らかにすべきなのかを、この講演の中で解説したいと思います。
丸山 康樹 Koki Maruyama

電力中央研究所 首席研究員
2007年7月より、地球温暖化対応研究 総括プロジェクトリーダとして、エネルギー・環境シナリオ分析、CO2削減技術(CCS、バイオマスエネルギー)の調査・開発、気候変化への適応策の検討等を総合推進している。

 地球温暖化問題は、国際社会や我国電気事業が抱える緊急の課題となってきています。このため、電中研では、IPCC 第4次評価報告書AR4(2007)の内容を十分に咀嚼・吟味し、これに対応するため、8研究所を横断する【温暖化対応研究総括プロジェクト】を発足させました。このプロジェクトでは、省エネ・効率向上、再生可能エネルギー、火力発電所からCO2を回収し、地中に閉じ込める技術(CCS)等を導入することにより、電気事業からCO2をどの程度削減できるか、それにより温暖化はどの程度緩和できるかを予測・評価する予定です。一方で、CO2削減効果が現れるには相当長い時間がかかり、その間に生ずる不可避的な気候変化による悪影響の軽減(適応)も重要です。将来の電力供給において、削減と適応のベストバランスを目指し、電中研が進めている研究を紹介するとともに、規制や費用負担の問題について、皆さんとともに考えてみたいと思います。
清水 寿郎 Hisao Shimizu

伊藤忠商事(株) CSR・コンプライアンス統括部 地球環境担当部長
1992年より環境問題に携わり現在に至る。
(財)2005年日本国際博覧会協会
   「キャラクター、マーク等使用承認に関する審査委員会」委員
 「Our Common Future」という言葉の重みを今ほどに感じることはありません。
 「われら共有の未来」と訳されていますが、1987年「環境と開発に関するブルントラント委員会」報告書のタイトルです。
 ある時、当社のある地域の小学5年生一クラス(28名)に対して、環境教育をさせて頂いたときの事です。話の最後に私から誘い水のつもりで「地球をもとのきれいな姿に戻すには、人間がいなくなることです。」と話したところ、「人間がいないなんてさびしい。僕達が地球をきれいにします。」と必死に反論してきた事を鮮明に覚えています。
 その後、先生のご配慮により子供達一人一人から感想文を頂戴しました。その中の一つに「今日は、家に帰ると廊下の電気や、使っていない部屋の電気を消しました。家は暗くなったけれど、僕の心は明るくなりました。」涙が込み上げてくるような思いで読ませて頂きました。
 次の世代のためにこの「かけがえのない地球(Only One Earth)」をきれいなままで継承していきたいと切に思う次第です。


「講演の動画 (内部向け資料)」