東京大学気候システム研究センター准教授
ハワイ大学客員研究員、北海道大学准教授を経て2007年より現職
「地球温暖化の科学」 (2007年 北大出版会 共著)
【専門】 気候力学、気候モデリング
【受賞歴】日本気象学会 山本-正野論文賞
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第一次報告書からほぼ20年が経ちました。気候システムの研究はそれ以前からも行われていましたが、地球温暖化問題がクローズアップされるにつれ研究の規模が拡大し、全球の気候を再現する気候モデルの質も飛躍的に向上してゆきました。最近の世論調査では、8割以上の人が地球温暖化を身近に感じて行動に反映させているという結果が出ています。気候モデルを用いた気候研究においても、今や地球温暖化は欠かせないキーワードです。
一昨年公表されたIPCC第4次報告書では、全球気温の上昇だけでなく、社会的に影響の大きな台風や熱波などの予測にも言及されています。このような極端気象現象の予測は20年前にはできなかったことです。一方、気候モデル群は近年の北極域の海氷面積減少を正しく予測できていません。気候モデルにはまだ多くの誤差や不確定な要素が含まれており、それらは詳細な気候に対する理解を通じてしか低減することはできません。より確実な将来予測のために、我々は第5次報告書を見据えた研究活動を開始しています。
以上のような話題を中心に、本講演では過去20年の気候の変化および気候システム研究が課題とする対象の変化をとりあげ、今後の気候研究のゆくえについて皆さんと一緒に考えるための材料を提供いたします。
|