研究発表用スライドの作り方(2012.02.02

 

はじめの頃は、下記のポイントを参考に作成してみるとよいと思います。私自身は研究発表の仕方を専門的に学んだわけでも、積極的に書籍から情報を得たわけでもなく、下記のリストは経験的に得た「コツ」でしかありません。また、過去にある程度自分なりに満足にできた発表というのも、数えるほどしかありません。一方で、こうした情報でも、経験の少ない学生のスライド作りのおそらく助けになるのではと思い、まとめてみました。研究を始めて数年以内の大学学部や大学院修士課程の学生を対象に書いています。あくまでも基本事項ですのでとらわれる必要はなく、経験を積むにつれ、自分に合った作り方に変えていけばよいと思います。

 

1.  スライドの枚数は発表時間の分数より少なくしましょう。熟練者でも最多で1分1枚と言われています。たとえば、発表時間が15分ならば1213枚、20分ならば1618枚を目安・目標に作るとよいかと思います。逆に、練習してみて20枚に15分しかかからないとしたら、説明が不足していると考えた方がよいです。

 

2.  研究の背景(イントロ)は、研究テーマの概念や全体的な紹介、研究動向の概観、特に関係する先行研究の詳細などを効率よく組み立てるとよいと思います。基本的に、聴いている人はほとんど予備知識がないことを仮定して作るべきです。その締めくくりとして、先行研究の問題点や残されている課題、生じた疑問、未だ十分に調査・議論されていない点などを簡潔に強調し、次に続く「研究の目的」のスライドに、自然に導くように(必然性が感じられるように)展開するとよいと思います。ここでは、複数の先行研究に対して自分の研究の位置づけを明確にすることも重要なポイントになります。

 

3.  研究の目的では、23点を箇条書きにするとよいでしょう。その際に、「の実験をする」「のデータを解析する」といった作業を目的に据えるのではなく、「を明らかにする」、「という疑問に答える」、「に関する効果を調べる」といった結果として得るべきことを中心に書くように心がけましょう。科学的論点(scientific question)を意識しましょう。

 

4.  研究の方法が目的を達成するために自明でない場合には、実験装置、数値モデリング、解析手法などについて、なぜその方法をとるのか、その方法のメリットは何か、目的遂行のために最適か、なぜ最適か、などがわかるように説明しましょう。ここでも「必然性」というキーワードを意識するとよいと思います。

 

5.  次に実験装置、数値モデル、実験設定などについて、結果を理解するために必要なことを簡潔に、予備知識のない人にもわかるようにまとめましょう。

 

6.  結果では、論文執筆のために行ったすべてを見せる必要はありません。まとめや結論で述べる、一番重要な結果や発見、特に伝えたいメッセージの説得に向けて、ストーリーやつながりを意識しながら、まっしぐらに進むように展開していくとよいと思います。したがって、この発表で自分が一番伝えたいメッセージ(take-home message)が何かをしっかりと考えましょう。これが明確でないと発表は迷走しがちになります。

 

7.  まとめ(結論)では、研究の目的で挙げたそれぞれのポイントについて、どのようなことがわかったのか、場合によっては目的の数と結論の数が同じになるように、各目的との対応を意識して作成するとよいと思います。結果で見せる内容はこのスライドへ導くための証拠や通り道なので、こちらを真っ先に作成してもよいくらいです。また、これまでの研究にない自分の研究の新しさ・オリジナリティ再度強調することができれば、研究の意義や成果がより効果的に伝わることでしょう。科学的にどのような本質的理解が進んだのか、狭いコミュニティ内だけでなく、どのような「広い」意義(implicationが考えられるのかまで触れられたらさらによいと思います。

 

8.  残された課題と今後の展望では、自分あるいは他人がこの研究を続ける場合に重要な点を、抽象的になりすぎないように、またあたり前になりすぎないように注意して、具体的に書くとよいと思います。自分の研究方法の限界や不確かな点について言及してもよいでしょう。具体性のない大きすぎる課題、無責任な言及にならないように注意しましょう。

 

9.  最後に、スライドに無駄なスペースがないか、文字や文章が多すぎないか、情報量が多すぎないか、チェックしましょう。スライドの図に余計な文字が入っていないか、横軸、縦軸のラベルは見やすいか、発表で言及しない余計な図は入っていないか、などもチェックしましょう。

 

まずは学生同士で練習し、お互い理解できるか、メッセージがきちんと伝わるか、確認するとよいと思います。他の学生が理解できなければ、微妙に専門の異なる教員にも伝わりにくいと考えた方がよいです。一つ一つの図が横軸、縦軸を含めて何を表わしているのか丁寧に説明するように心がけましょう。聴いている人の負担が減るように、親切なスライドを作り、丁寧に説明するように心がけましょう。また、いろいろな場で発表する場合には、聴衆の知識や興味によってスライドや伝えるメッセージを調整しましょう。