地球システムフィードバック
気候システムから地球システムへ
これまで,コンピュータの中で気候を再現する気候モデルは,初期の単体での大気大循環モデルから海洋大循環モデルや海氷,陸面の物理過程とその相互作用も表現する結合モデル(大気海洋大循環モデルとも言う)へと進化してきました.しかし,より長期の気候変動を議論するためには,気候と共に変化する植生分布や氷床分布も考慮する必要があります.植生分布の変化は数十年以上の時間スケール,氷床分布の変化は数千年以上の時間スケールで効いてくると考えられています.従来の気候シミュレーションでは,これらの分布は気候に関わらず現在の観測に基づいた一定の分布が与えられていました.また,将来の温室効果ガス,エアロゾル,オゾン濃度などを正確に計算するためには,大気化学過程や海洋の生物化学過程などもモデルの中で表現する必要がでてきます.たとえば,大気中の二酸化炭素濃度は,人間活動によって排出される量だけでなく,海洋や陸上植物による吸収や土壌からの放出などによって決まります.また,温暖化に伴って,海底下や永久凍土層,南極氷床下に閉じ込められているメタンガスの放出なども温暖化を加速する可能性のある過程として注目されています.こうした地球システムフィードバック効果(の一部)を取り入れたモデルを最近では地球システムモデルと呼び,日々開発が続けられています.
図:地球システムフィードバックの概念図