気候力学II

気候変動とメソシステムの応答

第1講  概論

 気候システム   (1) 多くの性質の異なるサブシステムからなる

      1. 全体として、一つの方向へ動く
      2.               ーー> 相互作用、内部モード、

                          ガイア、恒常性(生物のイメージ)

      3. 非線形の複雑系
      4. 時空間のマルチスケール

 グローバルとローカル

  気候システムは、全球的な束縛条件を持つが、人間社会との接点は、局域で起きる

  この両者の視点が重要

 気候変動を起こす要因

 (1) 外部要因   太陽放射 (暗い太陽のパラドックス)

            地球の軌道要素の変動 (ミランコビッチ)

            隕石の落下( 6500万年前 )

  1. 内部要因   海洋と大陸の形成  

           炭素循環(温室効果)

           大陸移動

           自由モード (エルニーニョ、NAO,AO、・・・)

             振動?

 具体的な気候変動

   時間スケールで分ける

  1. 地質学的な時間スケール
  2. 氷期―間氷期サイクル
  3. 気候温暖期
  4. 中世の温暖期
  5. 小氷期
  6. decadal 振動(数十年周期)
  7. 数年程度 ( 年々変動)――> エルニーニョ、QBO
  8. 年変化
  9. 季節内変動 (30−60日変動、Madden-Julian 振動)
  10. 傾圧不安定(高低気圧) 1週間
  11. 日変化
  12. メソースケールーーー>集中豪雨、組織された雲、長続きする雲
  13. 潮汐(1日、半日)
  14. 対流(1時間)
  15. 乱流

空間スケールで分ける(主として大気を考えている)

 (1) グローバルスケールーー軸対象循環

                平均子牛面循環

  1. プラネタリースケールーー> ロスビー波 (1万キロ)
  2.                   モンスーン循環

  3. シノプチックスケールーー  高低気圧 (数千キロ)
  4. メソスケール        1000km―100km
  5.       α            1000km  (小低気圧 )

          β             100km  (スコールラインなど)

          γ              10km  (積乱雲)  

      (昔は、日本では、メソーαを中間規模擾乱と呼んだ)

  6. これ以下の現象は、乱流として扱う   

気候変動

 大規模場が変化するーーー>シノプチックな擾乱――>メソスケールーー>積乱雲

 (ダウンスケールと呼ぶ)

         

 与えられた一般場のもとで、どのような擾乱が発達するかーーー> 不安定論と呼ぶ

  代表的な理論は、傾圧不安定論、あるいは、低気圧論 ( 高藪     )

  メソスケールの不安定論

従って、気候変動の社会への影響を正しく評価するには、いかなる条件の時にメソスケールの現象が発生するか、を理解することが必要。

アップスケール

 問題なのは、小さいスケールの現象が、大きなスケールのエネルギー源になっている

 

 太陽エネルギーーー>地表面――>対流 ――> 大きなスケールへ

 (Lorentzの4boxモデル)

 (negative viscosity―――擾乱がzonal 場を維持)

  このアップスケールを正しく表現する必要があるーーー> パラメタリゼーション

                             “closureの問題”

第2講  スケール アナリシス

 特徴的な時間・空間スケールに対し、どの項が効くかを解析することにより、特徴的な力学を解析する。気象力学の本には、どんな本でも載っているが、1,2の参考文献をあげる。

 参考文献: Numerical Prediction and Dynamic Metheorology 2nd Edition, G.J.Haltiner and R.T.Williams ,John Wiley and Sons,1979

詳しくは、授業で行うが、時間スケールをT、空間スケールをL、代表的な速度をV、コリオリパラメータをf、安定度をΓとすると、代表的なパラメータとして、

ロスビー数(Ro)=V/fL

リチャードソン数(Ri)=Γ/V2

回転フルード数(ε)=f2L2/Γ

があげられる。更に重要なことは、回転成分と発散成分の比(RI)が、決まってくる。

注: 風速の発散成分は、上昇流に結びつくために、雲・雨・雪と必然的に結びついているので、非常に重要。

以下の3種類の場合について、授業で述べる。

(1)中緯度large-scale

(2)Tropics

  1. Planetary Scale

第3講 大気中の様々な波動と不安定

  1. 音波・重力波・ロスビー波
  2. 傾圧不安定
  3. シアー不安定
  4. 成層不安定

     ここで、熱力学図の見方、及び、CAPEなどにも触れる。

 

第4講 定常超超波 及び 強制力に対する定常応答

 

  1. 熱帯域では、海面水温などによる対流による加熱
  2.      ―――>応答は、 Matsuno-Gill パターン

  3. 中緯度では、次の3つの強制力

      (i)大規模山岳による力学強制

      (ii) 大陸・海洋による熱的強制

      (iii) ストームトラック

第5講 低気圧論

 中緯度の天気の花である低気圧について、歴史的なベルゲン学派から、最近の話題まで述べる。

第6講 メソスケール現象のスケールアナリシスと方程式系

メソスケールの方程式系

ブシネスク近似

弾性系

非弾性系

第7講 メソスケールモデリングの現状

第8講 アップスケールの問題

  1. パラメタリゼーションの問題
  2. 気候モデル、Large−scaleの弱点、対流のパラメタリゼーションについて述べる。これは、また、湿潤気体での乱流のclosure問題であることを強調する。

  3. 気候システムにとってのメソスケールモデル

メソスケールに興味を持つ人々の研究は、主として、集中豪雨、あるいは、ハリケーンなどのsevere stormである。これは、防災という点で重要であり、今後とも、その観点から研究されて行くことであろう。

しかしながら、気候システムでのバランスという観点からメソスケールを考えると、むしろ、与えられたlarge-scaleの場の中で、いかなる雲が、どの程度の時間形成されるか、など、普通の雲・雨に関する情報も重要になる。いわば、与えられた外部強制に対するメソシステムの平衡が議論となる。

第9講  地球温暖化問題とメソスケール現象