2006年度後期 発表者 (敬称略)
10/12 加藤 (CCSR M2)
10/19 浦川 (CCSR M1)
10/26 川崎 (CCSR D2)
11/2 松村 (CCSR D2)
11/9 渡邉 (CCSR D3)
11/16 建部 (CCSR PD)
11/30 岡 (CCSR 特任助手)
12/7 羽角 (CCSR 助教授)
12/21 坂本 (地球環境フロンティア)
1/18 北内 (地球環境フロンティア)
1/25 小室 (地球環境フロンティア)
2/1 遠藤 (CCSR 教授)
過去の発表概要はこちら
海洋の物質循環について理解することは、長期の気候変動を理解するために非常に重要となる。
現在この海洋の物質循環の気候への影響として、氷期/間氷期における大気中二酸化炭素分圧の変動に対する役割が注目されている。
今回はこの問題について以下のレビュー論文を通して解説する予定である。
参考文献:
D.Sigman and E.Boyle (2000): Glacial/interglacial variations in atmospheric carbon dioxide, Nature, Vol. 407, p859-869.
D.Archer et al. (2000): What caused the glacial/interglacial atmospheric pCO2 cycles?, Rev. Geophys., Vol. 38, p159-189.
高精度の衛星重力観測ミッションの出現(GRACE)により、海洋内部の質量分布変動がより良い精度で測定できるようになってきています。
これから得られたデータはOGCMにとって大きな制約となり得ます。
その一方でOGCMにはブシネスク近似が適用されているものが多く、この時質量保存は体積保存に置き換えられてしまいます。上述のようなミッションの出現という流れの中で、ブシネスク近似がOGCMの結果に与える影響を改めて考えることは重要であると思われます。
今回のセミナーではこれについて論じた論文を紹介したいと思います。
参考文献:
Losch et al. (2004): How sensitive are coarse general circulation models to fundamental approximations in the equations of motion?, Journal of Physical Oceanography, 34 (1), 306-319.
Greenland-Iceland-Scotland Ridgeでの深層水のover flowや、南極周辺の陸棚斜面に沿った深層水の下降流などは、多くの質量・熱の南北輸送を伴うため、全
球熱塩循環にとって重要な現象である。
しかしこの流れは、時空間スケールの小さい高さ10m〜100mのBottom Boundary Layer(BBL)によって維持されており、それより粗い解像度の海洋大循環モデルによって熱塩循環を再現するためには、BBLのパラメーター化が必須である。
今回は、z座標のOGCMにおけるBBLのパラメータ化の手法について、いくつかの論文を紹介する形でレビューする予定である。
参考文献:
Campin, J.H. and H, Goose (1999): Parameterization of density-driven downsloping flow for a coarse-resolution ocean model in z-coordinate, Tellus, 51A, 412-430.
Beckmann, A. and R. Doscher (1997): A method for improved representation of dense water spreading over topography in geopotential-coordinate models, J. Phys. Oceanogr., 27, 581-591.
Doscher, R. and A. Beckmann (2000): Effects of a boundary layer parameterization in a coarse-resolution model of the North Atlantic Ocean, J. Atm. Oceanic Tech., 17, 698-707.
Nakano, H. and N. Suginohara (2002): Effects of bottom boundary layer parameterization on reproducing deep and bottom waters in a world ocean model, J. Phys. Oceanogr, 32, 1209-1227.
Killworth, P.D. And N.R. Edwards (1999): A turbulent bottom boundary layer code for use in numerical ocean models, J. Phys. Oceanogr., 29, 1221-1238.
Song, Y.T. And Y. Chao (2000): An embedded bottom boundary layer formulation for z-coordinate ocean models, J. Atmos. Oceanic Tech., 17, 546-560.
水塊形成プロセスを数値モデルで扱う上で、サブグリッドスケールの乱流混合の扱いに関する議論は避けて通れない。
今回はキャベリングが駆動する対流をDeardorff (1980)型のLESモデルを用いて扱った研究を紹介する。
具体的な対象領域はWeddell sea沖の海氷下であり、キャベリング現象がWeddell sea polynyaの出現と維持に寄与した可能性が示唆されている。
参考文献:
Harcourt (2005): Thermobaric cabbeling over Maud Rise, Theory and large eddy simulation, Progress in Ocenography, 67, 186-244.
北極海におけるモデル結果の多くは観測に比べてカナダ海盆表層で高塩分偏差になっており,その要因の1つとして太平洋水の海盆域への流入が十分に表現できていないことが挙げられる.
太平洋水がどのような物理プロセスで海盆域に流入し,その後どのような経路を流れているのかについては不明な点も多く,観測・モデルの両面からこれらを明らかにすることが求められる.
そこで今回は太平洋水の多くを輸送するアラスカ沿岸流に着目し,ベーリング海峡を出発するところからカナダ海盆に流入するまでを過去に得られている知見や同様の沿岸流を対象にしたモデル実験等を交えながら紹介する.
現在取り組んでいる渦解像モデルの結果も紹介する予定である.
深層循環を維持するために必要な鉛直拡散係数の正確な見積もりには、外部潮汐から内部潮汐へのエネルギー変換、励起された内部潮汐のカスケードダウンと砕波、の過程をシミュレートする必要がある。
が、しかし、数値モデルに与える外力としての外部潮汐自体の見積もりに、そもそも衛星データの誤差、解像度等に起因する不確定性がある。
今回のセミナーでは、衛星海面高度データ及び検潮所の潮位データの同化により外部潮汐の再現性向上を目指した海洋潮汐モデルの紹介をする。
また、得られた外部潮汐を外力として与えた数値実験を元に、外部潮汐から内部潮汐へのエネルギー変換を見積もった論文も紹介する。
参考文献:
Matsumoto et al. (2000): Ocean tide models developed by assimilating TOPEX/Poseidon altimetry data into hydrodynamic model: A grobal model and a regional model around Japan, J. Oceanogr., 56, 567-581.
Niwa and Hibiya (2001): Numerical study of the spatial distribution of the M2 internal tide in the Pacific Ocean., J. Geophys. Res., 106, 22441-22449.
南大洋での海洋循環の変化が、氷期間氷期における大気CO2変動、および海洋中のδC13分布 の変化を説明できるという趣旨の論文を紹介する。
参考文献:
Toggweiler et al., (2006): Midlatitude westerlies, atmospheric CO2, and climate change during the ice ages, Paleoceanography, Vol.21, doi:10.1029/2005PA001154
St. Laurent and Simmons (2006)を軸に、深層海洋内部領域の混合に関するトピックをいくつか紹介。
参考文献:
St. Laurent, L. and H. Simmons (2006): Estimate of power consumed by mixing in the ocean interior, JC, 19, 4877-4890.
参考文献:
Collins et al. (2005): El Nino- or La Nina-like climate change?, Climate Dynamics, vol.24, pp.89-104.
ラブラドル海の数値計算から, 時計回りの渦(アンチサイクロン)と反時計回りの渦(サイクロン)に構造的な非対称性が見られた.
そこで, 2次元(回転)乱流中での渦構造に関する論文を勉強する.
参考文献:
Melander, M.V., McWilliams, J.C., Zabusky, N.J., 1987. Axisymmetrization and vorticity-gradient intensification of an isolated two-dimensional vortex through filamentation. J. Fluid Mech. 178, 137-159.
Melander, M.V., Zabusky, N.J., McWilliams, J.C., 1988. Symmetric vortex merger in two dimensions: causes and conditions. J. Fluid Mech. 195, 303-340.
南極の氷床が海に突き出している部分(棚氷)とその下の海との相互作用に関して、
・観測から棚氷の融解速度を推定した論文
Interaction between ice and ocean observed with phase-sensitive radar near an Antarctic ice-shelf grounding line, Jenkins et al., Journal of Glaciology, 52, 325-346, 2006
・棚氷を上面の境界条件として取り込んだ海洋モデルにより棚氷下の循環とそれに伴う棚氷の融解を議論した論文
Modeling ocean processes below Fimbulisen, Antarctica Smedsrud et al., Journal of Geophysical Research, 111, C01007, 2006
の 2 本を紹介する。
参考文献:
Interaction between ice and ocean observed with phase-sensitive radar near an Antarctic ice-shelf grounding line, Jenkins et al., Journal of Glaciology, 52, 325-346, 2006
Modeling ocean processes below Fimbulisen, Antarctica Smedsrud et al., Journal of Geophysical Research, 111, C01007, 2006
全球(CDW+NADW)熱塩循環の10-100年規模の変動は、混合境界条件下の海洋の固有振動として提案されてきた(Mikolajewicz et al(1990),Pierce et al(1995),Osborn(1997))。
また、1000年規模の全球(AO+SO+PO)固有モードも提案されている(Weijer et al,2003)。flux調整付であるが切り札となるはずのCSIRO大気海洋結合モデルの解析結果を紹介する。
参考文献:
Circumpolar Deep Water Circulation and Variability in a Coupled Climate Model,
AGUS SANTOSO, MATTHEW H. ENGLAND and ANTHONY C. HIRST, Journal of Physical Oceanography, 2006, 36, 1523-1552.