毎週木曜午前 10:00より東京大学柏キャンパス総合研究棟270号室にて開催
担当 浦川 surakawa(at)ccsr.u-tokyo.ac.jp
2009年度前期 発表者 (敬称略)
4/16 浦川 (CCSR D2)
4/23 松村 (CCSR PD)
4/30 草原 (CCSR PD)
5/14 笹島 (CCSR PD)
5/21 渡辺 (CCSR PD)
6/04 建部 (RIGC/JAMSTEC)
6/11 小室 (RIGC/JAMSTEC)
6/18 岡 (CCSR 特任助教)
6/25 黒木 (RIGC/JAMSTEC)
7/02 羽角 (CCSR 准教授)
過去の発表概要はこちら
キャベリングは海水の状態方程式の非線形性に起因する現象であり、等密度で異 なるT/S特性を持つ2つの水塊が混合した時、混合後の水塊密度が混合前よりも重 くなるという効果を持つ。 南大洋は太平洋、インド洋、大西洋を結ぶ唯一の海域であり、そこではこれらの 海盆由来の様々な水塊が集合し活発な渦活動によって混合されている事が予想さ れる。 そのため南大洋においてはキャベリングの効果が比較的に大きいと期待され、そ の影響を定量的に議論する事は熱塩循環の力学バランスを論じる上で重要な過大 であると言える。 本発表ではMcDougall (1984)からはじまる複数の論文で提唱されている水塊変質 におけるキャベリングの影響評価法について簡単に説明をした後に、その手法を 用いて南大洋水塊変質に対するキャベリングの効果を論じたMarsh (2000)をご紹 介する。 加えて、時間と余裕があれば、最近の進捗状況のご報告と博士論文に向けての簡 単な所信表明を行いたい。
参考文献:
Marsh (2000), Cabbeling due to Isopycnal Mixing in Isopycnic Coordinate
Models, JPO, 30, 1757-1775
重力流のエントレインメントは主に鉛直シア不安定で生じる乱流混合によっても たらされる。このようなエントレインメント課程に対するDynamic LESモデルの 有効性をDNSと比較することにより検証した新着論文を紹介する。
参考文献:
Ozgokmen et al. (2009):
Large eddy simulation of stratified mixing
in a three-dimensional lock-exchange system,
Ocean Modelling, 26, 134-155.
海洋モデルニIce Shelfの効果を考慮した論文二つ。 1つ目は、Weddell海の東にあるEWIS (Eastern Weddell Ice Shelf)の効果を感度 実験などを用いて議論したもの。2つ目は、Z座標系の海洋モデルにIce Shelfを 導入した論文。
参考文献:
M. Tohma et al. (2006):
Impact of the Eastern Weddell Ice Shelves
on water masses in the eastern Weddell Sea,
JGR, 111, C12010, doi:10.1029/2005JC003212
M. Losch(2008):
Modeling ice shelf cavities in a z coordinate
ocean general circulation model,
JGR, 113, C08043, doi:10.1029/2007JC004368
北太平洋中層における水塊特性の長期トレンドを報告した論文を3つ。 最初の2つはオホーツク海を中心とする中層水塊の昇温・貧酸素化について。 3つ目は北太平洋亜熱帯循環域で観測された塩分極小層の昇温の報告。
参考文献:
Itoh (2007):
Warming of intermediate water in the Sea of Okhotsk since the 1950s,
J. Oceanogr., 63, 637 - 641.
Nakanowatari et al. (2006):
Warming and oxygen decrease of intermediate water
in the northwestern North Pacific,
originating from the Sea of Okhotsk, 1955 - 2004,
Geophys. Res. Lett., 34, L04602, doi:10.1029/2006GL028243.
Kouketsu et al. (2007):
Changes of North Pacific Intermediate Water property
in the subtropical gyre,
Geophys. Res. Lett., 34, L02605, doi:10.1029/2006GL028499.
深層循環についての以下の論文を紹介する.
Nycander et al. (2007) では,子午面循環の解析手法として,
深さ・密度の関数としての流線関数を定義した.
流線関数の符号は,循環が力学的に駆動されているのか熱力学的に駆動されているかを
示し,その積分値は熱力学的になされる仕事を表す.
この手法を,解像度の低い理想化したモデル,
および高解像度のより現実的なモデルに適用した.
その結果,200--1000m 深では循環セルは非熱力学的で,Ekman pumping により駆動される.
一方,それ以深では循環セルは熱力学的で,混合によって駆動される.
de Boer et al. (2008) では,
様々な駆動源と子午面循環の応答を調べた.
風や強い混合がない場合,深層循環は生じない.
風や混合によりエネルギーが供給されると循環が生じるが,
対流が北大西洋のみで起こるのか,あるいは北大西洋,北太平洋,南大洋で起こるのかは,
温度・塩分の南北勾配による.
紹介論文:
Thermodynamic Analysis of Ocean Circulation,
Nycander, Nilsson, Doos, and Brostrom,
JPO, 37, 2038--2052, doi:10.1175/JPO3113.1, 2007.
Atlantic Dominance of the Meridional Overturning Circulation,
de Boer, Toggweiler, and Sigman,
JPO, 38, 435--449, doi:10.1175/2007JPO3731.1, 2008.
参考文献:
A delayed action oscillator shared by biennial, interannual, and decadal
signals in the Pacific Basin (White et al 2003, JGR-oceans)
要旨:
海氷は海水に比べて一般に塩分が低い。そのため、海氷は生成時に
余分な塩を直下の海に放出し(brine rejection)、融解時には逆に
塩分の低い水を放出する(freshwater release)。これらの過程の
海洋への影響はよく知られるところである。
しかし、現実の海氷はもう少し複雑なふるまいを示す。通常海氷は
生成時には平均よりも高い塩分を持ち、時間の経過とともに塩を
排出して塩分を下げていく。これは、海洋への塩分の影響が生成・
融解時に留まらないことを意味する。また、海氷の比熱や
融解に要するエネルギー等は塩分の関数でもある。したがって塩分の
変化は海氷の熱力学的な性質も変えることとなり、結果として
海氷場が変化することも当然予想される。
本発表では、最初に海氷の塩分が変化する過程について簡単に
レビューした後、この過程を全球海氷-海洋モデルに取り込んで、
海氷塩分の変化が与える影響を論じた論文を紹介する。
紹介論文(主要なもののみ)
Vancoppenolle et al. (2009)
Simulating the mass balance and salinity of Arctic and
Antarctic sea ice. 2. Importance of sea ice salinity
variations.
Ocean Modelling, 27, 54-69.
「海洋循環変化および海洋生物生産変化が 大気CO2濃度にどのように影響を与えるか?」 についてpreformed nutrient inventryの変化に 着目して議論した論文の紹介。
参考文献:
Marinov et al. (2008)
Impact of oceanic circulation on biological carbon
strage in the ocean and atmospheric pCO2,
Global Biogeochemical Cycles, Vol.22, doi:10.1029/2007GB002958
Marinov et al. (2008)
How does ocean biology affect atmospheric pCO2?
Theory and models,
JGR, Vol.113, doi:10.1029/2007JC004596
海洋モデルでは、海面風応力を計算するとき、海洋の流速を無視することが多い。 海洋の流速を無視しない場合、風の仕事量や渦活動が減少することを示す論文を 紹介する。
参考文献:
Duhaut, T. H. A., and D. N. Straub (2006), Wind stress dependence on
ocean surface velocity: Implications for mechanical energy input to
ocean circulation, J. Phys. Oceanogr., 36, 202 211.
Zhai, X., and R. Greatbatch (2007), Wind work in a model of the
northwest Atlantic Ocean, Geophys. Res. Lett., 34, L04606, doi:
10.1029/2006GL028907.
Eden, C., and H. Dietze (2009), Effects of mesoscale eddy/wind
interactions on biological new production and eddy kinetic energy,
J. Geophys. Res., 114, C05023, doi: 10.1029/2008JC005129.
上記に関する論文紹介。前者は Eden and Greatbatch (2008a,b) を中心に。 後者は Umlauf and Burchard (2003) などに基づく様々な turbulence closre をまとめた考え方と、その枠組からはちょっと外れる Jackson et al. (2008) の紹介。後者は時間が足りなくてできないかも。
参考文献:
Eden and Greatbatch (2008a): Towards a mesoscale eddy closure, Ocean
Modelling, 20, 223-239.
Eden and Greatbatch (2008b): Diapycnal mixing by meso-scale eddies,
Ocean Modelling, 23, 113-120.
Umlauf and Burchard (2003): A generic length-scale equation for
geophysical turbulence models, J. Mar. Res., 61, 235-265.
Jackson et al. (2008): A parameterization of shear-driven turbulence
for ocean climate models, J. Phys. Oceanogr., 38, 1033-1053.