毎週木曜午前 10:00 より東京大学柏キャンパス大気海洋研究所 217 号室にて開催
担当 古川 furukawa(at)aori.u-tokyo.ac.jp
2014 年度後期 発表者予定 (敬称略)
10/09 後藤
(大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 M2)
10/16 宮本
(大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 M2)
10/23 休み
10/30 休み
11/06 休み
11/13 古川
(大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 M2)
11/20 柳本
(大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 助教)
11/27 休み
12/04 川上
(東北大学大学院 M2)
12/11 宮尾
(九州大学大学院 D2)
01/08 大貫
(東京大学大学院 D1)
01/15 廣田
(大気海洋研究所気候システム研究系 D1)
01/22 休み
01/29 休み
02/05 休み
02/12 伊藤
(東北大学大学院 M2)
02/19 桂
(大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 D2)
02/26 岡
(大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 准教授)
過去の発表概要はこちら
内容:
高速水温センサを用いたCTDフレーム搭載型乱流計の精度検証
内容:
北西太平洋海盆における深層流の中規模変動
内容:
潮汐18.6年周期振動による千島付近の鉛直混合変動が太平洋熱帯域の気
候に及ぼす影響
紹介論文:
・
Lin, H. K., R. Thompson, and J. Hu (2014):
A Frequency-Dependent Description of Propagating Sea Level Signals in the Kuroshio Extension Region,
J. Phys. Oceanogr., 44, 1614--1635
内容:
北太平洋中央モード水形成の時空間変動とその要因
内容:
夏季の沿岸域には、潮汐混合と成層域の境界に潮汐フロントが形成され、海域
の豊かな一次生産を支えている。またフロント周辺での前線渦の発達に 伴う、
混合域から成層域への栄養塩輸送が示唆されている。しかし、このようなフロン
ト周辺の微細な物理課程、特に物質輸送に大きな影響を与えるで あろう渦や前
線波動を可視化した研究は存在しない。これは、短時間で変化するフロント周辺
の位置や形状と、海表面水温を同時に可視化する手法が未 確立であることに起
因する。そこで本研究では、フロント周辺における微細な海表面水温の空間構造
を明らかにするために、バルーン空撮とサーモグラ フィカメラを用いた沿岸海
洋前線周辺における熱赤外観測を実施した。
観測は、夏季に瀬戸内海の伊予灘に形成された沿岸海洋前線周辺で実施した。
ヘリウムガスを充填したバルーンにサーモグラフィカメラを装着し、高 度約
100mから海表面画像を撮影した。そして、空撮写真を直交デカルト座標系上に変
換する処理(射影変換)を施すことにより、フロントの正確な 形状や海表面水温
の空間分布を観測した。その結果、数m程度の前線渦を示唆する舌状構造が観測
された。本講演では、サーモグラフィカメラを用いた 海表面水温観測の詳しい
手法と、観測によって確認されたフロントの特性について述べる。
内容:
順圧潮流が海底地形上を流れる際に生じる傾圧潮汐波は、励起源から遠方へとエネルギーを運び出し、散逸の際に微細な乱流運動を促すことで、海洋の密度混合をもたらす重要な役割を演じている。
特に、長距離を伝播する長波長の傾圧潮汐波の励起については、順圧潮流と海底地形のデータをもとに数値的な再現が可能であり、近年飛躍的に理解が進んでいる。しかし、潮汐波の発生過程とは対象的に、その散逸過程には複雑に絡み合った未解明の物理プロセスが関係しており、より詳細な定量的研究が求められている。
本セミナーではこうした散逸過程の中でも特に、傾圧潮汐波と他の内部重力波の相互作用を取り上げて議論する。
重力波間の非線形相互作用は研究の歴史が古く、約半世紀間にわたって理論的な定式化と数値解析が進められてきた。
しかし、先行研究では、水深の有限性や密度成層の鉛直構造を度外視し、解析的に扱いやすい状況を仮定しており、現実の海洋へ対象を拡大することを困難にしている。
それに対し本研究では、任意の成層構造に適用可能な内部重力波間の相互作用に関する理論的定式化を新たに行い、現実的なデータセットから独自の手法で傾圧潮汐波の減衰時間を計算した。
本研究で得られた結果には、特筆すべき点が二つある。
第一には、中緯度をピークとして低緯度側に広がった減衰率の大きな海域の存在であり、これは潮汐波の倍周期成分が関与して生じるparametric subharomonic instability (PSI) に起因している。
この結果は、過去に行われた数値実験や直接観測の強い裏付けとなるものである。
第二に、亜熱帯域における減衰率の値が東西で異なることを発見した。
その原因には、亜熱帯循環系が作る密度躍層の傾きが関係しており、PSIの物理メカニズムに基づいて理解することができる。
内容:
海氷に対する潮汐の影響に関する論文紹介
紹介論文:
・
Mack, S., L. Padman, and J. Klinck (2013):
Extracting tidal variability of sea ice concentration
from AMSR‐E passive microwave single‐swath data:
a case study of the Ross Sea,
Geophys. Res. Lett., 40, 547--552
内容:
海洋には,数十 km~数百 kmの空間スケールの中規模渦が遍在している.衛星観測データの充実と渦解像モデルの普及によって,その時空間分布特性や役割,形成や時間発展の物理過程の理解はこの10年で飛躍的に進展したといえる.
一方で,高解像度の衛星観測画像を参照すると,中規模現象よりもさらに小さなスケール(数 km~数十 km)のサブメソスケール擾乱が観察できる.この擾乱は,数十 m day-1という大きな鉛直流速をもつため,等ポテンシャル密度面に沿う貫入構造を形成し,鉛直方向の急速な海水交換を担うと考えられている.また,前線や中規模現象等に伴って海洋に遍在することが数値実験により示されている.すなわち,サブメソスケール擾乱は,海洋の広範囲で熱や渦位,溶存物質などの鉛直輸送に重要な役割を果たしていることが示唆される.
しかし,サブメソスケール擾乱は時空間スケールが小さいため,その研究は主に数値実験により,広域における現場観測により調べる方法はないのが現状である.
本研究では,中規模渦に伴うサブメソスケール擾乱の時空間分布特性について事例解析的に理解することを目的とした.まず,黒潮親潮混合水域における高気圧性中規模渦を対象としてプロファイリングフロートと船舶により実施された集中観測データを用いて,貫入構造の検出手法の確立,及び渦に伴う貫入構造の時空間分布特性の把握を行った.次に,現場観測のみでは調べることが難しいサブメソスケール擾乱による貫入構造の特性や形成過程を,高解像度シミュレーションの出力値を用いて調べた.
その結果,サブメソスケール擾乱は中規模渦の中心に比べて縁に多く分布していることが推察された.また,中規模渦に伴うサブメソスケール擾乱は,海面高度場にみられるような渦と周囲との相互作用の時期に活発化し,渦が孤立状態にある時期にその数は減少することが示唆された.
本研究で確立した貫入構造の検出手法を海域や時期に応じて調整し,より広範囲のプロファイリングフロートや船舶による観測データに展開することで,サブメソスケール擾乱の時空間分布特性の理解が進むことが期待される.
内容:
海面塩分観測衛星(Aquarius)データを使用した最新の研究
紹介論文:
・
Menezes, V. V., M. L. Vianna, and H. E. Phillips (2014):
Aquarius sea surface salinity in the South Indian Ocean:
Revealing annual‐period planetary waves,
J. Geophys. Res. (Oceans), 119(6), 3883--3908
内容:
PDOを起源とする黒潮続流の10年規模変動に伴い、亜熱帯モード水のサブダクションが変動していて、
それが下流域での生物地球化学パラメタに影響を与えているという、最近の研究結果を紹介します。
また、それに関連して、黒潮続流の10年規模変動に関する最近の研究(Qiu et al., 2014他)をレビューします。
Temperature and salinity data from Argo profiling floats during 2005 2014 were analyzed to examine the decadal variability of the North Pacific Subtropical Mode Water (STMW) in relation to that of the Kuroshio Extension (KE) system. The formation volume of STMW in the southern recirculation gyre of KE in the cooling season was large during the stable KE period after 2010 than the unstable KE period of 2006 2009 by 50%. As a result, the volume and spatial extent of STMW increased (decreased) in the formation region during the former (latter) period, as well as in the southern, downstream region with a time lag of 1 2 years. The decadal expansion and contraction of STMW were also detected by shipboard observations conducted routinely in the most downstream region near the western boundary, in terms of not only physical but also biogeochemical parameters. After 2010, enhanced subduction of STMW has consistently increased dissolved oxygen, pH, and aragonite saturation state and decreased apparent oxygen utilization, nitrate, and dissolved inorganic carbon, among which changes of dissolved inorganic carbon, pH, and aragonite saturation state were against their long-term trends. These results indicate a new mechanism by which the climate variability affects physical and biogeochemical structures in the ocean’s interior and potentially impacts on the surface ocean acidification trend and biological production.
参考論文:
・
Qiu, B., S. Chen, N. Schneider, and B. Taguchi (2014):
A coupled decadal prediction of the dynamic state of the Kuroshio Extension system,
J. Climate, 27, 1751--1764.