温暖化をはじめ人間活動が引き起こす気候、環境変化は21世紀になって顕著になりつつあり、たとえば全球平均気温は今世紀末までに
1.4度から5.8度の上昇が予測されている。これらの気候と環境変化は、さらに人間社会、特にアジア域の社会経済に大きな影響を与えると思われる。すなわち、気候・環境・社会の3つのエレメントは相互に複雑に相互作用している。
このような相互作用をモデル化して将来のシミュレーション、評価に役立てることは負荷の少ない社会を実現するための研究のひとつとして重要である。しかし一方で、このような高度に複合化された統合モデルは気候モデルから社会モデルまでを包含するものでなくてはならず、異なる知識と経験、特に理学と工学の連携ぽによってしか生み出すことはできない。
本プロジェクトにおいては、参加する各センターの特色を生かしてモデル開発を行い、気候・環境・社会相互作用のメカニズムをモデリングを通して理解する。そのために気候システム研究センターから気候モデル、空間情報科学研究センターから人間・社会活動の空間情報モデル、人工物工学センターから社会的制約条件への影響と価値観の変化を考慮した人間活動モデル、高温プラズマ研究センターから新エネルギーの環境負荷モデル、およびアジア生物資源環境研究センターからアジア域の植生・農業モデルを提供し、モデルインテグレーションを行う。開発するモデルは気候・環境・社会システムを表現する高度複合系の統合モデルになるので、上記センターのみでは十分にニーズに答えることは難しい。そこで、新領域創成科学研究科環境学研究系を始めとする学内外の研究グループに働きかけることによって、問題解決のための様々なモジュール開発やモデル応用の創出を行い、それによって広範なコミュニティーに役立つモデリング基盤の整備を行う。
このような研究活動を通して、気候−環境−社会をリンクする高度複合系モデルを確立し、それを利用するような研究を促進することによって理学と工学を融合する新たな「環境・社会工学モデリング研究」や「グローバル環境モデリング研究」とも言うべき新しい領域を創出する。この新しい領域によって真に持続可能な社会のモデリングとデザインに貢献する。
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