気候システム研究センター(CCSR)は、気候モデルによる気候システムの研究を行い、全国の研究者の研究に供する目的で1991年に設置された共同利用施設です。2002年には第2期組織が発足しました。第1期創設から数えると足かけ14年が立つわけです。その間、CCSR大気大循環モデルと海洋大循環モデルが産声をあげました。現在、これらの資産は、CCSR/NIES/FRCGC-MIROC等の気候モデル群の基礎になって、気候シミュレーションのために広く使われています。また、放射コードMSTRN、エアロゾル化学輸送モデルSPRINTARS、大気ガス化学輸送モデルCHASER、海洋・海氷モデルCOCO、氷床力学モデルICIESなどが、教員と学生のコラボレーションによって作りだされてきました。これらのモデル群によって、現在では、日々の研究のなかで、人間活動が引き起こす気候・環境影響など様々なシミュレーションができるようになりました。さらに、気候データを利用した研究や、MIDORI-IIやTRMMなどの人工衛星データの解析結果も当センターから発信することができました。まさにこの14年間は、知識のるつぼとしての大学のなかで、様々な知識が融合して気候モデリング研究が始まった揺籃期であったと言えます。
そして今、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告書の作成、京都議定書の発足、国連環境計画の大気褐色雲(ABC)プログラムなどが開始され、気候と環境問題が社会的に注目されるなかで、気候モデリング研究がこれまでに無く重要になっています。地球シミュレーターの登場もモデリング研究に新しい可能性を与え始めたと言えます。その中で、RR2002共生プロジェクトにおいて地球シミュレーターを使った温暖化実験に関する重要な成果が生み出されています。また、21世紀COEプログラムにおいて古気候モデリングから新たな成果が得られ始めました。このようにCCSRが関与している気候研究活動は、これまでに比べて質も量も格段に増大しています。まさに気候モデリング研究は成長期に入ったと言えるでしょう。
しかしながら、私は、このようなエクサイティングな時代もいまだ気候と環境モデリング研究の黎明期だと思っています。超巨大なスーパーコンピューターの登場とも相まって、モデルは今後、さらに大きく発展してゆくでしょう。温暖化と気候変動のより精度の高いモデリング、局地気象や都市気候を含んだモデリング、雲や大気化学過程のより詳細なモデリング、古気候や惑星気候の研究、そして新しい人工衛星観測や地上観測からのデータの解析など、おもしろい研究がこれからも開花してゆくと思います。同時に2004年に起こった大学法人化によって、当センターの外部との関係も大きく変わってゆくと思われます。すなわち、より多くの研究協力によるモデル作り、より広範なユーザーによるモデル応用、そして民間との連携などにチャレンジしてゆかなければなりません。このような成熟期に向けて、教員、学生諸君、そして東京大学内外の関係者の間に新しいコラボレーションが生まれ、生き生きとした研究が新たに移転した柏キャンパスの地で、CCSRから発信されることを期待しています。
|