今年の海氷後退の特徴はラプテフ海、チャクチ海での海氷後退が例年より速いことです。

これは、冬季から春季にかけての期間にこれらの海域の海氷が多く流出し、薄い海氷の割合が増えているためです。この第二報では第一報から解析期間を１ヶ月延長していますが、この傾向は変わりません。一方、ボーフォート海には厚い海氷が多く残っており、7月中の海氷の後退が速かった昨年にくらべると遅くまで海氷が残るでしょう。

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最小期にあたる9月11日の海氷域面積は、およそ467万平方キロメートルと予想されます。これは昨年より9パーセント大きく、2013, 2014年より9から11パーセント小さい値です。 また、第一報での予測値、458万平方キロメートルよりも若干大きくなっています。

ロシア側海域では、ラプテフ海で海氷域の後退が速く進行する一方で、東シベリア海ではそれよりも遅く例年並みの速さで海氷域が後退することが予想されます。また、両海域とも沿岸からの海氷の離岸は昨年よりも早い見込みです。もっとも遅くまで海氷が残るのはラプテフ海の西のセヴェルナヤ・ゼムリャ諸島付近で、ここの海氷が大陸から離れロシア側の開水面域がつながるのは、昨年とほぼ同じ8月20日頃と予想されます。

航路開通（海氷離岸）

ラプテフ海　 7月20日（昨年より12日早い）

東シベリア海 7月27日（昨年より8日早い）

ロシア側全域 8月20日（昨年と同じ）

カナダ側海域ではチャクチ海での海氷後退が速いものの、ボーフォート海の海氷後退は昨年より遅く例年並みになります。北アメリカ大陸沿岸は、昨年より10日ほど遅い7月20日頃に開水面域がつながると考えられます。

※毎日の予測図は国立極地研究所の北極域データアーカイブでも見ることができます。

予測手法は基本的に第一報と同じです。

この手法は、冬季の海氷の動きと夏季の海氷分布との関係を示した私たちの研究（Kimura et al., 2013 [論文を見る]）をもとにしたもので、冬から春にかけて例年より海氷が集まる場所では海氷が厚くなり、遅くまで海氷が残る（逆に海氷がまばらになる場所では早く海氷がなくなる）という関係を使って夏の海氷分布を予測します。

今回の第二報では12月1日の海氷域上に等間隔に粒子を配置し、翌年5月31日までの動きを追跡しました（図７）。予測には、この5月末の粒子分布を使用します。

5月以降、北極海の海氷は徐々に後退をはじめます。海氷が消滅した場所では粒子も消滅しますので、この予測手法は12月から5月にかけての海氷の動きだけでなく、春以降の氷縁の後退（海氷融解）も考慮していることになります。

北極海の衛星モニタリングや海氷予測、ここで用いた予測手法についてご質問がある場合は、木村（kimura_n@aori.u-tokyo.ac.jp）までお問い合わせください。

Kimura, N., A. Nishimura, Y. Tanaka and H. Yamaguchi, Influence of winter sea ice motion on summer ice cover in the Arctic, Polar Research, 32, 20193, 2013.

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