北極海の海氷域は9月17日頃に最小となり、拡大をはじめました。

今後はカナダ側海域をはじめとする多くの場所で、昨年よりゆっくりしたペースで海氷域が広がっていく見込みです。

多島海を除くカナダ側の沿岸では10月26日頃、ロシア側の北東航路では10月13日頃に海氷域が沿岸に達し、航路が閉じるでしょう。

図1:今年10月1日から11月30日までの海氷分布

北極航路の利用や海氷予測、ここで用いた予測手法についてご質問がある場合は、木村(kimura_n@aori.u-tokyo.ac.jp)までお問い合わせください。

この予測およびその基礎となる研究は、北極域研究推進

プロジェクト(ArCS)で実施しています

図2:10月1日、11月1日、11月30日の予測海氷分布

 北極海の海氷域は9月17日頃に最小となり、現在は拡大しつつあります。今後は特にカナダからアラスカにかけての海域で昨年より遅いペースで海氷域の拡大が進行します。ロシア側沿岸域での海氷域の張り出しは東シベリア海で昨年より遅く、セヴェルナヤ・ゼムリャ諸島周辺では昨年よりやや早くなります。海氷域が岸に達し航路が閉じるのは、多島海を除くカナダ側航路では昨年より1ヶ月以上遅い10月26日頃、ロシア側航路では昨年とほぼ同じ10月13日頃になる見込みです。


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 北極海の海氷面積は減少時と逆のパターンで増加していく傾向があり、早く海氷がなくなった海域(年)は、秋に海氷に覆われるのが遅くなります。そのため、ある場所での海氷のなくなる早さと秋の特定の日の海氷密接度との間には相関があります(2017年の秋予報をご参照ください)。この要因はいくつか考えられますが、早く海氷がなくなると海面がより温められやすく、秋の結氷が遅くなることがそのひとつと考えられます。そのため9月はじめの海水温と10月以降の海氷密接度の間にも相関関係が見られます。


 この関係をもとに、今回は2003年から2018年までの14年間(データの揃わない2011, 2012年を除く)のデータを用いて、5月1日から8月31日までの間の海氷が無かった(密接度が30%未満だった)日数と10月1日以降の日の海氷密接度との相関関係を用いて予測を行いました。 今年は8月までの海氷域の後退が観測史上最速に近い速いペースであったため、今後の海氷域の拡大は例年より遅くなると考えられます。

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北極海氷分布予報


2019年第四報:拡大期予報

2019930


木村詞明, 羽角博康