ILLUME (A TEPCO SEMINNUAL REVIEW Vol.4 No.1 第7号より 1992/4発行)
生命の単位である細胞には核があり、DNAは二本のひもがより合わさった二重らせん構造をしております。細胞のなかには核のほかに、蛋白を合成するリボゾーム、呼吸系が動きエネルギーを獲得するミトコンドリアなどが存在し、生命体の基本単位である細胞のなかが分業体制になっていることをご記憶ください(右図4)。
これら三つのキーワードを頭にいれて、生物圏の歴史をひもとくと、私からみて二つの大きな進化の流れが見えてきます。一つは、バクテリアから人間にいたる生物進化であり、他は生物活動が加わることによって、歴史の流れとともに、より高度な機能を獲得した物質循環系の進化です。
私は、この両者をまとめで、生元素系の進化、あるいは、生物圏の進化と呼ぶことにしております。この二つの進化は互いに影響しあって発展し、現在にいたっております.
ヴアーダ教授の解説二つの物質循環系について太陽エネルギーは地上にふり注ぎ、水と大気の運動になる。植物は光合成を行ない、生産された有機物は分解する。このような生物活動に関係した生物圏での元素のサイクルを、生物球化学的な物質循環〃と呼ぶ。もう一つ、長い長いタイムスケールを持つ地質学的な質循環系″がマントルと地殻の運動によってまわっている。海底堆積物はプレートテクトニクスによって海溝に埋没し、ときには造山運動によって堆積岩となる。たとえばヒマラヤは、インド亜大陸がユーラシア大陸にぶつかって形成された大山脈であり、山の上部には海の生物の化石が見つかる。地質学的物質循環は、海洋での堆積物の形成→堆積岩→風化の経路である。 |
酸素を発生する植物が地球上にいつごろ出現したかという問にはストロマトライトという藍藻の化石が答を与えてくれます(写真2)。
ヴアーダ教授の解説パーミルについて自然界における炭素の安定同位体比(13C/12C)の変化は小さいためδ13C ‰=(R(試料)/R(標準)-1)×1000 で定義されるパーミルを用いる。Rは13C/12Cである。プラスの価は13含量が標準となる物質(海のHCO3とほぼ同じ13C含量をもつ化石)より13C含量が高く、マイナスは低いことを意味する。生物の13C含量は二酸化炭素や重炭酸に比べて低くなっており、つねにマイナスの値を与える。 |
ヴァーダ教授の解説堆積岩の量堆積岩形成の時間経過は、地球内部からの酸性物質の放出の時間経過と一致する。酸性物質の放出は地球形成の初期に激しく(マグマオーシャンのような説もある)、パルス的な地質学的事件をまじえながら、時代とともにゆるやかになってきた。現在の堆積岩はほんのすこしずつ増えてはいるが、その増加は無視できるほど小さい。現在の堆積岩の年齢分布を調べると、そのほとんどは七億年前以降に形成したものである。それ以前の堆積岩は風化によって消失してしまったことがわかる。堆積岩の平均年齢は約三・五億年で、現在はほぼ一定の速度(七〇〇億トン/年)で生まれ、これに相当する量が風化によって失われている。 |
これまでの地質学、古生物学、微生物学や年代決定法を中心とする地球化学による知見をまとめると、大気中の酸素分圧(Pos2:現在は0.2気圧であり1 Present Atomos-pheric Level、1PALと表わす)の変化について、次のようなシナリオを書くことができます。
ヴァーダ教授の解説森林と炭山酸ガスアマゾンの森林がなくなると、大気中の酸素がなくなってしまうと考える人が意外と多い。前述の試算からもわかるように、大気中の酸素の存在は堆積岩の中の有機炭素の量によって決まっている。アマゾンは赤道域に存在する森林地帯で活発な蒸散作用によって、大気中に熱を運ぶシステムとなっている。アマゾン域から森林がなくなると、このシステムが壊れるため、異常気象をもたらすおそれのあることが、アマゾン域について世界中が注目する理由の一つである。 |
第二の例は、完全なリサイクルを行なう″太平洋エコボリス″であります
太平洋の東部熱帯域では湧昇によって、動植物プランクトンが大増殖し、沈降する有機物の分解によって、さらに酸素が少なくなり、広大な海域の一〇〇〜一〇〇〇m層が無酸素層となります。この無酸素水塊中では硝酸(NO3-)の酸素を呼吸に用いる脱窒菌の働きが活発になり、硝酸が大量の窒素ガスとなって大気に還元されています。これは廃水処理場の二次処理に対応する浄化システムです。 一方、西側の熱帯、亜熱帯太平洋城は貧栄養海域で、太陽エネルギーが充分あるため、窒素固定を行なう藍藻トリコデスミウムが活発に増殖し、付近の海に窒素肥料を供給する働きをしております。(わだ えいたろう)