ILLUME (A TEPCO SEMINNUAL REVIEW Vol.4 No.1 第7号より 1992/4発行)
ヴアーダ教授の解説二つの物質循環系について太陽エネルギーは地上にふり注ぎ、水と大気の運動になる。植物は光合成を行ない、生産された有機物は分解する。このような生物活動に関係した生物圏での元素のサイクルを、生物球化学的な物質循環〃と呼ぶ。もう一つ、長い長いタイムスケールを持つ地質学的な質循環系″がマントルと地殻の運動によってまわっている。海底堆積物はプレートテクトニクスによって海溝に埋没し、ときには造山運動によって堆積岩となる。たとえばヒマラヤは、インド亜大陸がユーラシア大陸にぶつかって形成された大山脈であり、山の上部には海の生物の化石が見つかる。地質学的物質循環は、海洋での堆積物の形成→堆積岩→風化の経路である。 |
ヴアーダ教授の解説パーミルについて自然界における炭素の安定同位体比(13C/12C)の変化は小さいためδ13C ‰=(R(試料)/R(標準)-1)×1000 で定義されるパーミルを用いる。Rは13C/12Cである。プラスの価は13含量が標準となる物質(海のHCO3とほぼ同じ13C含量をもつ化石)より13C含量が高く、マイナスは低いことを意味する。生物の13C含量は二酸化炭素や重炭酸に比べて低くなっており、つねにマイナスの値を与える。 |
ヴァーダ教授の解説堆積岩の量堆積岩形成の時間経過は、地球内部からの酸性物質の放出の時間経過と一致する。酸性物質の放出は地球形成の初期に激しく(マグマオーシャンのような説もある)、パルス的な地質学的事件をまじえながら、時代とともにゆるやかになってきた。現在の堆積岩はほんのすこしずつ増えてはいるが、その増加は無視できるほど小さい。現在の堆積岩の年齢分布を調べると、そのほとんどは七億年前以降に形成したものである。それ以前の堆積岩は風化によって消失してしまったことがわかる。堆積岩の平均年齢は約三・五億年で、現在はほぼ一定の速度(七〇〇億トン/年)で生まれ、これに相当する量が風化によって失われている。 |
ヴァーダ教授の解説森林と炭山酸ガスアマゾンの森林がなくなると、大気中の酸素がなくなってしまうと考える人が意外と多い。前述の試算からもわかるように、大気中の酸素の存在は堆積岩の中の有機炭素の量によって決まっている。アマゾンは赤道域に存在する森林地帯で活発な蒸散作用によって、大気中に熱を運ぶシステムとなっている。アマゾン域から森林がなくなると、このシステムが壊れるため、異常気象をもたらすおそれのあることが、アマゾン域について世界中が注目する理由の一つである。 |
(わだ えいたろう)