自然と生命の二重らせん

生命地球化学からみた物質循環

和田 英太郎

ILLUME (A TEPCO SEMINNUAL REVIEW Vol.4 No.1 第7号より 1992/4発行)

太陽系第三惑星地球に生命が誕生して約35億年。その問、生物は単純な代謝機能を持つバクテリアから、高度な機能を持つ人間にいたる進化をとげてきた。一方、水素・炭素・窒素・酸素など、すべての生物体を構成する元素は、水や大気を媒体に地球規模で循環している。生物地球化学は、地球をひとつの大きな系として捉え、生物の進化の歴史とともに、生物活動が加わることによって、この物質循環系が”進化”してきたこと、そして人類の活動がこの”進化”に少なからぬ悪影警を与えていることを明らかにしつつある。生物をとりまく環境の変化は、生物の進化に何をもたらしたか。また、進化の過程で生物活動は、地球の物質循環システムをどのように変えてきたか。そして、人類の文明活動は物質循環の視点からはどのように見えるのか。生物の進化と物質循環の良い歴史を解読するにあたり、舞台を今から300年後に設定。自然と生命の物質循環に与える悪影響をクリアーした人類か、20世紀後半を振り返り、その当時生まれてまもない生物地球化学か、この循環系の進化をどう捉えようとしていたかを紹介する物語の形で進む。

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