スーパーコンピュータと気候モデル
気候システムそしてそれをシミュレートする気候モデルは大変複雑で膨大な計算が必要です。東大気候システム研究センターでは東大大型計算機センターのスーパーコンピュータを用いて計算を行っています。
電子計算機で
C1 = A1 + B1
C2 = A2 + B2
C3 = A3 + B3
という計算をする場合,ひとつひとつ順番に処理するよりも
A1 A2 A3
+ + +
B1 B2 B3
と3ついっぺんに処理した方が速くなります(その分メモリがたくさん要ります)。最初の方法をスカラー計算、あとのをベクトル計算と呼んでいます。スーパーコンピュータは高速・大容量のベクトル計算ができる計算機です。
上のグラフは電子計算機がこの30年間に飛躍的にその処理能力を増やしてきたことを示しています。10年で10倍以上の伸びを示しています。
次のグラフは大気モデルによる日々の天気予報の精度向上を示すものです。気象学の進歩と電子計算機技術の向上のおかげで1週間くらい先までの天気予報はかなり信頼できるものとなってきました。
しかし10年、100年と計算を行わなければならない気候モデルにとってはまだまだ計算機の能力は充分ではありません。気候モデルで大気や海洋を格子にくぎってそのひとつひとつで風や温度などの物理量の変化を計算します。複雑な自然をシミュレートするのですから格子は細かければ細かいほどよいのです。
しかし大気や海洋は東西、南北、そして鉛直方向の3次元に広がっていますので単純にどの方向にも格子間隔を半分にしようとすると全格子点数は2×2×2=8倍になってしまいます。格子を細かくすると計算の時間ステップもそれに見合うだけ小さく取らねばなりません(大気モデルは1ステップ数10分、海洋モデルは数時間程度です)。ですから細かく精度の高い気候モデル実現のためにはより大容量・高速のスーパーコンピュータが必要とされるのです。
細かい格子と粗い格子の違いは下のイラストレーションで一目瞭然ではないでしょうか?
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